Weekly Report 2022年8月15日(月)
2022年8月15日
週間展望(8/15~8/21)
このページで知れること(目次)
週間予定:米小売売上高、米住宅着工が注目
前週Review:米国分断の流れ、強まる方向
ドル円:インフレ動向・景気後退懸念を見極める流れ
金:内外共に1番底を確認
金ETF
週間予定:米小売売上高、米住宅着工が注目
今週前半の国内は、お盆休みムード強い。
今週は米個人消費動向を示す米小売売上高(7月)と、米国の住宅市場動向を示す米住宅着工(7月)が注目される。
トランプ前大統領、強制捜査の行方にも注意。
前週Review:米国分断の流れ、強まる方向
【強制捜査】
FBIはトランプ前大統領に召喚状を発行することなく、フロリダにあるトランプ氏の別邸「マー・ア・ラーゴ」への強制捜査を実行した。
世論は二分
トラファルガー・グループによる統計70.4%のアメリカ人はFBIによるトランプ私邸への捜索によって、2022年中間選挙に投票するモチベーションが高まった」76.7%の共和党員と53.9%の無党派層は、「公平な司法がなく、トランプの政敵がこの家宅捜査の背後にいる」。
共和党のマッカーシー下院院内総務は、トランプ氏の主張と怒りに支持を表明。マッカーシー氏は中間選挙後に下院議長に就く可能性が高く、その場合は司法当局に逆調査を仕掛ける可能性がある。
一方、米国法(Title 18 USC §2071)によると、記録の保持責任者が意図的にかつ不法に隠すような行為に出た場合には処罰されることが規定され、その処罰の中には公職に就けなくなるというものもある。この規定に基づいて、2024年の大統領選挙にトランプ前大統領の出馬ができない可能性も指摘されている。
いずれにしろ、米国の分断は深刻化していく。異例中の異例の捜査の行方に注目だ。
ドル円:インフレ動向・景気後退懸念を見極める流れ
【今週見通し・戦略】
7月の米輸入物価指数が前月比1.4%低下し、市場予想(1.0%低下)以上に下がった。前週は物価指標(米CPI・PPI)が軒並みインフレ圧力の低下を示したことでインフレがピークアウトしたとの見方が広がり、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの期待が高まった。
強気の雇用統計で急伸したドル円は、戻りを売られる格好となった。ただし、物価指標を受けて、エバンス米シカゴ連銀総裁は「インフレは受け入れ難いほど高い。23年に向けて利上げを行う」、「リセッションは想定していない」と述べ、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は「きょうのCPIは自身の道を変えるものではない」との認識を示した事でドル円の下値も限定的となっている。
インフレ・景気後退を見極める流れ継続
9月FOMCでの利上げ観測は、米マクロ経済指標や米金融当局者発言を受けて、0.5%と0.75%が日代わりのように変化しており、ジャクソンホールから次回の米雇用統計まで、インフレ動向・景気後退懸念を見極める流れは継続しそうだ。
135円水準は7月にFOMCでの1%利上げを織り込んでいた際に付けた高値水準で、米金利上昇が7月高値水準まで更に上昇しなければ、上値は限定的か?
金:内外共に1番底を確認
【今週見通し・戦略】
強気の雇用統計を受けて、金利上昇・ドル高を嫌気して調整が入ったものの、下値は限定的。押し目は、すかさず買い拾われる流れとなっている。
テクニカル面は好転
NY金相場は、逆三尊型の底打ちパターンを形成しており、価格帯別出来高の厚い1710ドル~1750ドルが強い下値支持帯。また、20日間高値を更新して、トレンドフォロー型指標は、中立から陽転(買い)となり、テクニカル面からも強気感が増している。
米物価指標が軒並みインフレ圧力の低下を示したことでインフレがピークアウトしたとの見方が広がり、米利上げペース鈍化期待が高まった一方、米金当局者からは、インフレ警戒を示唆する発言が続いており、8月25-27日に対面(3年振り)で開催予定のジャクソンホール経済シンポジウムに向けて、複数のマクロ経済指標を織り込みながら、上値抵抗帯の攻防戦へ向かう流れとなりそうだ。
円建て金は前週末に急速な円高で調整が入ったが、7400円~200日移動平均線が下値支持帯として機能している。JPX円建て金も、押し目買い戦略継続。
米連邦捜査局(FBI)は8日、トランプ前米大統領がホワイトハウスから機密文書を持ち出した疑いで異例の家宅捜索に踏み切った。マッカーシー共和党院内総務はFBIのトランプ邸強襲に「司法省は許されざる政治的暴挙の限界を超えた。今秋、共和党が下院を奪還した暁に司法省の闇を全て明るみに晒すことになる。ガーランド司法省長官、首を洗って待っていろ」と述べた。米中間選挙に向けて共和党候補を選ぶ予備選ではトランプ前大統領支持候補が圧倒的な強さを見せている中、米国の分断は激しさを増し、ドルの基軸通貨体制に揺らぎが出てくるだろう。
中国は習近平国家主席が11月に東南アジアを訪問し、バイデン米大統領との直接会談を行う方向で準備している。レイムダッグ化し、選挙向けの強気姿勢を示す必要のなくなったバイデン大統領が、中国に対して妥協の姿勢を見せるのか、それとも、ウクライナのようにアジア地区の緊張を高める方向へ突き進むのか要注目。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。