Weekly Report 2022年10月3日(月)
2022年10月3日
週間展望(10/3~10/9)
このページで知れること(目次)
週間予定:中国が国慶節で休場。雇用統計が注目
前週Review:戦争のステージは新たな段階に
ドル円:再度、145円の攻防戦へ
金:「安全資産」としての押し目買い意欲は強そう
金ETF
週間予定:中国が国慶節で休場。雇用統計が注目
10月初旬は中国が国慶節で長期休場入りとなる。
ウクライナ4州の併合を宣言後の、戦争のステージの変化には注意。
金融市場では、雇用統計を受けた米金利・株価動向に関心が集まる。
ブラジル大統領選挙は日本時間の3日午前5時に締め切られて即日開票され、有効投票の過半数を得票する候補者が出なかった場合は今月30日に上位2人による決選投票が行われる。
前週Review:戦争のステージは新たな段階に
ウクライナ4州の併合を宣言したプーチン大統領は9月30日、モスクワの赤の広場で開かれた集会で、「勝利はわれわれのものになる!」と宣言した。
【ウクライナ4州併合】
欧米とウクライナは、この正統性を認めておらず、日本のメディアでも相変わらず「一方的に云々との枕詞を付けての論調」を繰り返すだけだが、西側報道だけを見ているだけでは、プーチン大統領並びにロシア国民の真意は読み難い。双方のプロパガンダ合戦が激しさを増す中、何が真実か?どちらが正しいかを判別することは不可能だが、客観的な分析が、マーケットのシナリオを作成するためには重要だ。
独自の立場を採っているインドメディアのファーストポイント(10/1付)は、併合セレモニーの様子とプーチンのスピーチを以下のように紹介している(一部抜粋)。
停戦協議に応じる用意も領土は死守
ロシアはウクライナとの停戦協定に応ずる用意がある。しかし、我々は我々の領土を守るためにはあらゆる手段を使って戦う準備がある。
世界で過去2回にわたり核爆弾を行使した唯一の国がある。それはアメリカ合衆国であり広島と長崎に原爆投下し二つの市を破壊した。
いまだにアメリカは、ドイツ、日本、韓国や他の国々を占領している。そしてそれらの国々を皮肉にも”同盟国”と呼んでいる。
西欧は中世から、アメリカのインディアンを、英国とフランスはアフリカとアジアの住民をドラッグを使い、大量虐殺してきた歴史がある。国土を得るためにそこに住む住民を動物のように扱った。生物兵器の実験も行ってきた。
ノルドストリームへの攻撃は、誰が得をするのか?
西欧は、子供達に偏った性教育で、男女は自分のチョイスで変えることができる(性転換)と教えている。西洋はすでに悪魔教のような教義を進めている。ロシアは、子供達や孫の世代に、これら倒錯的価値を伝えることはない。
これとは違った未来が我々にはある。植民地主義に反対する国々が増えている。
ちなみにTBS NEWS DIGでは、プーチン大統領演説を同時通訳で全編Youtubeで、放映した。
プーチン大統領は、この戦争を”聖なる戦争”と呼んでいる。非常に強い決意が表れており、戦争のステージが、これまでの「特別軍事攻撃」から「ロシアVS欧米」戦争へ変わる可能性は大きい。
ドル円:再度、145円の攻防戦へ
【今週見通し・戦略】
財務省が9月30日に発表した8月30~9月28日の為替介入実績は2兆8382億円だった。9月22日に24年ぶりに実施した円買い・ドル売り介入を反映。円買い・ドル売りの1日の介入額としては過去最大規模となったが、ファンダメンタルズに反した単独介入効果は乏しく、時間稼ぎも、それほどできずに再び本邦の防衛線と意識されている145円水準の攻防に差し掛かっている。ここを上抜けてくると、98年高値の147円台~心理的節目150円が試される見通し。145円を特定の攻防戦と見られるのを避けるため、147円台まで単独介入は見送られる可能性もあり、上抜けは短期的には買い方優勢で進みそう。
介入余力は限定的
原資となる外貨準備は8月末に1.29兆ドル(185兆円程度)だが、米国が他国を為替操作国と認定する際の基準の1つが「一定期間に国内総生産(GDP)比2%以上」となっており、日本の場合11兆円程度が介入額の上限として意識される。既に手掛けた円買い額を引くと、約8兆円で、投機筋の立場からはターゲットにしやすい地合いだ。
9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利発表では、米連邦準備制 度理事会(FRB)が3会合連続での0.75%の利上げを決定。年内は、あと1.25%の利上げが見込まれており、11月の会合で0.75%、12月の会合で0.5%の利上げとの見方が強まっている。一方、黒田日銀総裁は9月22日の金融政策決定会合後の記者会見で、利上げの実施や、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の修正が「2、3年ない」と受け止められる発言を行っている。
今週は7日に9月の米雇用統計が発表される。非農業部門の雇用者数は、前回8月時点で1億5274万人と、パンデミック前の1億5250万人を超えている。賃金上昇と合わせ、物価高の中でも個人消費が底堅い理由となっており、欧州などと比べて、相対的に強いという状況も、ドル買いにつながっている。雇用統計の市場予想は非農業部門雇用者数が+25.0万人。失業率は前回と同じ3.7%。平均時給は前月比が前回と同じ+0.3%、前年比が前回から小幅鈍化の+5.1%。
事前想の範囲内であれば、米国の大幅利上げ期待を大きく変化させるものにはなりにくい。
金:「安全資産」としての押し目買い意欲は強そう
【今週見通し・戦略】
先週末からの金の下落は、米長期金利上昇以上に、英長期金利上昇の影響を受けたリスク回避の高まりが背景だったが、イングランド銀行の決定で、とりあえず下げ一服となった格好だが、米長期金利が6月高値を割り込み、ユーロドルがパリティを回復してこないと、NY金も戻りは売られやすいだろう。
NY金(12月限)は、これまでの支持線であった1700ドルを回復してこないと、底打ち感は出てこない。戻りを試しても、同水準で一旦は抑えられやすいだろう。
その後のシナリオは、
①ダブルボトムを形成。
②三角保合い形成。
③改めて一番底探り。などが想定されるが、地政学リスク・金融市場の不安定さを考慮すると、①②のシナリオの可能性が高いか?①②シナリオの場合は、1690~1700ドル水準がネックラインとなりそうだ。
NYは1700ドル東京は7400円の攻防が焦点
一方、JPX金は、200日移動平均線と重なる7400円水準の攻防が焦点。明確に割り込むと、テクニカル的な売り圧力が高まりやすい。反対に支持されると、今年に入り、3回支持された格好となり、7400円~8000円の逆張りが意識されるだろう。
金が「安全資産」として本格的に上昇するのは、株価大暴落や恐慌、戦争となるような最悪のケースだ。そこまでに至らない間は、他のリスク商品とある程度、相関の高い場面が続きそうだ。ただ、最悪に近いケースを予想する向きも徐々に増えており、「安全資産」としての押し目買い意欲は強そうだ。「ロシア・中国」VS「欧米」の地政学リスク・世界的な景気後退リスクの高まりの中、中国共産党大会、米中間選挙などを控え、ここからの下値リスクと上値リスクを天秤にはかれば、買い場探しに分があると考える。
ラスムッセン・レポート(9/23-25)によると、米国人の57%は、5年以内に1929年のような大恐慌が来ると予想している。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。