調整終了、押し目買い再開|【Weekly Report】週間予定
2024年5月13日
週間展望(5/13~5/19)
このページで知れること(目次)
週間予定:日GDP、米CPI・PPI、小売り売上高
前週:イスラエル・ハマス停戦合意に至らず
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ちの可能性
金:調整終了、押し目買い再開
【先物市場が織り込む政策変更ペース】
【米ミシガン大学消費者信頼感指数】
金ETF
週間予定:日GDP、米CPI・PPI、小売り売上高
・日本GDP 2四半期ぶりのマイナス成長へ 物価高・個人消費低迷、自動車大手の認証不正問題、能登地震が影響
・米生産者物価指数 3月は前月比+0.2%と予想以上に伸びが鈍化、前年比は伸び拡大も予想は下回った。 市場予想は前年比+3.4%、コア前年比+3.6%。3月から伸びが鈍化する見込み。
・米消費者物価指数 3月は前年比+3.5%と昨年9月以来の高水準。利下げ開始は秋以降との見方が強まった。
・米小売売上高 3月はコア+1.1%と昨年1月以来の高水準、年内利下げ見送り観測すら浮上した。
・パウエルFRB議長がイベント講演・大学卒業式で挨拶 金融政策や経済見通しについての発言の有無が注目
前週:イスラエル・ハマス停戦合意に至らず
【地政学リスク再び】
イスラエル・ハマス停戦に関する間接交渉は9日に終了。ハマスは10日、イスラエルの休戦案拒否で「協議が振り出しに戻った」と主張し、指導部が「交渉戦略の見直し」を他のパレスチナ組織と協議すると表明。
イスラエル軍は11日、パレスチナ自治区ガザ最南部ラファ東部の住民に対して退避を要求。米ニュースサイト、アクシオスによると、イスラエル戦時内閣は9日、ラファでの作戦地域拡大を承認した。軍はラファ東部で実施している限定的な地上作戦を拡大するとみられる。
米国は本格侵攻に踏み切れば武器支援を停止すると警告しているものの大統領令で一時的に支援が止まっても、法律で支援(イスラエルの軍装備の7割提供)が決まっており、イスラエルは、議会・経済界を通じて圧力をかけやすく、バイデン大統領の警告を真剣に捉えていない節が強い。
米大学での抗議運動も、ベトナム戦争時と異なり、米国人が死んでいる訳ではなく、大学が夏休みに入ると落ち着くとの見方もあり、米国の求心力の低下に変化はなく、停戦・休戦の可能性は低い。
パレスチナ自治区ガザ地区の民生防衛当局は11日、戦闘で破壊された建物のがれきの下に埋もれている住民らの遺体は推定で約1万体に達するとの見方を示した。イスラエルの破壊によりガザの民生防衛能力は70~80%奪われたと指摘。
国連人道問題調整事務所(OCHA)の職員は、国連世界食糧計画(WFP)がガザ南部で配る食料は11日までに枯渇するだろうと指摘。
ロシア・ウクライナ戦争では法の支配を前面に押し出し、強い制裁を求めたのに対して、イスラエルに対しては身内対応と言う欧米のダブルスタンダードに対するグローバルサウスの不満は強く、世界の2極化の動きはますます、強まりそうだ。
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ちの可能性
【今週見通し・戦略】
前週レポートで≪介入と思われる動きに加え、弱気の雇用統計で、4月29日の160円台が目先の天井候補。150円の攻防戦。同水準を明確に割り込むと、売り方優勢に。維持すると逆張り継続≫としたが、先週のドル円は、三角保合い上限の151円台が支持線として機能し反発。
ドル円は本邦の介入と見られる動きで付けた安値から、買い戻されて155円台を回復してきたが、米雇用統計を始め、弱気のマクロ経済指標が増えつつある中、市場コンセンサスよりも早めに、利下げに移行する可能性もありそうだ。既に、米金利は低下傾向を強めている。
依然として、ドル買いを唱える向きは多いものの、日本版HIAの話題(6月の骨太方針に入る?)も出るなど、ドル円の大きなトレンドの変化にも注意したい。まずは、4月の米消費者物価指数(CPI)や米小売売上高などに加え、イスラエル・ハマスの停戦協議の行方が注目だ。
エコノミック・サプライズ指数はドル売り示唆
シティグループが算出しているエコノミック・サプライズ指数は、各種経済指標と事前予想との乖離を指数化し、ゼロ(予想通り)を挟んで、上下(プラス・マイナス)で示した指数。同指数が市場予想と比べて強気であればドル高、弱気であればドル安の相関が観測されてきたが、足元は急速に弱気優勢(ドル売り要因)の流れとなっている。(5/8付け:市場分析レポート「米経済指標、やや弱気優勢」参照)。
150-160円のレンジ相場放れ待ちへ移行か?米CPI・PPI、小売売上高などを受けた金利動向が注目。
金:調整終了、押し目買い再開
【今週見通し・戦略】
NY金(6月限)は、地政学リスクの一服感や、米利下げ観測の後退を受けてダブルトップ形成後に調整に入ったが、下値は限定的。市場の想定以上に強い動きとなっている。2023年10月安値を起点とした上昇チャネル上限で下支えられた。同水準は、2月安値~4月高値までの上昇に対する38.2%押し(2283.6ドル)と重なる支持線だった。5月3日の下ヒゲ安値が、目先の底値候補。GW休場中には、サウジを始めとした中東各国が米国から金塊引き出しの動きとの噂が中国SNS上で飛び交った。
MACでは、5月10日に買いのセットアップ。終値ベースで、HMA(2346.25ドル)を上抜くと、買いのトリガーヒットとなる。この場合、価格帯別出来高の厚い2350ドル~2400ドル水準が下値支持帯に変化する。また、JPX金も10日に買いのセットアップとなっており、終値ベースで、HMA(11700円)を上抜いてくると、買いのトリガーヒットとなる。更に、4月30日高値と重なる心理的節目12000円を上抜くとダブルボトムからの上げ加速も意識される。5月7日の長い下ヒゲが目先の底値候補。N=11720円達成。E=12490円、V=12720円が一目均衡表の上値目標値。
スタグフレーション懸念
米新規失業保険申請件数が市場予想を上回るなど、労働市場の過熱感の和らぎを示す経済指標の発表が相次いでいる中、ミシガン大学が発表した5月の米消費者態度指数(速報値)は67.4と、昨年11月以来の低水準となった。4月(77.2)から悪化し、市場予想(76.0)も下回った。1年先の予想インフレ率は前月の3.2%から3.5%に上昇し、インフレ圧力の強さが意識され、スタグフレーション(景気停滞とインフレの併存)懸念が徐々に意識され始めている。
ロシア軍は10日、ウクライナ北東部の第2の都市ハリコフ近郊で地上攻撃を開始。ガザ休戦間接交渉は合意に至らず、地政学リスクも再浮上しそうだ。
【先物市場が織り込む政策変更ペース】
【米雇用統計&ADP】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。