金:調整が値幅で行われるのか、日柄で行われるかが注目|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:調整が値幅で行われるのか、日柄で行われるかが注目|【Weekly Report】週間予定

NSインベストメント 菊川弘之
2025年11月3日

週間展望(11/3~11/9)

週間予定:日米首脳会談、米中首脳会談

【週間スケジュール(11月1日~11月30日)】

・米政府機関閉鎖

 11月5日まで継続なら史上最長に、与野党の膠着状態に出口見えず


・日本実質賃金

 9ヶ月連続減少の見込み、賃金の伸びが物価高に追いつかない状況続く


・米ADP雇用統計

 政府閉鎖で民間企業による調査が注目集める、週次速報公表も開始へ


・豪中銀政策金利

 第3四半期CPI予想以上の伸び、目標範囲上限到達で利下げ期待ほぼ消滅


・英中銀政策金利

 予算案めぐる不透明感や高インフレで据え置きか、一部利下げ予想も


※米国市場は冬時間へ移行(※経済統計発表が1時間遅くなる)

※米政府機関閉鎖の影響で米経済統計の発表は延期になる可能性



前週:米中首脳会談

【米中首脳会談】

米中 関税率の変化

レアアース生産量で中国は圧倒的首位

世界が注目したトランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談は、中国の大豆購入とレアアース供給の再開にとどまり、国際貿易の不均衡是正は全く進展せず。 

中国が強い立場

首脳会談後、トランプ大統領は「0点から10点で評価するなら、10点が最高として、今回の会談は12点をつけるね」と述べたものの、中国が交渉上、レアアースを背景に、より強い立場にあることが浮き彫りになった。


NVIDIAの半導体問題については議論されたが、Blackwellシリーズには触れなかった。台湾問題もまったく取り上げられなかった。


来年に中間選挙を控え、時間が限られているトランプ大統領がどのような負け惜しみを言おうが、米国は人工知能(AI)向け半導体などの先端技術輸出規制などは取れず、中国のレアアース規制に屈した。国際分業体制下の世界経済は、希少物資の供給断絶こそ経済戦争の武器になる。市場を閉ざす関税戦争を仕掛けた米国は、時間的余裕もある中国の供給を断つサプライチェーン戦争・脅しに押し負けた格好だ。


結局、アメリカは半導体輸出を再開し、関税を引き下げた。1年間お互いに関税を上げたり下げたり、レアアースを止めたり再開したりしながら、中国は、不利益な実損を被っていない。日本が5500億ドル、韓国が3500億ドルを支払ざるを得なかったのと対照的だ。



ドル円:日銀の利上げ観測と米利下げ予想が共に後退

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)200日移動平均線

ドル円(日足)52週移動平均線

先週のドル円は、日銀の利上げ観測と米利下げ予想が共に後退し、円売り・ドル買いが加速。ベッセント米財務長官氏は、27日に片山さつき財務相と会談して金融政策について議論した後、29日にはベッセント財務長官自身のSNSで「日本政府が日銀に政策余地を与える姿勢は、インフレ期待を安定させ、過度な為替レートの変動を回避する鍵となるだろう」と発信。ドル円は、この発言に反応、「12月利上げ」の見方もあった中、植田日銀総裁が会見で「ハト派」的な姿勢をとったため、円安が加速した格好だ。植田和夫総裁は日銀金融政策決定会合後の記者会見で追加利上げについて「現時点で予断を持っていない」と話した。日銀が利上げを急がない姿勢を示したと受け止められた。


一方、パウエルFRB議長はFOMC後の会見で12月会合での利下げは「定まった結論からはほど遠い」と、追加利下げに慎重と取れる見解を示した。

155円を試す流れ

一番天井候補だった10月10日高値を上抜き、ダブルトップシナリオは消滅。これまでの抵抗だった10月10日高値~10月27日高値を下値支持帯として、心理的節目155円を試す流れとなっている。一目均衡表からは、N=156.05円、V=157.2円、E=159.9円などが上値目標としてカウント可能だ。一方、週足ベースでは、2024年7月高値を起点とした下降トレンドに上値が抑えられ、52週移動平均線を中心とした三角保合い放れ待ちの状態だ。


高市トレードで「円安・株高」の流れが強まっているが、155円水準を超えて、短期的な過熱感が高まってくると、本邦当局の口先介入などの警戒シグナルが出てくる可能性。片山さつき財務相は31日、一時1ドル=154円台をつけたことについて「投機的な動向を含め、為替市場の過度な変動や無秩序な動きについて高い緊張感を持って見極めている」と述べている。



金:調整が値幅で行われるのか、日柄で行われるかが注目

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)MAC(Moving Average Channel)

季節的な下げ圧力が強い10月に、テクニカル的な過熱感を伴って急騰したNY金相場は、10月20日に史上最高値を更新後、長大陰線を付け、調整入りとなった。パターン分析では、三角保合い上放れでの上げ加速後の天井は、三角の頂点の手前で頭打ちとなると言われるが、今回も同ルールに則った値動きとなった。

調整局面

金ETFも金価格との乖離が大きくなったおり、本来、小さな現物市場をベースに成り立っていた貴金属マーケットに証券・金融系の大きな資金が一気に流入した事で、ボラティリティの高まりと共に急伸したが、異常値が平準化される過程の中での調整局面だ。


8月20日安値~10月17日高値までの上昇に対する38.2%押し(3995.3ドル)~心理的節目4000ドルが下値支持として意識され、10月22日には、下ヒゲを形成して自律反発したが、戻りは鈍く、同下ヒゲ安値を割り込み、改めて一番底を探ぐる展開だ。半値押し(3875.7ドル)で下げ止まらなければ、61.8%押し(3752.4ドル)が意識される。


8月安値から今回の急角度の上昇が始まったことを考慮すると、8月安値~10月高値までの日柄が、調整でも必要と言える。


この調整が値幅で行われるのか、日柄で行われるかが注目ポイントだ。


下値目標値は、V=3870ドル、N=3794ドルなどがカウント可能だ。これらの水準は、8月安値~10月高値までの上昇に対する半値押し(3875.7ドル)や、61.8%押し(3752.4ドル)とも重なる。

米政府機関一部閉鎖の行方

年末にかけての調整は、NY金相場の季節的なアノマリーを考慮すると、1月高に向けての買い場を提供すると考える。


パターン分析では、戻りが鈍いなら、三尊天井の肩を形成との見方もでき、ネックライン割れからの下げ加速のような値幅調整であれば長大陽線や長い下ヒゲなどのチャートパターンで1番底を確認後、買いの準備を整え、2番底形成からネックライン超えで追撃買いを考えたい。一方、日柄調整となった場合は、保合いからの上放れを確認後、追随する戦略を考えたい。



【価格帯別売買代金】

海外投資家動向と日経平均株価(週次)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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