Weekly Report 2022年12月19日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2022年12月19日(月)

調査課 菊川弘之
2022年12月19日

週間展望(12/19~12/25)

週間予定:日銀金融政策決定会合前後で乱高下も

【週間スケジュール(12月19日~12月25日)】

年内最後となる日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が見込まれています。円安やエネルギー価格上昇などを受けて、原材料・コスト高を背景とした値上げが相次いでおり、23日に発表される11月のCPIは+3.7%と上昇見込み。12月のCPIでは4%に乗る可能性も。


14日に、来年4月8日で任期満了を迎える黒田総裁の次の体制下で金融政策の点検・検証が行われるとの報道が円高要因となったが、17日には岸田政権が、安定的な経済成長を実現するための政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたと報じられた。

「できるだけ早期に実現する」としている2%の物価上昇目標の柔軟化を検討し、岸田文雄首相が来年4月9日に就任する次期日銀総裁と協議して内容を決める。黒田東彦総裁が目標達成を目指して10年近く進めてきた大規模な金融緩和の修正につながる可能性がある。

外国人投資家中心に、日銀金融政策決定会合に向けて、仕掛け的な円高も想定される一方、国内勢のコンセンサスとなっている政策変更なしで巻き戻しの動きも。クリスマス休暇に伴う薄商いの中、乱高下するリスクには注意したい。

21日は、11月の訪日外客数。前回10月は49万人に増加。入国制限の緩和は今回からフル寄与するので60万人ペースと単純計算される。



前週Review:利上げペース減速も、タカ派姿勢維持

【FOMCはややタカ派寄り】

FOMC参加者による政策金利・経済見通し(中央値)

米連邦準備理事会(FRB)は12月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%の利上げを決めた。利上げ幅は4連続で続いた0.75%から縮小。減速は今回の利上げ局面で初めて。参加者による2023年末の政策金利見通しは中央値が9月時点の4.6%から5.1%に引き上げられた。

次回会合(1/31-2/1)から利上げ幅を通常の0.25%に戻した場合、到達点まで3回分(1月・3月・5月)になり、5月会合で利上げを停止するシナリオ。

もう一つが、次回会合で0.5%の利上げ、3月会合で0.25%の利上げで利上げを停止するシナリオなどが想定される。いずれも利上げの到達点はリーマン危機前の最高水準である5.0~5.25%に並ぶ。


経済見通しでは、実質GDP成長率の2023年と2024年の予想中央値が引き下げられ、失業率と物価上昇率の2023年から2025年までの予想中央値が引き上げらた。なお、2023年の予想レンジをみると、実質GDP成長率の下限は-0.5%、失業率の上限は5.3%。前回は、順に-0.3%、5.0%でしたので、2023年末のドット中央値が上方修正されたこともあり、2023年の米景気に対し、かなり慎重な見方が伺える。

パウエル議長の記者会見では、11月30日の講演での発言と、基本的には同じ趣旨のもの。具体的には、物価安定の回復のため、政策金利をしばらく引き締め水準で維持する必要があるとし、歴史は時期尚早の金融緩和に対し強く警告していると述べ、市場の早期緩和期待を牽制しました。また、次回の利上げ幅はインフレと景気次第であり、2023年の利下げは検討していないとの見解も示された。

米金利は頭打ちNY金は底打ち

今回のFOMCは、総じてタカ派的な内容だが、おおむね想定の範囲内だった。「利上げ停止時期」の見方は分かれているものの、過去の例では利上げ終了前に先行して「米金利は頭打ち・NY金は底打ち」となっている。



ドル円:200日移動平均線の攻防

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げを決めた。利上げ幅は、4連続で続いた0.75%から小さくなった。減速は今回の利上げ局面で初めて。参加者による2023年末の政策金利見通しは中央値が9月時点の4.6%から5.1%に引き上げられた。


欧州中央銀行(ECB)理事会では、物価高を抑えるため、政策金利を0.5%引き上げることを決めた。7月会合以降、利上げは4回連続。

英イングランド銀行(中央銀行)は、政策金利を3%から3.5%に引き上げると発表。利上げは9会合連続。利上げ幅は0.5%と、前会合の0.75%から縮小した。物価上昇を抑えるため引き締めを継続しつつ、景気悪化にも配慮した格好。

米国利上げ終了前後1年の実質金利の推移

13日に発表された11月の米消費者物価指数では、前月比は+0.1%(予想+0.2%、前回+0.47.1前年比は+7.1%(予想+7.3%、前回+7.7%)となった。コアは前月比+0.2%(予想+0.2%、前回+0.3%)、前年比が+6.0%(予想+6.1%、前回+6.3%)となった。いずれも市場予想を下回ったことから、米利上げペースが減速するとの見方から、米長期金利低下とともにドル売りの動きが広がったが、FOMCやパウエル議長の記者会見がややタカ派なものとしてとらえられ、200日移動平均線は維持されている。

クリスマス休暇で乱高下も

欧米の政策金利は引き上げられたものの、今週の日銀金融政策決定会合では、現状維持がコンセンサス。金融政策の違いが改めて材料視されれば、ドル円の下値を支えるだろう。一方、クリスマス休暇で薄商いの中、外国人投資家の中には、日銀の政策変更を期待する向きもあり、仕掛け的な円買い・ドル売りも注意。14日には、複数関係者からの情報として、来年4月8日で任期満了を迎える黒田総裁の次の体制下で金融政策の点検・検証が行われるとの報道をきっかけに、円高に振れる局面もあった。200日移動平均線を巡って、薄商いの中、値が飛ぶリスク・乱高下するリスクにも注意したい。



金:米金利上昇に伴う11月安値で大底を確認

【今週見通し・戦略】

米10年債利回りとNY金(12月限)

NY金(2月限)は、11月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回り、中心限月として6月下旬以来の高値を付けていたこともあり、FOMCを受けて利食い売りで上げ一服となった。ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が5.00~5.25%と示唆されたことを受けて戻りを売られた格好だ。ただ、タカ派よりと報じられたFOMCは、概ね市場予想の範囲内で今後10月~11月にかけて付けた米金利の高値を更新する可能性は低く、米金利上昇に伴うNY金の安値は、11月3日安値で大底を確認したと言えるだろう。「利上げ停止時期」の見方は分かれているものの、過去の例では利上げ終了前に先行して「米金利は頭打ち・NY金は底打ち」となっており、金相場は「底を付けた相場は、天井を付けるまで高い」と言う流れとなっている。

ソフトランディング?ハードランディング?

米国政策金利と金価格

「相場の天井はいつ・どの程度か?」だが、利上げが終盤に接近中との思惑が高まれば、NY金はゆっくりと1900ドルを試す流れとなる。その後、金利引き下げとなる景気後退(リセッション)局面では上げ足を強め、2000ドルを試す流れとなりそうだ。このリセッションが、「ハード・ランディング」となるか「ソフト・ランディング」となるかは、足元落ち着きを見せているインフレ動向次第だ。インフレが再度高まりを見せ、景気後退とインフレが同時に進行する「ハード・ランディング(スタグフレーション)」シナリオになった場合は、金の上値余地は大きくなるだろう。円建て金も足元で抵抗と認識されている8000円水準が下値支持線に変化する。円高圧力以上に海外市場高が円建て金価格を押し上げる展開となりそうだ。


12月の習近平国家主席のサウジ訪問は、ドル基軸通貨体制を支えてきた「ペトロダラー体制」に、中国・ロシア・サウジなどが「ペトロ人民元体制」で風穴を開ける流れだ。かつて、「ペトロユーロ体制」で米国に臨んだイラクのフセイン大統領は米国により抹殺されたが、中国・ロシアが同様に抹殺されるとは限らない。2度の世界大戦を経て、基軸通貨は英ポンドから米ドルに代わった。ロシアに対する経済制裁は、ドル基軸通貨体制の「終わりの始まり」となるかもしれない。金利差からのドル買いは、最終局面に差し掛かっており、ドルの基軸通貨体制・米覇権の揺らぎが本格的に材料視されてくると、金相場の天井は想定以上に大きくなるだろう。



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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