【金価格】値段はどうやって決まっている？
金価格は日々変動し、多くの人が買いたいと思えば価格は上がり、逆に売りたい人が増えれば価格は下がります。これは株価や為替レートと同じです。
金は個別の企業や国などの発行体を持つ株式や債券と違い、金そのものに価値があるため比較的安全な投資先として考えられています。景気が不透明な状況に陥ると、株価の動きは不安定になりやすいですが、そうした時ほど金は買われやすく価格が上がる傾向にあります。また、金は代替通貨という性質を持ち、世界各国の中央銀行が金を重要な準備通貨と位置づけ、外貨準備の一部として保有しています。昨今、度重なる金融危機や大規模金融緩和の結果、基軸通貨のドルの信頼が揺らぐ一方で、その（容易に増産できない）希少性の高さと信用リスクや取引相手の破綻リスクが無いことを理由に、自国通貨安に見舞われやすい新興国や東欧諸国などを中心に中央銀行の購入も目立っています。
金価格の動きに大きな影響を与えるのは現物市場のロンドン市場と先物市場のニューヨーク市場の二大市場の動向です。日本を含め世界各国にあるその他の市場では、ロンドンとニューヨークの相場を参考にした金価格での取引が行われます。
現物取引のロンドン市場
ロンドンの現物市場ではLBMA（ロンドン貴金属市場協会）のLBMA Gold Priceで金価格の相場が決まります。LBMA Gold Priceは、100年の歴史があったロンドン金値決め価格（Fixing）に代わり、2015年3月20日より開始された新たな値決め価格です。以前は電話でのオークションをもとに価格を決めていましたが、LBMA Gold Priceでは電子システム上のオークション方式が用いられるようになりました。LBMA Gold Priceで価格が決まる時間は以前と同様、ロンドン時間の午前10時30分と午後3時の2回です。
このロンドン市場が現物価格の指標となります。歴史的にイギリスは金本位制をはじめて導入した国であることや、南アフリカの金の販売権を持つディーラーや金の精錬をする精錬所が多数あることからも、金取引に大きな影響力を持っています。
先物取引のニューヨーク市場
もう一方のニューヨーク市場は先物取引の市場です。将来的に取引（受渡し）する予定の証券や商品などを現時点での価格・数量で取引する手法を先物取引といいます。
ニューヨーク市場は金融取引の中心地であり、金取引についても世界最大規模の参加者が活発な取引をする、世界の中心的な存在です。現在はCMEグループのCOMEX（コメックス）取引所を中心に金の売買が行われています。
金市場はほぼ24時間動き現物と先物が連動する
前述の通り、LBMA Gold Priceはロンドン時間の午前と午後の2回の値決めが行われますが、それ以外の時間も相対の取引でLBMAの条件、またはLBMA価格を指標にした現物取引がほぼ24時間、活発に取引が行われます。これは銀行間で行われる外為取引の金（Gold）版と思えばイメージしやすいでしょうか。
一方、先物市場も、以前はそれぞれの国の日中時間だけ取引されていましたが、近年では取引時間を延長する傾向にあり、COMEXでは（米国東部時間）日曜日の夕方6時～金曜日の夕方5時まで、各日、夕方5時からの1時間の休憩を挟むのみで、取引が行われています。日本でも取引時間を延長する、夜間取引を可能にするといった変化も見られています。
また、ロンドン現物市場を取引する参加者（ブリオンバンクや金精錬会社、商社等）の多くはニューヨーク先物市場でも取引を行っており、現物市場と先物市場の価格に乖離が生じると、安い市場を買い高い市場を売るという「裁定取引」が行われます。ニューヨーク先物市場の取引時間延長により、この裁定取引がより取引されやすくなりました。これは言い換えれば両市場の値動きがより連動しやすくなったと言えます。
2020年2月～3月にかけての金融市場全般の急落（コロナショック）後、コロナ禍においてロックダウン（都市封鎖）や航空便の欠航により人や物の移動が一時的な停止状態に陥った中、先物市場であるCOMEX市場に買いが殺到し、通常、1ドル程度の両市場の価格差は、20年4月限は納会前の4月上旬に一時約70ドル（終値ベース）もロンドン現物価格を上回るということがありました。しかし、現在ではコロナショック前の元の状態に戻っています。
国内金市場は円相場の動きも重要
世界の金価格の表示は1グラムあたりではなく、1トロイオンスあたりの米ドル建てです。1トロイオンスは約31.1035グラムなので、まずは重さをトロイオンスからグラムに変換し、当日の為替レートに基づいて円建てに換算することで、日本円の価格が決まります。金価格の変動のみならず、ドルから円への換算の際は為替の影響を受けることになるため、金価格と為替レート両方の確認が必要です。また、円建ての金価格は円高で安く円安で高くなるため、その点にも注意しておくとよいでしょう。
