金:買い主体の戦略・戦術維持|金価格と米債務・NY金(日足)・金現物(変動率)|【Monthly Report】月間展望(9月)
2025年9月1日
~9月1日~9月30日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:9月米利下げを織り込む流れ CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
金:買い主体の戦略・戦術維持 金価格と米債務・NY金(日足)・金現物(変動率)
9月注目スケジュール:米雇用統計・FOMC・FRB議長人事・東方経済フォーラム
ドル円:9月米利下げを織り込む流れ
CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
注目のジャクソンホールでのパウエル議長講演で、利下げを示唆したとの受け止めが広がり、ドル円は急反落。米長期金利が低下し、日米金利差の縮小から円買い・ドル売りが入った。
「フェドウオッチ」によると、9月に利下げする確率は22日夕時点で8割強と前日の75%を上回った。
52週移動平均線や200日移動平均線に上値を抑えられ、グランビルの売り法則となっており、三尊天井の肩を形成する動きとなっている。一目均衡表の雲の水準とも重なるネックラインを割り込むと、三尊天井完成となる。一目均衡表からの下値目標値は、N=144.04円、V=143.59円、E=141.45円。
週足ベースでも、三尊天井を形成中。週足でのネックラインと重なる心理的節目140円を割り込むと、下値リスクは大きくなる。ベッセント米財務長官は13日、ブルームバーグTVで、日銀の金融政策運営について「後手に回っている」と発言した。植田日銀総裁もジャクソンホール会合で、利上げに自信を示唆しており、8月28日の日銀の中川順子審議委員の発言を受けて年内の利上げの可能性が意識された。
トランプ米大統領が25日にFRBのクック理事を解任すると表明し、クック氏は28日に解任は不当としてトランプ氏を提訴した。将来的にインフレの抑制が困難になり、米ドルや米国債の信認が低下することへの警戒感からドル売り要因となっている。
9月FOMC前に発表されるCPI・PPI・雇用統計などと合わせて、FRB人事にも注目。米利下げの有無・下げ幅拡大などを受けて変動高まる可能性も。
~CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)~
【CFTC建玉明細】
【ドル円(日足)52週移動平均線】
【ドル円(日足)200日度移動平均線】
金:買い主体の戦略・戦術維持
金価格と米債務・NY金(日足)・金現物(変動率)
【今月見通し・戦略】
8月の金相場は、関税問題で上下に振れたものの、基本的に三角保合い放れ待ちが続いた。英FTが8月8日、米国が1キログラムの金地金に関税を課したと報じた。これまで市場では金は米関税の課税対象にならないとの見方が大勢を占めており、先行きの供給懸念が意識された。主要な金精錬拠点はスイスにあり、金地金も同国に米国が課した39%の相互関税の対象となると解釈された。関税分だけ地金調達のコストが跳ね上がれば、空売りの採算が合わなくなると見られることで、売り方の急速な買い戻しが意識された。
COMEXが先物取引の現物決済で認めている1キログラムと100オンスの金地金について、米税関・国境取締局(CBP)はウェブサイトで、国別関税の対象外である「未加工の金地金」ではなく関税対象の「半製品」にあたるとの見解を示した。11日の通常取引終了直後にはトランプ米大統領は自身のSNSで「金には関税をかけない!」と投稿した。
世界的な金の供給混乱に対する懸念が後退したことから、11日午後の時間外取引では買い持ちの解消が進行したが、下値は限定的。6月安値を割り込むと、一時的に売り圧力が高まる可能性はあったものの、6月安値と重なる心理的節目3300ドルを維持した。
注目のパウエルFRB議長の「ジャクソンホール会議」での講演では、雇用の下振れリスクの高まりを示し「見通しとリスクのバランスの変化は政策の調整を正当化しうる」と語った。「金融政策は既定のコースにはない」としてデータ重視の姿勢は崩さなかったが、市場の一部でFRBが労働市場の減速よりもインフレリスクを重視し、利下げに慎重になるとの懸念があっただけに、9月の利下げ期待が強まり、金利低下・ドル安・株高・金高で反応した。今後は、FRB議長人事、米雇用統計、PCE、CPI、PPIなどを見極めようとする動きとなりそうだ。三角保合いを放れつつあり、買い主体の戦略・戦術を維持したい。
~金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細~
【金価格と米国政府債務】
【NY金(12月限)200日移動平均線】
【NY金(CFTC建玉明細)】
9月注目スケジュール:
米雇用統計・FOMC・FRB議長人事・東方経済フォーラム
・「米連邦公開市場委員会(FOMC)」
ウォラーFRB理事は8月28日の講演で、9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを主張すると明らかにした。その上で「大幅な利下げは必要ない」と話した。
ウォラー理事は7月のFOMCで利下げを求め、政策金利の据え置きに反対票を投じた。雇用情勢の悪化リスクを訴え、すぐに利下げを始めるべきだと主張していた。
・ベッセント財務長官が次期FRB議長候補と面談
次期FRB議長候補の有力な人物(11人)と面談を開始。ベッセント長官は、他のホワイトハウス高官も候補者と面接を行い、その後3-4人がトランプ大統領に推薦される。
パウエルFRB議長の議長任期は来年5月まで。
・東方経済フォーラム
プーチン大統領は、中国・天津で「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席。
9月3日には北京で抗日戦勝80年記念行事と軍事パレードに出席する。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記とプーチン大統領との首脳会談の可能性も。
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。