NISAを活用した金(ゴールド)投資について 〜金現物投資との比較とメリット・デメリット〜 | 【公式】日産証券の金投資コラム

NISAを活用した金(ゴールド)投資について 〜金現物投資との比較とメリット・デメリット〜

2025年5月12日

 

金(ゴールド)は、インフレ対策や有事の資産防衛手段として古くから親しまれてきた資産です。
金投資の手段には、金地金などの現物を直接保有する方法と、ETFや投資信託といった金融商品を通じて間接的に投資する方法があります。
2024年から刷新された新しいNISA制度を活用すれば、税制上のメリットを享受しながら金投資を行うことが可能です。
本稿では、金現物投資とNISAを使った金投資を比較し、それぞれのメリット・デメリットを考察します。
 
まず、NISAの仕組みについて簡単に触れておきます。2024年から新しいNISA制度が開始され、年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれています。
つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円で、合計で年間最大360万円まで投資が可能です。非課税保有限度額は1,800万円、そのうち成長投資枠は1,200万円まで保有可能です。
非課税保有期間も無期限となり、長期投資に非常に適した制度へと進化しました。
 
次に税制面での違いについてです。金地金の売却益は「譲渡所得」に分類されますが、生活に通常必要でない資産として扱われるため、特別控除として年間50万円が設けられ、売却益がこの50万円を超えた場合、その超過分が課税対象となります。また、所有期間による課税の違いがあります。
所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」として総合課税となり、所得水準に応じて5%〜45%の所得税が課されます。
一方、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、課税対象額が2分の1に軽減されるメリットがあります(税率そのものは変わらず、課税対象となる所得が半分になる仕組みです)。
これにより長期保有することで実質的な税負担を軽減することが可能です。住民税(通常10%)も課税対象額が半減する点も含め軽減されます。
 
これに対して、NISA口座で購入した金ETFや投資信託では、売却益や分配金がすべて非課税となります。
新NISAでは金投資に活用できるのは主に成長投資枠で、金関連ETFや投資信託が対象です。
前述の通り「成長投資枠」として年間240万円、最大1,200万円の非課税保有限度額が設定されており、この枠内での取引は全て非課税です。
さらに、売却した場合でも翌年以降は売却額に応じて投資枠が再利用できる仕組みが導入され、長期的な資産形成において非常に有利です。
金相場が上昇したタイミングで売却しても税負担がゼロで済むことは大きな魅力です。

 
現物の金は売却時に専門業者の店舗に持ち込むか、郵送査定などの手続きを要し、手数料やスプレッド(売値と買値の差)が発生します。一方で、NISAでの金ETFや投資信託はオンラインや電話での売買ができ、ETFであれば市場価格でリアルタイム取引が可能です。

 
また、NISAを通じた金投資は流動性が高いのも強みです。
現物の金は売却時に専門業者の店舗に持ち込むか、郵送査定などの手続きを要し、手数料やスプレッド(売値と買値の差)が発生します。
一方で、NISAでの金ETFや投資信託はオンラインや電話での売買ができ、ETFであれば市場価格でリアルタイム取引が可能です。
 
具体的な採用銘柄としては、「SPDRゴールド・シェア(1326)」や「純金上場信託(金の果実)(1540)」、「iシェアーズ ゴールド ETF(314A)」などがあり、これらは金価格に連動した値動きを目指す商品です。
また、投資信託の中には金のみで構成されたものから、株式や債券などと組み合わせた投資信託も採用が増えてきており、選択肢の一つで、いずれもNISAの成長投資枠で利用可能です。
 
さらに、NISAでの金投資は管理の手間が少なく、保管リスクもありません。
現物の金は盗難や災害リスクがつきまとい、専用保管庫を利用する場合には別途保管料がかかります。
一方、金融商品としての金投資は証券会社が管理するため、物理的なリスクを気にせず投資できる点が魅力です。
加えて、数千円程度の少額から投資できる柔軟性もあり、初心者でも気軽に金投資を始められます。
 
ただし、NISAにも留意すべき点があります。まず、非課税枠を超えて購入する場合は課税口座での運用となり、通常の税率が適用されます。
また、NISA口座では損失が発生しても他の課税口座との損益通算や繰越控除ができないため、相場下落局面では税務上のデメリットとなる点に注意が必要です。
また、金ETFや投資信託には運用管理費用(信託報酬)が発生し、長期保有する場合にはコストが積み重なる点に注意が必要です。
さらに、ETFや投資信託はあくまで金融商品であり、実物資産としての「現物の所有感」や有事の際の価値保存手段としては現物保有に劣る側面もあります。
 
総じて、NISAを活用した金投資は、税制優遇や取引の利便性が非常に高く、長期的な資産形成に適しています。
一方で、金現物投資は実物資産としての安心感とともに、長期保有による税制メリットを享受しつつ、有事の際の価値保存手段としての役割が期待できます。
両者の特徴と税制を正しく理解し、自身の投資目的やリスク許容度に応じた選択を行うことが重要です。

 
自身の投資目的やリスク許容度に応じた選択を行うことが重要です

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