Weekly Report 2023年6月5日(月)
2023年6月5日
週間展望(6/5~6/11)
このページで知れること(目次)
週間予定:ブラックアウト期間
前週Review:債務上限問題採決、デフォルト(債務不履行)回避
ドル円:140円乗せでの本邦当局の牽制の有無に注目
金:円建て金の優位性・堅調が継続見通し
【米雇用統計】
【非農業部門雇用者数】
金ETF
週間予定:ブラックアウト期間
6月13日-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りの有無が焦点。先週の米ジェファーソンFRB理事やハーカー・フィラデルフィア連銀総裁による金利据え置き示唆発言に加えて、米債務上限問題が上院・下院で採決され、最悪の事態は回避されたこともあり、据え置き見通しが優勢。
3日から米国はブラックアウト期間(FOMC関係者による金融政策に関する発言が基本的に禁止される期間)に入っており、米マクロ経済指標に関心が向く。
5日に発表される5月の米ISM非製造業景気指数の市場予想は、52.5と4月の51.9から上昇見通し。4月は新規受注が56.1と3月の52.2から大きく伸びて全体を支えた。今回も強めの数字が出てくると、7月以降の追加利上げ期待につながる可能性も。
6月見送りでも7月にインフレや景気動向次第で、利上げ再開の見方も増えている。
前週Review:債務上限問題採決、デフォルト(債務不履行)回避
【米債務上限問題】
ホワイトハウスは3日、バイデン米大統領が米政府の債務上限の効力を2025年1月まで停止する「財政責任法」に署名したと発表した。同法は成立し、米国債が史上初めてデフォルト(債務不履行)に陥る事態は回避された。財政悪化を避けるため、10月から始まる2024年度の予算は社会保障や国防費などを除いた支出を前年度並みにし、25年度も増加を1%にとどめる。
上限停止は、25年1月1日まで
米議会予算局(CBO)が見積もる今後10年間での財政赤字の圧縮額は1.5兆ドルと、バイデン氏が予算教書で示した規模の半分。政権が掲げる富裕層向けの増税案は共和の反対で実現のメドが立っておらず、当面は財政悪化を止められないことになる。24年11月の大統領選で勝利した次期政権は、議会と調整して再び債務上限を引き上げたり、上限の効力を停止したりする必要がある。上限停止期間は新政権が立ち上がる直前の25年1月1日に終わる。
6月FOMCは見送り、7月FOMCで利上げ再開との見方が増加中。
ドル円:140円乗せでの本邦当局の牽制の有無に注目
【今週見通し・戦略】
米連邦議会上院は1日夜(日本時間2日朝)、歳出削減などを条件に政府の債務上限の効力を2025年1月まで停止する財政責任法案を可決した。懸念された米国債の債務不履行(デフォルト)は回避された。
一方、米連邦準備理事会(FRB)高官から6月FOMCで利上げ見送りを支持する発言が相次いでいる中、5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比33万9000人増と市場予想(19万人増)以上に増えた一方、失業率は3.7%と市場予想(3.5%)を上回り、平均時給の前年同月比の上昇率も市場予想を下回った。
強気の非農業部門雇用者数を受けて、長期金利上昇・ドル買いで反応したものの、弱気の失業率や平均時給を受け労働市場の過熱感は収まりつつあり、次回FOMCで政策金利を据え置き、様子見するとの見方が140円超のドル円の上値を抑えた。30日に140円台に乗せた際に、財務省・金融庁・日銀の情報交換会合後の会見で神田財務官は、為替動向を注視して必要があれば適切に対応すると表明し、ドル円が調整入りした経緯があることも140円超での警戒感につながった。
本邦当局の牽制に注目
ただし、先週レポートで指摘したように、米債務上限問題が議会で無事に採決した事で、日本当局の積極的な牽制がなければ、200日移動平均線を下値支持として、2022年10月高値~2023年1月安値までの下げ幅に対する61.8%戻し(142.5円)や、一目均衡表からの上値目標値であるN=141.6円、V=142.0円、E=145.9円などを試す流れとなりそうだ。
まずは140円乗せでの本邦当局の口先介入の度合いを試すような動きが出てきそうだ。牽制がなければ5月高値の攻防へ。
金:円建て金の優位性・堅調が継続見通し
【今週見通し・戦略】
NY金(8月限)は、ダブルトップ完成。
ネックラインが上値抵抗となり、下値試しの流れが継続している。一目均衡表からの下値目標は、E=1920.1ドル、V=1878.6ドルなどがカウント可能。
20日間安値を更新しており、トレンドフォロー型指標は、多くが陰転中。50日間安値を更新した事で、もう一段の売り圧力が想定されるが、大きなテーマ(米覇権・基軸通貨の揺らぎ)での金買いシナリオに変化はなく、テクニカル的に売られた安値は、結局、中長期的な買い場となるだろう。
一方、JPX金は円安が支援要因となり、史上最高値圏での保合いとなっている。内外でチャート形状に差が出ている状況だ。
中央銀行の買い継続
5月末に発表されたワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)調査によると、中央銀行は依然として金準備を増やすことに非常に熱心で、24%が今後12ヶ月間に買い増す予定と回答。地政学的な懸念、金利懸念、インフレ圧力の高まりに後押しされ、中央銀行の4分の1近くが今年中に金準備高を増やすことを検討している。特に、新興国の中央銀行が金の積み増しに意欲的で、ロシアによるウクライナ進行以降に高まりを見せている各国中央銀行のドル離れ・金へのシフトの流れは、昨年だけでなく、来年にかけて拡大して継続しそうだ。債務上限問題は一旦、収まりを見せたものの、根本的な解決ではなく、来年の米大統領選挙に向けて、政治相場の流れは強まりそうだ。
円建て金は、ドル安になればNY高が、ドル高になれば円安が下値を支える構図で、史上最高値更新の流れが継続しそうだ。
【米雇用統計】
【非農業部門雇用者数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。