Weekly Report 2023年6月19日(月)
2023年6月19日
週間展望(6/19~6/25)
このページで知れること(目次)
週間予定:各国金融会合(スイス、英国、トルコ、メキシコ、ブラジルなど)
前週Review:スーパー・エルニーニョ発生の可能性
ドル円:三角保合い上放れ
金:円建て金の優位性継続、史上最高値更新へ
【米CPI・粘着CPI】
【米FOMC見通し】
金ETF
週間予定:各国金融会合(スイス、英国、トルコ、メキシコ、ブラジルなど)
先週の米、ユーロ、日本に続いて、今週も中銀会合が目白押し。20日の中国、22日のスイス、英国、トルコ、メキシコ、ハンガリー、ブラジル、フィリピン、インドネシア、ノルウェーなどの会合が予定されている。
中国人民銀行は13日、7日物リバースレポ金利を予想外に引き下げ、従来の2.0%から1.9%とした。引き下げは2022年8月以来。15日には1年物中期貸出制度(MLF)を従来の2.75%から2.65%に引き下げた。これらを受けて主要政策金利とされる最優遇貸出金利(LPR:ローンプライムレート)についても、1年物を従来の3.65%から3.55%へ、5年物を従来の4.30%から4.20%へ、それぞれ0.1%の引き下げが見込まれている。
中国では需要鈍化や、規制などの影響を受けた不動産部門の低迷などによる、景気の不透明感などを利下げによって支援する意図。
大幅利上げが見込まれているのがトルコ中央銀行。5月の大統領選に勝利し、今後5年間の政権運営継続が決まったエルドアン大統領は、新内閣にかつて財務相や副首相を務めたシムシェキ氏を抜擢。同氏は低金利志向などに反 対し、2018年に政権を離れた人物。また、中央銀行総裁として、5月に破綻したファーストリパブリックバンクで共同CEOを務めていたエルカン氏が指名されている。新財務相・中央銀行総裁のもと、これまでの低金利路線が一気に変化するという見 方が広がっている。ゴールドマンサックスは一時的措置として40%まで引き上げるという予想を示している。
スイスは、9月、12月ともに追加利 上げが見込まれている。
前週Review:スーパー・エルニーニョ発生の可能性
【米債務上限問題】
米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送った。据え置きは2022年3月のゼロ金利解除以降で初めてで、11会合ぶり。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は5.0~5.25%。据え置きは全会一致で決定。同時に公表した経済見通しでは、23年内のあと2回分の利上げを示唆した。物価見通しで、2023年のコアPCEは+3.6%から+3.9%まで上方修正した。金融引き締めは終盤を迎えているが、利上げを終える時期の想定は後ろにずれている。
夏場にインフレ再燃
足元の米CPIは落ち着いているものの、粘着CPIは高止まりしており、原油価格が昨年6月高値をピークに7月には20ドル以上下落しているため、前年比での数字は今後、徐々に下げ難くなる。
また、今年は世界的な異常気象の原因とされる「エルニーニョ現象」が4年ぶりに発生。より強力な「スーパーエルニーニョ」に発達する可能性が指摘されている中、天候相場の天王山と言われる7月4日の独立記念日にかけて、米産地はホット&ドライとなっており、天候相場にもかかわらず大口投機玉が売り越しとなっていたが、踏み上げ相場になる可能性もある。
更に、穀物市場で天候相場の真っただ中、ロシアが7月17日に黒海経由の穀物輸出合意(黒海イニシアティブ)を破棄する可能性もあり、原油が底打ちしている中、夏場にインフレ再燃の可能性には注意が必要だ。
ドル円:三角保合い上放れ
【今週見通し・戦略】
先週はFOMC、ECB理事会、日銀金融政策会合が実施され、各中銀のスタンスの差がフォーカスされた。為替市場では、円売りドル買い、円売りユーロ買いの反応となった。
日銀の大規模緩和継続姿勢に対して、FOMCで7月以降、2回の利上げの可能性が示され、ECB理事会では、8会合連続で政策金利を0.25%ポイント引き上げた事で、対主要通貨で円売りが強まった。
米欧間では、FOMCが利上げを見送り。据え置きは2022年3月のゼロ金利解除以降で初めてで、11会合ぶり。一方、ECB理事会では、政策金利を予想通り0.25%ポイント引き上げた。利上げは8会合連続で、インフレ抑制へ一段の引き締めを示唆した。ECBのタカ派姿勢が予想よりも強かったことで、ユーロ買いドル売りの展開。ラガルドECB総裁は、7月利上げについて明言し、利上げ停止や休止について議論せずとした。
前週末は、日銀の植田和男総裁が会合後の記者会見で、年度半ばにかけてインフレ率が下がるとの認識を示しつつも、政策修正に慎重な姿勢を改めてみせた一方、米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は16日の講演で「一部の銀行の経営不振を懸念して、金融政策のスタンスを変えることを支持しない」と述べた。リッチモンド連銀のバーキン総裁も同日、インフレが物価目標の2%に戻る裏付けとなるデータがみられなければ「一段の金融引き締めに賛同する」との考えを示した。日米金融政策差が広がるとの見方が円売りドル買い要因となり、ネックラインや三角保合い上限を上抜け、パターン分析のリターンムーブからの反発パターンとなり、上げ加速となった。
対主要通貨で円安加速も
9日移動平均線(赤点線:140.0円)~21日移動平均線(青実線:139.6円)。を下値支持線として、2022年10月21日高値~2023年3月24日安値までの下げ幅に対する61.8%戻し(142.49円)~心理的節目143円が試される流れとなりそうだ。今週は、英中銀やスイス中銀での利上げ観測が高まると、対主要通貨での円安加速も要想定。FRB議長の議会証言にも注目が集まる。
米財務省は16日、半期為替報告書で、日本を「監視対象」から除外した。国・地域の指定が始まった2016年以降、初めて。
金:円建て金の優位性継続、史上最高値更新へ
【今週見通し・戦略】
NY金(8月限)は、ダブルトップ完成。ネックラインが上値抵抗となっており、チャート形状は悪化しているものの、下値は限定的となっている。トレンドフォロー型指標は陰転だが、10日間高値も切り下がっており、2000ドル水準を回復すると、トレンドフォロー型指標も売りから中立へと転じる。ボリンジャーバンドは、収れん中で%Bのクロスと共に放れると、順張り型のトレンド形成となる。大きなテーマ(米覇権・基軸通貨の揺らぎ)での金買いシナリオに変化はなく、テクニカル的に売られたNY金の安値は、中長期的な買い場となるだろう。
史上最高値更新の流れ
一方、円建て金は、ドル安になればNY高が、ドル高になれば円安が下値を支える構図で、史上最高値更新の流れが継続している。
米国がアフガン撤退で失態を見せた中東では、新たな国際秩序の構築が急速に始まっている。中国がサウジとイランの和解を仲裁し、ペルシャ湾岸地域を安定させ、米国が誘発したイエメン戦争も終わらせた。習近平国家主席は14日、北京を訪問中のパレスチナ自治政府のアッバス議長らに対し、イスラエルとの和平交渉促進に向け中国が積極的な役割を果たすことを望んでいると伝えている。中国がこれまで米国覇権の下で、紛争が続いていた国や地域に対して仲介で和平に動いているのに対して、遅ればせながらの米国務長官がサウジや中国を訪問も空回りとなっている。
NY金と相関の高いユーロドルが底打ち反転している。当面、ユーロドルが3月安値を割り込むような底割れするリスクは低く、NY金も価格帯別出来高の厚い1950ドル水準で底打ち反転となる可能性。
【米CPI・粘着CPI】
【米FOMC見通し】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。