Weekly Report 2023年1月30日(月)
2023年1月30日
週間展望(1/30~2/5)
このページで知れること(目次)
週間予定:FOMC・雇用統計
前週Review:独「レオパルト2」・米「エイブラムス」供与
ドル円:米利上げペース減速見通し
金:ドル離れ進む流れ(非米諸国)
金ETF
週間予定:FOMC・雇用統計
今週は月末と週末が重なるうえに、米連邦公開市場委員会(FOMC)・欧州中央銀行(ECB)理事 会や雇用統計などの注目マクロ経済指標が相次ぐ。
2月1日にFOMCの結果が発表される。今回は0.25%へ縮小すると見込まれている。FOMCの翌日には英中銀(BOE)金融政策会合(MPC)とECB理事会。
英中銀MPCは0.5%利上げの継続見通しがコンセンサス。18日に発表された英消費者物価指数(12月)は前年比+10.5%と高水準。2ヶ月連続での鈍化とはいえ、物価高が収まったという印象はない。ただし、景気悪化の度合いが米国と比べて強く、0.25%見通しになった場合もあり得る。
ECB理事会は0.5%利上げの継続で見通しがコンセンサス。注目は理事会後の総裁会見で今後の大幅利上げ継続姿勢が見られるとユーロ買いで反応する可能性。
前週Review:独「レオパルト2」・米「エイブラムス」供与
【戦車配備決定も実働までに時間】
慎重姿勢を貫いてきたドイツが、ついに「レオパルト2」の供与を決断した。米「エイブラムス」、英「チャレンジャー2」などとともに、ウクライナ軍に投入されることになった。
今回注目されているのが、「レオパルト2」。ヨーロッパ各国などが合わせて2000両以上保有しており、弾薬や部品の補給、メンテナンスがしやすい。中長期にわたり弾薬補給や修理を受けられる利点がある。
ただし、ドイツは最初のレオパルト2がウクライナに届くまで、「3ヶ月かかる」との見通しを示している。「M1エイブラムス」は「世界最強の戦車」の異名を持つものの、引き渡し後には操縦訓練が必要で、米軍の保有戦車ではなく、新たに発注して供与するため、実際の配備には1年近くかかるとの見方もある。また、レオパルト2はディーゼルエンジンだが、エイブラムスは強力なガスタービンエンジンで動くため、運用には大量のジェット燃料を必要とする。燃料の補給路確保が難しく、ウクライナ軍が運用できないとの懸念も根強い。
春先に危機高まる
バーンズCIA長官が、先々週にウクライナを極秘訪問し、ゼレンスキー大統領らと会談した。その際に、ウクライナに戦車が配備される前に、ロシアが仕掛ける可能性がある見立てが説明された。更に、米下院で多数派を握った野党共和党内でウクライナ支援に消極的な議員がいるのを踏まえ、軍事支援継続が今後難航する恐れもあるとの考えを伝えた。欧州刑事警察機構(ユーロポール)は、2022年7月に「確立された密輸ルートやオンラインプラットフォームを通じ、ウクライナから欧州連合(EU)域内に武器や爆発物が横流しされる恐れが高い」と警告を発している。
ドル円:米利上げペース減速見通し
【今週見通し・戦略】
ドル円は、2022年1月安値~10月高値までの上昇に対する61.8%押しを達成後、日銀が5年物の共通担保資金供給オペを行う(1/23)と、円債金利が低下した事や、1月の米製造業PMI速報値、米サービス業PMI速報値が予想を上回った(1/24)ことで、自律反発の動きとなり、131円台前半まで上昇した。
ただし、2022年10月高値を起点とした下降チャネル上限で上値を抑えられ、反落となっている。
米PMI速報値、GDP速報値、耐久財受注、新規失業保険申請件数などはいずれも回復傾向が示された。フルコロナ政策に舵を切った中国の経済再開の動きや、欧州の暖冬によるエネルギー危機の解消に加え、米企業決算ではIT関連の決算が無事に通過し、リスクオンに繋がりやすい地合いとなっている。
FOMCは、サプライズなしか?
今週は、1月31日から2月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。CME FEDウォッチでは、今回のFOMCでの0.25%の利上げ確率は99%前後となっており、注目は声明とパウエル議長の記者会見となる。 3月FOMCについては20%前後が据え置き予想。5月のFOMCでは、70%程度が4.75-5.00%以下を見込んでおり、当初の5%台乗せが少数見通しとなっている。
また、3日の米雇用統計では、非農業部門雇用者数、平均賃金に注目。平均賃金が市場予想を下回るようなら、賃金インフレの低下につながり、インフレ率を抑える要因になる。ドル円は、米経済指標は強弱入り混じった内容になることが見込まれるが、FRBの利上げペース減速見通しが上値を抑えるとみられる。
米連邦債務が19日、31兆4000億ドルの上限に到達した。6月5日までの「債務発行停止期間」を設け、一部の公的年金基金への投資を停止するが、議会で債務上限引き上げ合意がなければ、数カ月以内に財政危機を招く恐れがあることは、ドルの売り要因。
金:ドル離れ進む流れ(非米諸国)
【今週見通し・戦略】
NY金(4月限)は、欧州中央銀行(ECB)の利上げ見通しや、カナダ銀行が今後の金利据え置きを示唆したことを背景にドル安に振れたことを受けて堅調となったが、予想以上の米国内総 生産(GDP)などを受けて上げ一服となった。第4四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比2.9%増となり、事前予想の2.6%増を上回った。
ただ次回のFOMC(1/31-2/1)では25ベーシスポイント(bp)利上げに減速し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は4.50~4.75%になる見通しである。またCMEのフェドウォッチによと、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は、3月に4.75~5.00%となり、11月まで維持するとみられており、米金利上昇によるNY金の調整は限定的と思われる。
商品が「優れたトータルリターン」(GS)
ゴールドマン・サックスは今月「特に金について「米連邦準備理事会(FRB)が成長懸念にますますシフトし、利上げペースを鈍化させ、ETF(上場投資信託)保有が安定化する可能性がある中、脱ドル化は金にとって非常に強気材料であり、持続的な上昇の頂点に立つ」とした。
実際、先週にはブラジルのルラ大統領とアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、アルゼンチンのウェブサイト「ペルフィル」に共同執筆した記事で、共通通貨の構築を含む経済統合深化を目指す考えを示した。スペイン語で南を意味する「スル」が共通通貨の名称として検討され、実現すればEUに次ぐ規模になる見通し。為替取引での米ドルへの依存を低減する狙いがある。ロシア・中国だけでなく、いわゆる「新G8」(2022/8/18付け「モスクワ・ワールド・スタンダード(MWS)参照」)諸国が、ドル離れを進めており、金準備を増やしている動きが続いている。
三角保合い上放れた円建て金は調整が入っても、金(1㎏)の小売価格(手数料・消費税込)が1000万円を超えてくるのも時間の問題となってきた。既存のレポートやTVでお話ししている通り、「(1g)8000円が抵抗線から支持線に変わり、(1g)1万円以下は安かった」と感じる時代もそう遠くないだろう。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。