増え続ける各国中央銀行の資産
コロナ禍により各国の中央銀行の資産が増加、2020年の日銀の資産は23%増の702兆円にもなりました。低金利政策や金融緩和により、市場にはマネーが流入し、株式市場や仮想通貨市場は不安定な取引が続いています。こうした資産バブルと先行き不安により、安定資産と言われる金への注目度が高まっています。
日銀の資産は過去最大の702兆円、欧米も増加
新型コロナウイルスによるパンデミック以降、日本をはじめとする世界各国の中央銀行の資産が増大しています。日本銀行の2020年12月末時点の総資産は702兆円となり、コロナ禍前の2019年に比べて129兆円増えました。資産の増加幅は、日銀がデータ開示をはじめた1998年以来最大の23%でした。主な資産の中で最も増えたのが、銀行等への貸付金で111兆円です。
諸外国をみると、日銀以上に資産が増加している中央銀行が目立ちます。米連邦準備理事会(FRB)の資産は7.3兆ドル(約750兆円)で、コロナ前より77%増、欧州中央銀行(ECB)は7兆ユーロ(約880兆円)で49%増となりました。これは、各国がパンデミックによる急速な経済の落ち込みに対応するため、積極的に金融緩和、ゼロ金利政策を行い、市場に大量のお金がばらまかれたためです。
日銀の資産増加幅が欧米に比べて少ないのは、日本はコロナ前から長期間にわたって金融緩和政策を実施してきたためです。日銀は、国債の購入ほか、上場投資信託(ETF)の市場でも支配的な地位を占めており、702兆円という総資産は国内総生産(GDP)の1.3倍にもなります。日銀の総資産がいかに巨額であるのかは、アメリカの経済規模は日本の4倍もあるのに、FRBの資産額は約750兆円と、日銀とそこまで差がないことからもうかがえます。
他方、中国は早期にコロナの急拡大を抑え込んだため、中国人民銀行は日米欧ほど資産を拡大させていません。
中央銀行の資産増加により何が起きている?
多くの市場関係者は、日銀の金融緩和は、企業の資金繰り支援や市場の安定に十分な効果があったと評価しています。こうした金融緩和による日銀や各国中央銀行の資産増加に伴い、市場に注目すべき変化が起きています。
第一に、各中央銀行の金融市場での影響力の増大です。日銀の場合は、国債やETFのほかにも、コマーシャルペーパー、社債などの市場においても影響力を持っています。各市場で大きなシェアを占めることで、日銀が金融商品の価格決定の鍵を握り、自由取引による市場価格の決定と言う市場原理に影響を及ぼしています。こうした金融緩和政策は長期化が見込まれ、日銀がいつ資産購入のレベルをコロナ前まで引き戻せるのか、注目が集まっています。
第二に、金融緩和による低金利や、各国政府の莫大な財政支出により、「カネ余り」状態となり、株式市場や金市場、仮装通貨市場などに大量のマネーが流入、資産バブルとなっていることです。いわゆるコロナバブルが起きているといえます。
コロナによる資産バブル
コロナショックにより、2020年は各国の実体経済が大きく後退する一方、金融緩和によりいびつな形で株価が値上がりし、市場は不安定な取引となりました。2021年に入ってからはアメリカやヨーロッパでコロナワクチンが普及し、パンデミックは鎮静化に向かうかと思われましたが、デルタ変異株により今度はアジアで感染が拡大するなど、引き続きコロナ禍の終わりが見通せていません。
2021年4月には、仮装通貨の代表格であるビットコインが一時700万円台まで急騰し、その後300万円台まで急落するなど、さながらジェットコースターのような神経質な取引が続いています。
こうした資産バブルは、乱高下する市場の見極めがつけば、投資家にとってはチャンスとなります。しかしながら、バブルはいずれ破綻するものです。また、不安定な市場に振り回されて、大きな損失を出すリスクを常にはらんでいます。
コロナ禍不安で集まる金投資への注目
社会不安と資産バブルの中で注目が集まっているのが、安全資産と言われる金です。金投資には金利が付かないというデメリットがありますが、世界各国の中央銀行の低金利政策により、金利面の不利が気にならなくなっていることも、金投資への意欲を高めています。
ロンドン地金市場協会(LBMA)のデータによれば、金地金の価格は、2020年2月から8月にかけて40%も高騰しました。2021年に入ってからは、ここまで極端な高騰はないだろうとも言われますが、インフレへの警戒感や、アジアでの新型コロナ変異株拡大への不安感から、長期的に観て、金買いの動きは今後も続くと予想されます。
先の読めない不安な世の中だからこそ、古くから価値を認められていた貴金属である金に安心感を求めるという、心理的な要素もあるのでしょう。