Weekly Report 2023年3月27日(月)
2023年3月27日
週間展望(3/27~4/2)
このページで知れること(目次)
週間予定:上院・下院の公聴会(米銀行破綻と連邦当局の対応)
前週Review:中露首脳会談
ドル円:ドル基軸通貨体制の揺らぎが根底に
金:JPX金は、8000円が下値支持に変化
金ETF
週間予定:上院・下院の公聴会(米銀行破綻と連邦当局の対応)
クレディ・スイスのUSBによる買収に際して、クレディ・スイスが発行していたAT1債が無価値になるという措置をとったことで、市場の混乱が見られている。24日のドイツ銀行の株価は前日比で9%安、2月末比で28%安まで下落。同社の債務不履行(デフォルト)リスクを織り込むクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は5年物が2.2%超と、22日の1.42%から上昇して2018年以来の高水準となった。欧州銀行株は軒並み売られており、仏ソシエテ・ジェネラルが27%安、英スタンダードチャータードは25%安、オランダのINGグループは22%安となった。
「今後数週間のうちに根拠を伴わない信用問題の発生が予想される」と指摘する声も多い。今週も欧米を中心とした金融機関のニュースや株価動向、債券市場動向などを、睨みながらの展開が予想される。
28日の上院銀行委員会で行われる公聴会、29日の下院金融サービス委員会での公聴会では、最近の破綻と連邦規制当局の対応について話される。
28日の第1回では米連邦預金保険公社(FDIC)のグルーエンバーグ会長 、バーFRB副議長(金融監督担当)、米財務省のリャン国内金融担当次官の証言が予定されている。 同公聴会で当局による積極対応と、今後の混乱回避への姿勢が市場で評価されるか否かが注目。
トランプ大統領逮捕の有無にも注意。蔡英文台湾総統の訪米にも注意。
前週Review:中露首脳会談
【和平を進める中露】
ロシア・ウクライナ戦争に関しても和平案を示した中国と、武器を提供して戦争を長引かせている英米との差が客観的に意識されていく。習近平がロシアを訪問した3月20日は、大量破壊兵器を理由にイラクへ不法侵略したイラク戦争20周年の記念日。あえて、この日にロシアを訪問したのは、「米国だけが何をやっても許されるというダブルスタンダード」に、次の覇権国家として意を唱える意味合いもあっただろう。
中国CCTVは「西側は世界各地で戦争を引き起こし、火に油を注ぎ続け、国際社会を分断させることに余念がないが、中国はその逆の方向に動いている。人類運命共同体を軸に、世界に和睦と平和をもたらそうとしているのは「中国」だということが、これで明らかになっただろう」と解説している。
世界全体を見渡すと、「民主主義を平和的に輸出する」のではなく、「戦争ビジネスと連携しながらアメリカ流の民主義を押し付ける」といったやり方を、好ましく思っていない国々は、かつては発展途上国と呼ばれていた国が多いが、中国・インド・南米などの急速な経済発展で、もはやG7諸国と肩を並べる経済規模に発展している。強大な軍事力以外に米国が秀でている分野が少なくなっている。
100年振りの変化
4時間半に及ぶ中ロ首脳会談を終えて、習近平国家主席は、プーチン大統領に「百年ぶりの変化が訪れている。一緒に、この変化を推進しよう」と声を掛け、プーチン大統領は「力強く同意」した。中国メディアの報道を見る限り、首脳会談前にはロシアと距離を置いていた中国が、会談後は首脳間の結束が強い決意と共に高まり、覚悟を決めた感触だ。
3月15日にはシリア・ロシア首脳会談が行われ、「トルコとシリアの和睦」に関しても話し合われた。米国ができなかったことを、中露が実現する流れが始まっている。中東・アフリカ・南米での米国の存在感が、ますます後退。内向き姿勢が強まる。
ドル円:ドル基軸通貨体制の揺らぎが根底に
【今週見通し・戦略】
ドル円は、200日移動平均線に上値が抑えられて以降、下値試しが継続している。米連邦公開市場委員会(FOMC)では大方の予想通り0.25%の利上げが決まった。一方、声明文では前回会合までの「継続的な利上げ」という文言が削除され「いくらかの追加の引き締めが適切になるだろう」と表現が改められた。2023年末の政策金利見通しも5.1%で据え置かれ、利上げは年内あと1回予想に。
米利上げが長く続かない可能性が意識され、米長期金利に低下圧力がかかった。
各国中銀の政策の差が材料視されてくる可能性
英中銀は予想通り25bpの利上げを発表。票割れは前回と同様の7対2で、反対票は据え置き主張。据え置き派の増加がある程度見込まれていたことからポンド買いの反応がみられた。スイス中銀は50bpの大幅利上げを継続し、インフレ抑制を最優先している。アジア各国やノルウェー中銀なども利上げを実施しており、全般にインフレ対応が優先される格好だった。ただ、利上げペースが鈍化していることもあって、今後、各中銀間で利上げペースや停止時期に差異思惑が出てくる可能性も。22日に欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は講演で、「インフレを2%に戻す目標に妥協はない」「金融機関に流動性を供給する用意がある」などと述べた。ラガルド総裁は前回(3月16日)のECB理事会後の記者会見でもインフレと戦う姿勢を強調しており、その姿勢にブレはない。 一方、週末にはユーロとポンドが急落した。銀行を巡る懸念が重しとなった。 欧州連合(EU)首脳と欧州中央銀行(ECB)は24日、銀行セクターに関する統一見解を示し、域内金融機関は十分な資本と流動性を有していると述べ、市場の動揺の鎮静化に努めた。
ドルに関しては、中長期的な材料としてドル基軸通貨体制の揺らぎが根底にあり、戻りは鈍いだろう。銀行救済で米財政問題も改めて材料視されさそうだ。
2022年1月安値~10月高値までの上昇に対する61.8%押しと重なる2023年1月安値を維持できるか否かが焦点。
金:JPX金は、8000円が下値支持に変化
【今週見通し・戦略】
3月に入り、金価格が急伸。ドル建て金は2000ドル突破、円建て金(小売価格)は史上最高値を更新した。一般メディアでは、「シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻」や「クレディ・スイス経営不安」などに伴う信用リスク・金融システム不安が金上昇の主因として報じているが、3月13日(月)当レポートや、テレビ(日経CNBC・ストックボイス)などでお話ししたように、金大幅上昇の主因は、中国が仲介したサウジとイランの外交復活が、覇権国家・基軸通貨を巡る歴史の中で、大きなターニングポイントとなる可能性を金が織り込み始めたからだ。
仲介を成功させた中国が次の覇権国として存在感が大きくなることは確実だ。裏を返せば、中東における米国の影響力が顕著に落ち込んでいるということがアフガンの撤退失敗に続き表面化した。
ロシア・ウクライナ戦争に関しても和平案を示した中国と、武器を提供して戦争を長引かせている英米との差が客観的に意識されていく。習近平がロシアを訪問した3月20日は、大量破壊兵器を理由にイラクへ不法侵略したイラク戦争20周年の記念日。あえて、この日にロシアを訪問したと言うことは、「米国だけが何をやっても許されるというダブルスタンダード」に、次の覇権国家として意を唱える意味合いもあっただろう。
4時間半に及ぶ中ロ首脳会談を終えて、習近平国家主席は、プーチン大統領に「百年ぶりの変化が訪れている。一緒に、この変化を推進しよう」と声を掛け、プーチン大統領は「力強く同意」した。中国メディアの報道を見る限り、首脳会談前にはロシアと距離を置いていた中国が、会談後は首脳間の結束が強い決意と共に高まり、覚悟を決めた感触だ。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。