NY金は、2000ドルの攻防戦|【Weekly Report】週間予定
2024年2月19日
週間展望(2/19~2/25)
このページで知れること(目次)
週間予定:FOMC議事録、ECB議事録、FRB理事講演
前週:米CPI・PPI
ドル円:終値ベースでの152円水準の攻防が焦点
金:NY金は、2000ドルの攻防戦
【先物市場が織り込む政策金利見通し】
【Fed Watch】
金ETF
週間予定:FOMC議事録、ECB議事録、FRB理事講演
今週は、週初はプレジデンツデー祝日のため米株式・債券市場は休場。一方、名が春節休場だった中国市場は取引を再開する。休場中に中国の各市が金融支援対象として適切な不動産開発事業をリストにまとめる「ホワイトリスト」政策の下で、国有銀行5行が8200件以上の住宅プロジェクト向け開発融資申請を受理したと報じられており、上海株式市場のリスタートに注目。
FOMC議事録(1月30日-31日開催分)、ECB議事録(1月25日開催分)、欧米製造業PMI ウォラーFRB理事らFRB理事・副議長などの講演・発言が相次ぐ。
前回のFOMC声明では、追加的な金融引き締めについての言及がなくなり、次の方向性が利下げであることを示しました 一方で「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切でないと考えている」として、市場の早期利下げ開始期待を牽制。パウエル議長会見でも、3月の利下げについておそらくないだろうと早期利下げ期待を牽制。
議事要旨やFRB理事講演で、利下げ時期についてどのような発言が出るのかが注目。
前週:米CPI・PPI
【中国GDP】
米労働省が16日発表した1月の卸売物価指数(PPI)は、前月比(季節調整済み)の上昇率が0.3%となった。
市場予測(0.1%上昇)を上回った。13日発表された米消費者物価指数(CPI)に続き、インフレの根強さを示す内容だった。
品目別でみると、サービスの価格が前月から0.6%上昇した。外来診療のサービス価格が2.2%上昇し、全体をけん引した。
化学製品の卸売り販売、資産運用などのサービス価格も上昇した。一方、パソコン関連製品の小売り販売サービスなどの価格は低下した。
製品の価格は前月から0.2%低下した。4ヶ月連続で下がった。ガソリン価格が3.6%低下し、エネルギー価格(1.7%低下)を押し下げた。
前年同月比(季節調整前)では0.9%の上昇だった。伸び幅は前月から縮小した。米労働省が13日発表した1月のCPIは前年同月比で3.1%上昇と、23年12月(3.4%上昇)から鈍化したものの、市場予想の2.9%を上回った。インフレ率は緩やかなペースで低下している。
変動の激しいエネルギー、食品、運搬を除くPPIのコア指数は前年同月比の上昇率が2.6%だった。前月比では0.6%上昇した。
CPIと同様に、PPIの伸び率も予想を上回ったことで、Fedwatchで見る米利下げ観測は大きく後退している。
ドル円:終値ベースでの152円水準の攻防が焦点
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、三角保合い上放れからの上昇の流れが継続している。
13日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)は、総合は前月比+0.3%、前年比+3.1%となり、それぞれ事前予想の+0.2%、+2.9%を上回った。コアは前月比+0.4%、前年比+3.9%となり、こちらも事前予想の+0.2%、+3.7%を上回った
米早期利下げ観測後退 インフレ後退
インフレの強さが確認されたことで、早期利下げ観測が後退。米長期金利が上昇するとともにドル買いの動きが強まった。ドル円は150円台後半まで続伸したことで、財務省の神田財務官は14日に「必要であれば適切に対処する」と円安進行を牽制。同日には鈴木財務相からも口先牽制が行われたが反応は限定的。
16日に日銀の植田総裁が「マイナス金利を解除しても緩和的な金融環境が続く」とコメントし、円売りにつながっており、株価は好感しているものの、ドル円に関しては政府と日銀の歩調のズレが意識され始めている。
前週末も1月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想以上に上昇し、早期の利下げ観測が一段と後退。1月の消費者物価指数(CPI)とあわせて米国のインフレの根強さが示され、米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが優勢になった。
テクニカル的に重要なのは、終値べースでの152円水準の攻防戦。週足終値ベースで、同水準を上抜いてくると、大きな三角保合いを改めて上放れることになり、悪い円安懸念が再燃する。同水準近辺での本邦当局の介入(口先・実弾)の動向に注目。21日に1月開催のFOMC議事要旨が公表。利下げ時期について参加メンバーからどのような発言が出ているのかが注目。
金:NY金は、2000ドルの攻防戦
【今週見通し・戦略】
先週のNY金(4月限)は、予想を上回る強気のCPIを受けた米長期金利上昇に伴うドル高を嫌気して、三角保合い下限を割り込み、下げ加速となった。
終値ベースで心理的節目2000ドルを下抜けると、もう一段のテクニカル売りも予想されるが、週足(期近つなぎ足)ベースで、 2000ドルが抵抗線から支持線に変化しており、一時的に割り込んでも、ドル離れが進むG7以外の中央銀行が買いを積み増すと見られ、押し目は値幅的にも日柄的にも限定的となりそうだ。
2月8日に特別検察官から「責任能力の低下と記憶力薄弱」により刑事訴追さえできないと宣告された高齢のバイデンが当選しても、4件で刑事訴追され、全てで有罪となれば最高で717年6月の禁錮刑が科される可能性があるトランプが当選しても、米国の分断は続き、覇権国・基軸通貨としての信頼を失う流れに変化は出ず、金が買われる大きな流れも変わらないだろう。
中長期的な買い場
目先の金利絡みの動きから売られた金の安値は、中長期的な買い場となろう。アフガニスタンの米軍完全撤退で「世界の警察官」の地位を自ら降りた米国の覇権は、既にピークは過ぎており、衰退は始まっている。内外ともに金の買い場探し戦術を維持したい。ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、激しい攻撃が続く東部ドネツク州のアウディーイウカから部隊を撤退すると表明。じりじり続いている原油高も要注意。
JPX金は、NY金が反落したものの、円安が相殺して、円建て金の優位性は継続している。
【先物市場が織り込む政策金利見通し】
【Fed Watch】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。