Weekly Report 2023年11月13日(月)
2023年11月13日
週間展望(11/13~11/19)
このページで知れること(目次)
週間予定:米中首脳会談、米CPI
前週:ウクライナ論調に変化
ドル円:介入・つなぎ予算の行方を睨みながらの展開
金:米国債格下げの影響・米中首脳会談を見極め段階
【ミシガン大学景気指数】
【ミシガン大学期待インフレ率】
金ETF
週間予定:米中首脳会談、米CPI
今週の注目は、米中首脳会談。
中国の王毅外相兼中共中央政治局委員がワシントンで10月26-27日に米国のブリンケン国務長官と会って以来、「イスラエル・ハマス戦争」「ロシア・ウクライナ戦争」に関して「習近平仲介論」が浮上している。
プーチン大統領は「一帯一路」フォーラムに参加するために北京を訪問する前に、中国メディア・グループの取材で、「和平案」に関して「私たちは中国の友人たちの提案を知っており、その提案を高く評価する。中国の提案は極めて現実的であり、和平協定の基礎を築くことができると思う」と答えている。
マクロ経済指標では、14日に10月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。前回9月のCPIは前年比+3.7%と8月と同水準の伸びとなった。米CPIは2022年6月の前年比+9.1%をピークとして伸びが鈍化し、今年6月+3.0%を付けた。この時はエネルギー価格が前年比-16.7%、中でもガソリン価格が-26.5%と大きく低下したことが背景。2021年のエネルギー価格が同年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて急騰したことで、その急騰時の価格との比較となった2022年の前年比が大きく鈍化した。
一方、住居費の伸びが鈍化を続けていることで、食品とエネルギーを除いたコア指数は順調に鈍化を続けていました。消費者物価指数全体を100としたとき、その34.8%を占める住居費は、家賃が基本的に更新時のみの変更になるといった事情から全体の変化に対して遅行する特徴があり、今年3月の前年比+8.2%がピークとなっている。
前週:ウクライナ論調に変化
【ゼレンスキー外しも】
ガザ紛争が始まり、米国の関心がロシア・ウクライナ戦争からイスラエル・パレスチナ問題に移行する中、NBCを始め多くのメディアが10月におけるウクライナ関係の会議において欧米がウクライナに「停戦を考えるように」と密かに勧告したという情報が流れ始めている。米中首脳会談を機に、中国主導で停戦やゼレンスキー外しが表面化するかもしれない。既に、イスラエル訪問は断られている。
ウクライナ軍の総司令官が英誌「エコノミスト」にゼレンスキーと軍との間の亀裂を明かしている。ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、「ロシアとの戦争が膠着状態に達している」と認めた。また、ウクライナ軍の反撃を指導するために使用された「NATO方式」は間違っていたことが証明されたと述べている。
ゼレンスキーは「膠着説」を否定したが、ニューヨーク・タイムズは、「欧米側がこれまで提供した兵器では、ウクライナ軍が突破口を開くのに十分ではなく、ウクライナ情勢を逆転させるのに役立つ兵器はほとんど残っていない」、「西側同盟国、特にアメリカのウクライナ支援を継続する意欲は弱まっている」と報道している。
「勝利は目の前に迫っている」とゼレンスキーは繰り返し宣伝しているが、そうではないことが徐々に報じられるようになってきた。特にイスラエルとパレスチナの紛争が勃発すると、世界の注目はウクライナから中東に移っている。加えて、ウクライナ政権の内部腐敗には目に余るものがあり、支援をする西側の熱意を薄め、兵士の戦意を削いでいる。
AP通信は「アメリカ議会には厳しい亀裂が走っている」と述べている。ウクライナとイスラエルを同時に支援すべきだという派閥と、ウクライナへの支援とイスラエルへの支援は別々に行うべきだという派閥と、ウクライナへの支援は減らすか完全にやめてイスラエルだけを支援すべきだという派閥など、大統領選に向けて、どれだけ票を取れるか、ユダヤ資金をどれだけ集められるかなど、ごった返すほどに乱れている。
米中首脳会談で、米国の覇権の揺らぎを世界に示すことになるかもしれない。
ドル円:介入・つなぎ予算の行方を睨みながらの展開
【今週見通し・戦略】
10月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が市場予想を下回り、失業率は市場予想を上回る弱い結果となったことを受けて、米利上げ停止観測が広がり、米10年債利回りは一時4.48%前後まで大きく低下した。ドル円は149.20台まで下落したが、日銀は緩和策継続姿勢を示す中、円売りの動きが主導してドル円は151円台を一時回復してきた。
パウエル発言でドル買い
9日にパウエルFRB議長が「十分な引き締めを行ったと確信していない」「必要なら追加利上げをためらわない」などと発言したことで、米長期金利が上昇してドル買いとなり、151円台にしっかりと乗せてきた。
CME FEDウォッチによると、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利据え置きとの見方が85%前後で、0.25%利上げが15%前後となっている。来年1月のFOMCでも据え置きの確率が76%前後で、0.25%利上げが22%前後となっている。
日銀はゼロ金利の解除やイールドカーブコントロール(YCC)撤廃など将来的には政策修正の可能性はあるものの、現時点では緩和策の維持が見込まれている。
米10月消費者物価指数は、総合は前月比+0.1%、前年比が+3.3%で、それぞれ前回の+0.4%、+3.7%を下回る見通し。コア指数の予想は前月比+0.3%、前年比+4.1%となっており、いずれも前回と同水準の見通し。事前予想を上回るようだと、追加利上げ観測が再び台頭する可能性が出てくる一方、予想を下回るようだと利上げ打ち止め観測が広がり、ドルの上値を抑えるだろう。
ドル円152円を超えてくると、政府・日銀によるドル売り円買い介入警戒感が高まりやすい。昨年の介入の際は、1回目の介入効果は限定的、2回目・3回目の介入で調整に入った。
格付け見通し格下げ
17日にはつなぎ予算の期限が到来するが、ムーディーズは10日、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げた。米財政赤字の高止まりが継続する見通しとした。
金:米国債格下げの影響・米中首脳会談を見極め段階
【今週見通し・戦略】
米雇用統計を始め、足元で米景気減速や労働需給の緩和を示す経済指標を受け、FRBによる追加利上げ観測は後退しているが、9日にはパウエルFRB議長が国際通貨基金(IMF)のパネル討議で、「さらなる引き締めが適切になれば、ためらいなくそうする」と述べ、必要なら一段の金融引き締めをためらわないとの考えを示したことを受け、米景気やインフレ動向次第で追加利上げに動く可能性が意識された。市場想定よりも利下げのタイミングが遅れるとの見方も広がり、三尊天井のネックラインや200日移動平均線を割り込み、テクニカル売りも巻き込み下げ加速となった。10月6日安値~10月27日高値までの38.2%押し(1944.8ドル)は、価格帯別出来高の厚い水準。基準線とも重なる同水準で下げ止まるか否か、200日移動平均線を早々に回復できるか否かがテクニカル面からの焦点。半値押しは1921.6ドル。61.8%押しは1898.4ドル。
中国人民銀行(PBOC)の発表によると10月の金買いは23トン。12ヶ月連続の買いとなり、金保有量は2215トンとなった。今年に入ってから204トンの増加で、世界の中央銀行の中での増加量は一番。WGCが発表第三四半期の中央銀行の金買いは337トンで、過去の四半期ベースの買いで見ると史上第三位の記録。
また、17日の米つなぎ予算の期限を前に、ムーディーズは10日、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げた。米財政赤字の高止まりが継続する見通しとした。金の長期上昇トレンドに変化はなく、押し目買いスタンスは維持。チャート上の底打ち確認されれば、追加買いを考えたい。
米中首脳会談
15日には米中首脳会談が予定されているが、短期的に対立が緩和するのか、それとも緊張が高まるのか、中国主導でロシア・ウクライナ戦争や、イスラエル、パレスチナ間の紛争の調停が進むのか否かに注目したい。
【ミシガン大学景気指数】
【ミシガン大学期待インフレ率】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。