Monthly Report 2023年9月
2023年9月1日
~9月1日~9月30日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:金利差VSドル離れ(BRICS) ドル円(長期)・CFTC建玉明細・ドル円(日足)
金:利食い・換金売りをこなし1万円が下値支持に変化する 各通貨建て金価格・国内小売価格・NY金・10年債
9月注目スケジュール:雇用統計・2014米大統領選挙絡みの動き
ドル円:金利差VSドル離れ(BRICS)
ドル円(長期)・CFTC建玉明細・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
8月注目の 「ジャクソンホール会議」で注目のパウエルFRB議長は、「必要ならば、追加利上げの用意がある」と講演で述べ、実際の利上げについて、「経済指標などのデータを踏まえて慎重に進む」と発言しており、重要マクロ経済指標に関心が移行する流れとなりそうだ。
日米金融政策の方向性の違いを意識した円売り・ドル買いが一時優勢となったものの、147円台で頭打ち。約30年間続いているレンジを上抜けていない。
8月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数は前月に比べ17万7000人増と、市場予想(20万人増)を下回った。労働需給の軟化を示す内容との受け止めが広がった。2023年4~6月期の国内総生産(GDP、改定値)は前期比年率2.1%増と、速報値(2.4%増)から下方修正され、追加の利上げ観測の後退につながった。7月の米雇用動態調査(JOLTS)に続き、労働需給の軟化を示す内容と受け止められたことに加え、アトランタ連銀のボスティック総裁が講演の草稿を公表し、FRBの金融政策は2%の物価目標に向かうのに「すでに十分に引き締め的だと考えている」と指摘した。長期の米金融引き締め観測が後退し、円安ドル高の調整局面となっている。
CFTC建玉明細で、大口投機玉の円売り越しが10万枚に接近したことで、過熱感が意識された。
本邦当局の介入警戒感に加え、良い金利上昇ではなく、悪い金利上昇が意識され始めてきたことや、8月のBRICS首脳会議で「貿易や経済活動における脱ドルや自国通貨利用の拡大を目指す」とされたことがドル円の上値を抑えている。145円を中心とした保合いが、団子天井となるのか、上昇過程での中段の保合いとなるのかの見極め段階。
過去の季節傾向では、9月はイーブンな時間帯(33戦16勝17敗)。
~ドル円・CFTC建玉明細~
【ドル円(長期)】
【CTFC建玉明細】
【ドル円200日移動平均線】
金:利食い・換金売りをこなし1万円が下値支持に変化する
各通貨建て金価格・国内小売価格・NY金・10年債
【今月見通し・戦略】
BRICS(中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカ)首脳会議で24日、来年1月から新加盟国としてアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6ヶ国を受け入れると発表。
新BRICSは、世界の石油輸出の39%、石油埋蔵の46%、産油量の48%を持つ格好だ。金本位制破棄後のドルの基軸通貨体制を支えてきた「ペトロ・ダラー」体制の揺らぎも意識されてくる。
今年3月10日、習近平が三期目の国家主席に当選したその日に、サウジアラビアとイランとの間の奇跡的な和解が中国の仲介で発表され、それ以降、雪崩現象のように中東諸国・アフリカ諸国が中国・ロシアと急接近している。核開発を巡り欧米と対立が続くイランの加盟も認めるなど、「グローバルサウス」が結集し、欧米主導の国際秩序に挑む流れだ。新たにBRICSに加入することが決まった米国から金融制裁を受けているイランのライシ大統領は「貿易や経済活動における脱ドルや自国通貨利用の拡大を目指すBRICSを断固支持する」と演説。
BRICSに公式、非公式に参加意欲を示している40ヶ国は、グローバルサウス主要国すべてが含まれており、これらの国が自国通貨で貿易決済すると、結果的に脱ドル化が進むことになる。これは、金にとっての長期強気材料だ。
円建て金の優位性も継続している。円建て小売り価格として、初めて1万円台に乗せた。過去の国内価格を振り返ってみると、価格の大台乗せで調整が入るものの、日柄経過と共に利食い・換金売りなどをこなしながら、これまでの抵抗線(1000円刻みの心理的節目)が下値支持線に変化して、次の心理的節目の大台を試す流れが続いている。
今回もいずれ、1万円が抵抗から支持線に変わり、上値を試す流れが継続しそうだ。
~各通貨建て金価格・国内小売価格・NY金・10年債~
【各通貨建て金価格】
【国内店頭価格】
【NY金&米10年債】
9月注目スケジュール:
雇用統計・2014米大統領選挙絡みの動き
8月の注目であった「ジャクソンホール会議」と「BRICS首脳会議」を終え、市場の関心は、マクロ経済指標を受けた金利動向と、2024年米大統領選挙へ向けた各党の動きに注目が集まりそうだ。
ニューヨーク・タイムズ紙の8月1日の世論調査では、米国が「正しい方向に向かっている」との回答は23%にとどまり、65%は「間違った方向に向かっている」と答えた。各種世論調査でバイデン大統領の支持率は約40%で、民主党支持者の半数が次期選挙への再出馬を望まないと答えている。
一方、同じ8月1日、トランプ前大統領が起訴されたが、共和党候補の中では圧倒的な優位を維持している。
すでに最高齢大統領のバイデン氏が再選されれば82~86歳で2期目を担う。共和党最有力候補のトランプ氏の場合も78~82歳。
「親より生活が良くなる」と思う米国民の割合は2001年の71%を天井に低下基調で、22年は過去最低の42%を記録した。若く強い新たな指導者が出てこないと、米国の覇権の揺らぎは止まらないだろう。
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。