金:6月の安値は中長期の買い場|【Weekly Report】週間予定
2024年7月1日
週間展望(7/1~7/7)
このページで知れること(目次)
週間予定:米雇用統計・英総選挙、仏下院選挙決選投票、東京都知事選
前週:米大統領選挙TV討論会
ドル円:雇用統計・介入動向が注目
金:6月の安値は中長期の買い場
【米国サービス業PMI】
【中国小売売上高】
金ETF
週間予定:米雇用統計・英総選挙、仏下院選挙決選投票、東京都知事選
・7月3、4両日にはカザフスタンで上海協力機構(SCO)首脳会議 プーチン大統領は、5月の中国訪問時に続いて習近平国家主席と会談する。
・6月FOMC議事録 年内米利下げ回数の見通しが3回から1回に減少、タカ派サプライズだった
・イギリス総選挙、フランス下院選挙決選投票、東京都知事選
・ECBフォーラム 「変革の時代における金融政策」開催、ラガルドECB総裁やパウエルFRB議長が講演
・6月米雇用統計 前回は雇用者数が予想を大きく上回り賃金の伸びも加速
・6月豪中銀議事録 利上げ検討などタカ派姿勢を維持 月次CPI受け8月利上げ観測高まる、3日は小売売上高
前週:米大統領選挙TV討論会
【トランプ圧勝】
米大統領TV討論会が6月27日に行われた。民主党寄りのCNNテレビが主催し、トランプ失言で人気を下げる策略として、「発言しない時のマイクは切る」「トランプは聴衆への呼びかけがうまいので、スタジオ内に聴衆を置かない」など、バイデン陣営に有利な企画だったにも関わらず、バイデンは最初から最後まで聞き取りにくい声で、言い間違いやろれつの乱れ、発言の詰まりが頻発、討論会の結果は、トランプの圧勝となった。米CNNテレビの緊急世論調査によると、今回のTV討論会について67%が「トランプ氏が勝利」と回答した。「バイデン氏勝利」は33%だった。
バイデン大統領は28日、選挙戦を続ける考えを表明したが、民主党寄りのニューヨーク・タイムズは28日、バイデン氏の撤退を求める社説を掲載。同氏が討論会で2期目の目標を説明できず、トランプ氏の挑発への対応も不十分だったことなどに触れ「米国は(トランプ氏への)より強力な対抗馬が必要だ」と訴えた。
米紙ワシントン・ポストのコラムニストも28日、バイデン氏への高齢不安の強まりに言及し「バイデン氏が2期目に出馬すべきではないことは、1年近く前から明らかだった」と指摘した。
ただし、大統領選を戦う民主候補を選ぶ予備選はすでに終了し、バイデン氏が代議員の大半を獲得して指名が確定しており、バイデン氏が立候補を断念しない限り、党則で代議員はバイデン氏に投票する義務がある。民主党は、8月19〜22日の党大会の前に、バイデン氏が辞退すれば、代議員は別の候補者に投票できる。制度的な無理が少ないのは、副大統領のカマラ・ハリスが大統領候補に昇格することだが、ハリスは不人気で、トランプ候補に勝てる要素はない。カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムや、ミシェル・オバマなどの名前も挙がるが、トランプ氏に勝てる見込みは薄い。
ドル円:雇用統計・介入動向が注目
【今週見通し・戦略】
米連邦準備理事会(FRB)高官の発言などを受けて日米の金利差が開いた状態が続くとの見方からドル買いの動きが継続。
心理的節目160円超で本邦当局から口先介入以上の動きはなかったこともあり、ドル円は161円台まで続伸。
財務官人事
日本政府は28日、神田真人財務官が退任し、後任に三村淳国際局長が就く人事を決めた。神田財務官は2022年9~10月と24年4~5月の円買いの為替介入を主導してきたため、退任で介入の手が緩むとの見方があった。月末や四半期末に伴うドル買い需要もドル円の買い要因となった。週を通じてクロス円も上昇傾向を示しており、ユーロ円は、ユーロ発足以来の最高値を記録した。仏選挙に絡むユーロの動きにも注意したい。
ドル円は、一目均衡表からの上値目標値のN=160.36円、V=160.91円などを達成。次のターゲットは、E=163.57円。
今週は雇用統計が注目。前回5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が4月の+16.5万人、市場予想の+18.2万人を大きく上回る+27.2万人となったが、今回は、非農業部門雇用者数が+18.8万人と一気に伸びが鈍化する見通し。失業率は前回と同じ4%、平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.9%と5月の+0.4%、+4.1%から伸びが鈍化見込み。
神田財務官は自身の任期中に円安ドル高トレンドの転換の道筋を付けようと追加介入に動く可能性も。160円水準を早々に割り込むか否かに注目。米大統領選挙討論会は、トランプ候補有利となったが、ドル高に関しては、けん制発言をしている点に注意。
金:6月の安値は中長期の買い場
【今週見通し・戦略】
NY金(8月限)は、終値ベースでネックライン(5/3安値)と重なる心理的節目2300ドルを割り込むと、三尊天井完成や、2023年安値を起点とした上昇チャネル上限割れなどが重なり、テクニカル的な売りが一時的に出そうな中、米金融当局者発言や、米マクロ経済指標を受けて一喜一憂するような反応ながらも、ネックライン水準は維持されている。
押し目買い意欲強い
米総合購買担当者景気指数(PMI)の上昇や、カナダやオーストラリアのインフレ加速を嫌気して、一目均衡表では、雲の下限を割り込み、三役逆転となった場面があったものの、押し目はすかさず買われ、雲を回復。2300ドル台を維持している。
引き続き、ネックライン割れからの急落リスクはあるものの、ネックライン割れがない場合は、ボックス相場(2300ドル~2500ドル)放れに付く戦術、もしくは、ネックライン水準で試し買い・ネックライン割れでの分割買いが有効であろう。JPX金もNY金同様、ネックラインを維持。悪い円安が加速するなら、円建て金の優位性は増していくだろうし、ドル円が反転した場合でも、今度はドル建て金の上昇に強く反応しそうだ。
過去30年間の月間騰落傾向を振り返ると、NY金の7月の切り返しは大きく、円建て金は7-9月にかけて、堅調推移となっており、 6月の安値は買い場となるケースが多かった。今年は、米大統領選挙を始め、世界各国で選挙が集中する選挙イヤーで、米国覇権・ドル基軸通貨体制の揺らぎと言う大きなテーマが根底にある中、6月の安値は中長期の買い場だったとなりそうだ。
イスラエルがパレスチナ自治区への侵攻を続けるなか、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの全面戦争リスクが根強いことは、安全資産である金の支援要因。イスラエル軍はレバノンとの国境付近に部隊を集めている。ヒズボラはインドがイスラエルへの兵器の供給を続けるなら、中東のインド大使館を標的とすると警告している。
【米国サービス業PMI】
【中国小売売上高】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。