Weekly Report 2022年10月24日(月)
2022年10月24日
週間展望(10/24~10/30)
このページで知れること(目次)
週間予定:ECB理事会、日銀金融政策決定会合、英保守党党首選
前週Review:共産党大会閉幕
ドル円:介入で付けた安値を買い拾う動きか?
金:米金利上昇を嫌気も、欧州通貨下げ止まりを好感
金ETF
週間予定:ECB理事会、日銀金融政策決定会合、英保守党党首選
米10月カンファレンスボード消費者信頼感指数や、米9月新築住宅販売件数、米第3四半期GDP速報値、米9月耐久財受注、米10月ミシガン大消費者信頼感指数、ECB理事会、日銀金融政策決定会合などに注目が集まる。
辞任を表明したトラス英首相の後任を決める与党保守党の党首選で、立候補の届け出は24日に締め切られ、同党議員の投票の後、党員がオンライン投票を行い、28日に結果が発表される予定。
クレディスイスの再建案が27日に発表予定。
前週Review:共産党大会閉幕
【習近平一強体制】
中国共産党は23日、第20期中央委員会第1回総会(1中総会)を開き、習近平総書記=国家主席=(69)の3期目続投を正式決定、新指導部が発足した。
党政治局常務委員で構成する最高指導部は7人体制を維持。
新たに最高指導部入りを果たしたのは李強・上海市党委員会書記(63)、蔡奇・北京市党委書記(66)、丁薛祥・党中央弁公庁主任(60)、李希・広東省党委書記(66)。
中国の新たな最高指導部は、留任メンバーを除く新人4人全員が習近平総書記に近い人物となった。
政治局常務委員が「7人」となるのか「5人」になるのかが注目だったが、今まで通り「7人」となった。これが「5人」になっていたら、独裁性が更に高まることとなった。ギリギリのところで踏みとどまった格好だが、新チャイナ・セブンの「顔」を見ると、王滬寧以外はみな、習近平か、習近平の父・習仲勲と何らかの関係を持った人ばかり。
後継者候補もなし
王滬寧以外はほとんど「小物」で、習氏の後継者も見当たらない。
一時は次期首相候補とも目された胡春華副首相(59)が政治局常務委員に選ばれず、序列上位24人の政治局員からも外れた。
胡氏は胡錦濤前総書記(前国家主席)や李克強首相を輩出してきた共産主義青年団(共青団)出身で、習近平主席とは距離があるとされる。今回、政治局員にも選出されなかったことで降格した形となり、2023年3月には副首相から外れる可能性が大きいとみられる。「職員に腕をつかまれそうになると振り払い、その後、脇の下に両手を入れられて立たされた」とAFPは伝えたように、胡錦濤前国家主席の途中退席も尋常ではない雰囲気だった。
今回、最も若い60歳の丁氏はこれまで党最高指導部への登竜門とされる地方トップの経験がなく、後継者がいない状況で、習氏はさらなる長期政権を視野に入れているとの見方も強い。
経済政策を担う首相に側近の李強氏が就く見通しとなったほか、金融部門の責任者も旧知の部下を登用するとみられる。改革派官僚が軒並み政策運営の第一線から去り、経済の統制色がいっそう強まるとの懸念が高まっている。
ドル円:介入で付けた安値を買い拾う動きか?
【今週見通し・戦略】
トラス首相の退任表明を受けて、政権運営を巡る混乱の長期化が回避されるとの安心感も加わり、欧州通貨買いドル売りが優勢となり、円高ドル安となる場面もあったが、ドル円は、①好調な米経済指標(米9月鉱工業生産、米9月設備稼働率、米9月建設許可件数、米新規失業保険申請件数、米9月中古住宅販売件数)、②黒田日銀総裁による衆院予算委員会での「金融緩和を継続することが適切」とのハト派発言、③キャリートレードの活発化(外国為替証拠金取引におけるドル円売買額が9月に単月ベース過去最高の1000兆円を突破)、④本邦輸入企業による実需のドル買い、⑤米当局者によるタカ派発言(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「基調インフレがピークアウトしたとの確証を得られるまで利上げを一時停止する用意はない」発言や、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「年末までに金利は4%を大きく上回る」発言、クックFRB理事による「インフレは依然として容認できないほど高い」発言などを受けて、米長期金利が急上昇し、心理的節目150円を突破した。
前週末には、151.95円(1990年7月以来、約32年ぶり高値圏)へ急伸したが、米WSJ紙が「次回11月FOMCで75bpの利上げを決定し、その次の12月FOMCで50bpに利上げペースを鈍化させるか否かの議論を行う公算が大きい」「一部のFRBメンバは過度な景気悪化を警戒し利上げペースの減速や来年早々の利上げ停止を求めている」との報道や、サンフランシスコ連銀デイリー総裁による「利上げペースを落とす時期が近づいている可能性がある」とのハト派発言を受け、米長期金利が急低下し、これに合わせるかのように、政府・日銀による覆面介入実施の思惑から146.23円まで急落。9月22日の大規模介入時と同じく、上下に長いヒゲを形成する長大陰線引けとなった。
150円を定着させない意志
150円台を定着させないとの当局の意志を感じさせる介入だったが、ファンダメンタルズに反した単独介入は時間稼ぎ以上の効果はないとの見方が強い。27-28日に日銀金融政策決定会合があるが、日本が金利を引き上げる可能性は低いが、来年にかけて、米国が金利を引き下げることで日米金利差が縮小する可能性はあり、当局の時間稼ぎ介入は継続しそうだ。27日に米国の第3四半期GDP速報値。二期連続でマイナス成長となり、テクニカルリセッション入りしている米国だが、第3四半期ではプラス圏回復が見込まれている。高値警戒しながら、介入で付けた安値を買い拾う動きも続きそうだ。
金:米金利上昇を嫌気も、欧州通貨下げ止まりを好感
【今週見通し・戦略】
NY金(12月限)は、米大幅利上げ見通しを受けて軟調となり、1番底を試す流れとなったが、トラス英首相の辞任表明による欧州通貨高・ドル安もあり、1番底割れとはならなかった。
1番底を維持
前週末には米WSJが「米連邦準備理事会(FRB)は11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、次回12月の会合で利上げ幅を縮小すべきか協議する」と報じ、米長期金利が低下。そのタイミングで日本政府・日銀が円買い介入を実施。ドル円が急反落し、金相場を押し上げた。
来月のFOMCを控えたブラックアウト期間の直前にデイリー・サンフランシスコ連銀総裁が「引き締めの程度を見極める必要があり、引き締め過ぎるのも不可」と述べたことも一因。
フェドウォッチによると、12月のFOMCにおける0.75%の利上げ確率が50%程度まで後退し、0.50%の利上げ確率とほぼ拮抗している。0.25%の利上げ観測もやや浮上(24日時点、0.75%が44%、0.5%が52%、0.25%は4%)。
米大幅利上げは、かなりの部分織り込み済み。米金利上昇・ドル高と共にNY金の上値を抑えていた欧州通貨安もトラス英首相の退任表明を受けて、ユーロも英ポンドも、2番底を形成後、三角もち合い放れ待ちに移行している。NY金は、ザラ場で一番底(9月安値)を割り込む可能性は残っているものの、ユーロドルやポンドドルが1番底を維持するなら、NY金の支持線割れはダマシとなるだろう。安値売り込みは避けたいと考える。
JPX金は、円安調整が入っても海外高が相殺して、7500円~8000円のレンジ放れ待ちの展開は継続見通し。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。