Weekly Report 2023年7月3日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2023年7月3日(月)

NSトレーディング 菊川弘之
2023年7月3日

週間展望(7/3~7/9)

週間予定:日銀短観・FOMC議事要旨・米雇用統計

【週間スケジュール(7月3日~7月9日)】

3日に日銀短観。事前予想は、大企業製造業の景況感が7四半期ぶりに改善に転じる見通し。資源高も落ち着き、足元の円安は輸出産業に対してプラスの方向に働きそう。消費者物価上昇率が日銀の物価安定目標である2%を超えて推移する中、強気の内容となれば、日銀の金融政策に影響を与える可能性。


30日の米個人消費支出(PCE)デフレータは、は前年同月比、前月比ともに伸びが鈍化。米金融当局者は年内で2回の追加利上げを示唆しており、7月FOMCにおける0.25%の利上げ観測は根強いが、過剰な利上げによる景気悪化懸念がやや後退した中、今週の注目は、雇用統計。

非農業部門雇用者数は+20.0万人、 失業率は3.6%が予想されている。非農業部門雇用者数の伸びが一気に鈍化するが、20万人の伸びは、コロナ前10年の月平均+18.3万人程度で、必ずしも弱い数字ではない。事前予想から大きく乖離しなければ、米国の追加利上げ期待を大きく崩す ものにはならない。今年に入って1月、2月、4月、5月と5回中4回の雇用統計で、非農業部門雇用者数は市場予想を大きく超える結果となっている(3月は発表時点では予想値とほぼ一致、その後下方修正)。予想を超える伸びを示すと、ドル高材料となる可能性も。

独立記念日前後のテロ関連には注意。



前週Review:歴史的な保合い上放れの攻防戦

【歴史的転換の攻防戦】

ドル円相場の推移

日米金利水準や金融政策の差を背景にドル円は、 6月30日に約7ヶ月ぶりに145円台をつけた。2022年の円安ドル高局面は、ドル指数上昇と歩調を合わせて円安ドル高になったが、2023年のドル円相場は「ドル高」ではなく「円安」の面が大きい。「ドル指数」が下落する中でも、対主要通貨に対しての円売りは継続しており、円安・ドル高基調が続いている。


国際決済銀行(BIS)が算出する通貨の購買力を示す「実質実効為替レート」をみると、円は95年に付けたピーク比の下落率が6割に達した。先進国通貨では異例の大きさで、円売り圧力の背景は、日米金融政策の差だけではなく、平均給与水準・潜在成長率の低さや、財政状況も含め、日本の国力低下が円売りの背景との見方が増えている。物価上昇を背景に、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を見直すとの観測も出ているが、潜在成長率を考慮するとマイナス金利の解除が限界、とみる市場参加者は多い。


リーマン・ショック以前、日米の長期金利差はおおむね3%程度だったことから、米長期金利が4%台に上昇すれば、日本の長期金利も1%を超える可能性が高まる。その際、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に追い込まれ、金融政策の正常化で後手に回るようだと、財政不安が高まり、円安・株安・債券安のトリプル安のシナリオも意識されてくる。生産性向上や地方経済の活性化が遅れたまま、資本逃避を伴う超円安時代を迎えた場合、巨額の借金を抱える国家財政は危機に直面する。


約27年続いたレンジ相場の上限(150円)~90年6月高値(154.8円)の攻防戦へ。ここを明確に上抜いてくると、大きな円安トレンドが発生すると思われ、本邦当局は同水準維持の強い意思・行動が示される可能性。



ドル円:大口投機玉のドル買い円売りピーク感強い

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)移動平均線(9・21日)

6月28日に欧州中央銀行(ECB)フォーラムで、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ベイリーBOE総裁、植田日銀総裁が討論会を行った。 パウエルFRB議長は「6月の会合では利上げを見送ったが、今後のペースはまだ決まってない」「2会合連続での利上げもありうる」と述べた。植田日銀総裁は、「2024年も物価上昇が続くようなら、金融緩和策を変更する理由となる」「インフレ率は今年末にかけて輸入物価の低下を背景に低下する」などと述べた。ラガルドECB総裁は7月も利上げを続ける姿勢を示した。ベイリーBOE総裁は、インフレ率を2%に戻すために必要な対応を行う方針を示した。


FRBだけでなく、欧州中央銀行(ECB)、英中銀(BOE)も高いインフレ率の影響で利上げが継続されることが見込まれており、対主要通貨で円売りが強まった。ドル円も政府・日銀による介入警戒感は根強いものの、金融政策に関するスタンスの差が材料視され、ザラバで145円台乗せを達成した。


ただ、前週末は、5月の米個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は前年同月比3.8%と、前月(4.3%)から伸びが鈍化。変動の大きいエネルギーと食品を除くコア指数の伸び率も同4.6%と、前月と市場予想(ともに4.7%)を下回った。ミシガン大学が発表した6月の消費者態度指数(確報値)は市場予想を上回った一方、消費者が予想する1年先のインフレ率は3.3%と前回(4.2%)から低下した。


これら米経済指標がインフレ鈍化の兆しをみせたと受け止められ、ドル円は過度な米利上げ観測が後退したことから、円買い・ドル売りが優勢となった。足元では二陰介在十三陽連と短期的な買われ過ぎ感が意識されており、CFTC建玉明細では、大口投機玉のドル買い円売りポジションが、ここ数年の最高水準にまで大きく膨れ上がっており、いつ調整に入ってもおかしくない状況。

日米介入調整中

今週は、独立記念日の米休場もあり、本邦当局の口先牽制も相次いでおり、調整含みの動きが予想される。仮に、145円を乗せて上に走るようなら、本邦の牽制は強まるだろう。イエレン米財務長官は30日、円安対応の為替介入の是非について、日本政府と調整に入っていることを明らかにしている。2022年9月に日本が約24年ぶりに円買い介入した際、米財務省は「日本の行動を理解している」と容認するコメントを出したている。



金:1900ドル以下での買い意欲強い

【今週見通し・戦略】

JPX金(週足)とNY金(週足)

ロシアの反乱未遂が下支えになる場面も見られたが、24日にベラルーシの介入で進軍を停止した。ベラルーシのルカシェンコ大統領がプーチン大統領の了承の下で同氏と協議し、事態を鎮静化する事で合意した。ロシアの混乱を受けて金が買い戻される場面も見られたが、事態が収まったことで市場の関心は各国中銀の利上げ見通しに戻った。


NY金は、欧米の金融当局者がタカ派姿勢を示したことや、堅調な米経済指標によるドル高を受けて売り優勢となった。世界的な金利上昇や、テクニカル悪化を受けて下値試しの流れ。4月高値と5月高値をダブルトップとして完成しており、2000ドル水準にあるネックラインが上値抵抗。一方、2月安値と3月安値をボトムとしたダブルボトムのネックラインと重なる心理的節目1900ドルが下値支持。円建て金は、円安が海外安を相殺し、史上最高値水準での保合い継続。円建て金の優位性が継続している。円高に反転した場合も、NY金高が円高を相殺するだろう。イエレン米財務長官は30日、円安対応の為替介入の是非について、日本政府と調整に入っていることを明らかにしている。

良い金利上昇 悪い金利上昇

CME FEDウォッチでは、7月のFOMCでの0.25%の利上げ確率は87%前後となっている。9月利上げも25%程度となっているが、マクロ経済指標が大きく崩れている訳ではなく、景気後退につながる悪い金利上昇ではなく、株価上昇・景気拡大に伴う良い金利上昇に対する反応となっているのが、現在のNY金の値動き。


ただし、米大統領選挙の前年の米株価は強気の時間帯。ただし、大統領選挙前年の7-9月期は、調整含みの値動きを採りやすい時間帯。パンデミック時の超過貯蓄は23年末頃には枯渇する見通し。更に米連邦最高裁は30日、バイデン米政権による学生ローン返済の一部免除措置を認めない判断を下した。3年以上、延長してきた学生ローンの支払い猶予措置も8月末で打ち切られる。悪い金利上昇が意識されてくると金利上昇と共にNY金の上昇も並行して起きてくる。1900ドル以下を買い拾おうとする実需も多い。



【パンデミック時の超過貯蓄】

パンデミック時の超過貯蓄



【大統領選挙前のS&P】

大統領選挙前のS&P



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

NSトレーディング株式会社

代表取締役社長 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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