金:地政学リスク急浮上で安全資産への買い|【Weekly Report】週間予定
2025年6月16日
週間展望(6/16~6/22)
このページで知れること(目次)
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・G7
前週:イスラエル、イランを攻撃
ドル円:三角保合い放れ待ち
金:地政学リスク急浮上で安全資産への買い
【米国消費者物価指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・G7
・日銀金融政策決定会合
国債買い入れ方針議論
・財務省が国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー、PD)会合を開く
超長期債を中心とした需給悪化に対応するため発行の減額に動くとの思惑は根強い。
・FOMC
「フェドウオッチ」では金融政策の据え置き確率が9割を超えており、金利据え置き見通し
・中国政策金利
・中国新築住宅・小売売上高、年次金融会議
景気下支え策期待 米中緊張は緩和
・スイス中銀政策金利
2022年以降はじめてマイナス金利復活か 5月CPIが4年ぶりマイナス
・英中銀と消費者物価指数
賃金伸び鈍化に失業率上昇・雇用者数急減 月次GDPはマイナス
・FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~19日)
前週:イスラエル、イランを攻撃
【13日の金曜日】
6月13日(金)、イスラエルがイランを空爆した。原子力と軍事施設のほか、イランの軍幹部や原子力・軍事の専門家の居宅などを空爆した。
中東の勢力拡大
イスラエルは2024年、レバノンをピンポイント空爆し、イラン傘下のシーア派民兵団ヒズボラの幹部の大半を殺し、兵器庫の多くを破壊。ヒズボラは壊滅状況となった。各国からリベラル派からの非難の声は強くとも、ガザ戦争でのハマス壊滅、シリアのアサド政権転覆など、米国の諜報力を背景に中東での勢力を拡大させている。
ゼレンスキー大統領と同様、ネタニヤフ首相も戦争継続しないと、自身や家族の安全が保障されないことが共通項だ。イスタンブールでロシアとウクライナ間の停戦交渉が行われる一日前に、ウクライナによる米国への通達なしの攻撃が行われたように、今回も米国とイランの和解交渉中に攻撃が実施された。
2024年は、イランはイスラエルに攻撃されても、最低限の国家の尊厳・面子を維持するための反撃をするだけで、オマーン・トルコ・ロシアなどを通じて米国に事前告知してからの攻撃しかしていない。今回も同様な展開となるのか否かが注目。米国もイスラエル支持を表明しているものの、今回の攻撃には米国は関わっていないと表明している。
トランプ大統領は14日、プーチン大統領と電話で会談した。早期の戦闘終結が必要との認識で一致した。中国の王毅外相は14日、イランのアッバス・アラグチ外相、イスラエルのギデオン・サール外相と個別に電話会談した。王氏は仲介の意思を表明した。
ドル円:三角保合い放れ待ち
【今週見通し・戦略】
ドル円は、10日に植田日銀総裁が「基調的物価上昇率はまだ2%に少し距離がある、2%に近づく確度が高まれば引き続き利上げ」との発言を受けて、 145円台まで上昇したが、上値は重く、週末にかけて反落。
米中貿易協議
ロンドンで9日から開催された閣僚級による米中貿易協議では、貿易摩擦緩和へ向けた枠組みで合意したと報じられた。
11日発表の米5月消費者物価指数は市場予想を下回り、144円台前半まで下落した。12日はトランプ米大統領が一方的に関税率を設定して、2週間以内に各国へ書簡を送り付けるとしたことで、関税を巡る不透明感が嫌気された。米5月生産者物価指数も予想から下振れしたことも、ドル売りにつながり、ドル円は143円台まで下落した。
13日にはイスラエルがイランへの空爆を実施したことで、リスク回避の円買いとなり、ドル円は143円を割り込む動きを見せた。イスラエルとイランの軍事対立がホルムズ海峡の原油輸送に影響するとの警戒から、主要国の株式相場は大幅下落したことが嫌気された。
地政学リスク浮上
先週末は、中東情勢の緊迫化が「低リスク通貨」の円買いと、流動性の高いドル買いの重なった展開となり、引き続き、三角保合い放れ待ちの展開が続いている。中東の地政学リスクの行方次第では、変動が大きくなる。
17日に日銀金融政策決定会合、植田日銀総裁記者会見、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、パウエルFRB議長記者会見がある。なお、日銀は2026年4月から国債買い入れの減額ペースを緩める検討に入った。四半期ごとに買い入れ額を4000億円ずつ減らしてきたが、同2000億円程度と減額幅を半分に縮める案が浮上している。
金:地政学リスク急浮上で安全資産への買い
【今週見通し・戦略】・上場来高値更新
金相場は、米中通商協議を控えて手仕舞い売りが出たが、トランプ大統領の関税発言や、予想以下のCPI・PPIなどによるドル安、中東の地政学リスクの急浮上で、押し目を買われた。JPX金先限は、上場来高値を更新した
イスラエル暴走
中東情勢の緊迫化を受け、安全資産とされる金に買いが広がった。イスラエルがイランに空爆の実施を受け、地政学的リスクの高まり背景にアジア時間から値を飛ばした。米国株が大幅安となったことから安全資産としての買いが活発化し、NY金(8月限)も、前週末に価格帯別出来高の厚い3300ドルを中心とした三角保合い上放れになっている。
米中は9~10日に開いた閣僚級会合で5月の合意内容の履行で一致した。ただ、中国のレアアース(希土類)の輸出再開が6ヶ月の期限付きとなるなど、米中交渉を巡っても懸念が残っている。
欧州中央銀行(ECB)が11日に発表した報告書によると、2024年の各国中銀の外貨準備に占める金の割合は、20%だった。ユーロ(16%)を抜き、米ドルに次ぐ2位に浮上した。中銀は24年も年間1000トンを超える金を買い続け、保有量が膨らんでいる。
金価格が最高値を更新するなかで保有額も増えている。中国など主要新興国で構成するBRICSが貿易における各国の現地通貨建て決済の拡大を目指すなど、当面は公的機関の金保有が減ることは考えにくい環境となっている。
関税協議期待で調整に入っていた金だが、値幅調整にはならず、日柄調整で押し目買い基調に変化は出ていない状態。地政学リスクの行方次第では上値余地は大きくなる。
【米国消費者物価指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。