金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点②|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点②|【Weekly Report】週間予定

NSインベストメント 菊川弘之
2025年11月24日

週間展望(11/24~11/30)

週間予定:9月の米小売売上高・PPI・耐久財受注

【週間スケジュール(11月24日~11月30日)】

・質問主意書回答期限

 公明党が出した質問主意書。この回答は、


・ロシア・ウクライナ和平案回答期限

 27日のサンクスギビングデーまでに。欧州・ウクライナの代替案は受け入れ拒否


・米政府再開により延期されていた9月の小売売上高やPPI、耐久財受注が発表


・英予算案が発表/p>

 財務相は所得税率引き上げを盛り込む計画を撤回


・豪統計局が新たな月次CPI公表開始

 コア伸び鈍化も中銀目標を依然上回る水準


・年末商戦幕開け/p>

 全米小売業協会は個人消費支出が過去最高1兆ドル突破と予想



前週:日中対立

【日中対立】

直近の日中関係を巡る経緯

台湾有事は「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会答弁をきっかけとして日中関係が急速に悪化している。この台湾問題を巡る国会答弁を巡り、中国の大阪総領事が「汚い首は斬ってやる」などとSNSに投稿。日本政府が強く抗議しました。一方、中国外務省はこの総領事の投稿を擁護。中国は「高市発言の撤回」を求め、日本大使の召喚、領海・領空近接活動の強化、留学・観光注意喚起など報復的措置を採り始めている。また、石破政権で交渉を積み上げ再開したばかりの日本産水産物の輸入停止も発表。日本が切れるカードは「半導体製造装置」「高精度工作機械」などがあるが、中国が持つカードの方が圧倒的に多い。


高市首相が習近平国家主席との会談直後に、台湾の代表と会談の写真をSNSに投稿したこともあり、中国政府内からは「裏切られた」・「首脳会談はやるべきではなかった」「習主席の顔に泥を塗られた」との思惑は強く、その上、高市首相が国会答弁で非核三原則の堅持を明言しなかったこともあり、「怒りの度合い」が拡大している。


一方、トランプ大統領は台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁と、それを受けた中国の外交官による発信について問われ、「多くの同盟国だって友人ではない。貿易で中国以上に我々を利用してきた」と、中国側への批判を避けた。来年の中間選挙を控え、相互訪問を計画している中、レアアースと言う切り札を持つ中国に対して無用な衝突は避けたい意向だ。

質問主意書

野党となった公明党の斉藤鉄夫代表は13日、日本が国是として堅持してきた「非核三原則」と、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃で日本の存立が脅かされ、自衛隊が自衛の措置として武力行使できる「存立危機事態」に関して政府の見解を確認するため、額賀福志郎衆院議長に質問主意書を提出。佐藤優氏曰く「11月25日に答弁が出る予定で、高市総理の名前で高市総理の発言を事実上撤回する答弁書になるか否かが注目点。」



ドル円:介入を警戒しながらドル円の戻りの限度を試す流れ

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)200日移動平均線乖離率

12月FOMCまでの利下げ確率

先週のドル円は、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官から追加利下げに対する慎重な発言が相次いだことや、FOMC議事要旨で、「年内の政策金利据え置きが適切となる可能性」と多くの参加者が年内の利下げ見送りを主張した事に加えて、高市政権の積極財政方針が政府債務残高が膨張する懸念が材料視された。


日本が利上げに動けず、米利下げが一時ストップするとの思惑から、日米金利差が縮小せず、金利の安い日本で円を調達して、米ドルなど相対的に金利の高い国の通貨を買う「キャリートレード」が活発化していると見られる。

介入は選択肢

21日に片山財務相が「過度な為替変動が生じた場合は適切な措置を講じる」「日米財務相共同声明に沿って適切に対応する、為替介入は選択肢として考えられる」などとしたが、影響は限定的となった。2022年・24年共に介入は、1度目の介入効果は限定的で、戻り局面で追撃しトレンド転換が起きた点は、憶えておきたい。日中対立が長期化の様相で、日本売りが意識されやすい。まずは、介入を警戒しながらドル円の戻りの限度を試す流れ。


NY市場で人工知能(AI)関連の過大な投資が再び警戒されて、半導体関連株などのハイテク株中心に大きく下落していることもドルの上値を抑えている。NY連銀のウィリアムズ総裁は21日、金融政策運営について「短期的に一段と調整する余地がある」と発言。12月FOMCでの利下げ期待が高まった。「フェドウオッチ」によると、FRBが12月10日に0.25%の利下げを実施する確率は7割強まで高まった。前日の約40%から大幅に上昇。



金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

NY金相場は、10月20日高値~10月28日安値までの下げ幅に対する61.8%戻しを達成、買い一巡後は戻りを売られた。


ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点となる。割り込めばダブルトップ完成からの下値試し。仮に、割り込んだ場合は、8月安値から10月高値までの上昇に対する61.8%押しの3752ドル水準が下値目標としてカウント可能。これは値幅調整で調整が行われるパターン。


一方、10月28日安値を維持した場合は、ダブルボトム形成や三角保合いに移行するなど、値幅調整ではなく、日柄調整となる可能性が想定される。8月から2ヶ月かけて上昇した流れで、日柄調整した場合も、約2ヶ月前後かかる可能性。

ヒンデンブルグオーメン

つなぎ予算は可決したものの、来年1月までの短い期間で、ベネズエラへの空母群の派遣、FRB議長の人選、トランプ関税に対する判決、米株式市場の大幅下落の前触れとされる「ヒンデンブルグ・オーメン」と呼ばれる警戒サイン点灯など波乱要因は多い。


「世紀の空売り」で知られるマイケル・バーリ氏が率いるサイオン・アセット・マネジメントが2025年7~9月期にエヌビディアとパランティアのプットオプションを新規取得していたことが米証券取引委員会(SEC)報告書で明らかになっており、英国中央銀行総裁も、米国でサブプライム自動車ローン会社2社が次々と破綻したことについて、リーマン・ショックの巨大なバブル崩壊の初期段階だった2007年の米サブプライム住宅ローン金融危機と構造が同じで、大きな金融危機が再来するかもしれないと警告している。

値幅調整・日柄調整

年末年始もマーケット全般に不安定な状況が予想され、金に値幅調整が入っても短期間に買い直されそうだ、日柄調整になった場合も、もち合いから上放れの可能性が高い。来年には改めて史上最高値更新場面が到来しそうだ。



【海外投資家動向(225)】

海外投資家動向と日経平均株価(週次)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

この記事を読んだ方にお勧めの記事

  • 日本の第4四半期GDPが市場予想を上回り、日銀の早期利上げ観測が台頭してドル安円高が進行して150円割れ。2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が98.3となり、市場予想の102.5や前回値の105.3(改定値)も大きく下回ったことで、景気の先行き不透明感…

  • トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が会談 ネタニヤフ首相は、国連総会の一般討論演説でパレスチナ国家承認は「全くの狂気だ」と訴え・日銀9月主な意見 ETF売却決定に高田委員と田村委員が据え置き反対で10月利上げ観測高まる

  • 12月の日銀金融政策決定会合では、政策金利は据え置きとなった。今回の会合で0.25%の利上げに動くとの見方も一部で出ていた中、据え置きとなったことで、円売りが加速。植田日銀総裁の記者会見では、「賃金と物価の好循環の確認、もう少し情報が必要」「追…

他ジャンルの最新はこちら

  • 金投資の基礎知識

    金1トロイオンス購入に必要な労働時間の変化と実質金利及び銀価格との関係

  • スペシャル

    NYダウ、ダブルトップ完成

    株価下落の警戒シグナルと言われる「ヒンデンブルグ・オーメン」(11/7号参照)が発生する中、NYダウはネックライン(11/7安値)を割り込み、ダブルトップ完成となった。昨晩のNYダウは一時700ドルあまり上昇したが、朝方に上昇していたエヌビディアが下げに…

  • 動画

    米株価の下落から見る今後の金市場の動向について



当サイトのコンテンツは情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に関わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。

取引にあたっては、必ず日産証券ホームページに記載の重要事項リスク説明等をよくご確認ください。
重要な注意事項についてはこちら