金:3分の1押しで下げ止まるか否かが焦点|【Weekly Report】週間予定
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2025年10月27日
週間展望(10/27~11/2)
このページで知れること(目次)
週間予定:日米首脳会談、米中首脳会談
前週:高市首相・所信表明演説
ドル円:日米・米中首脳会談に注目
金:3分の1押しで下げ止まるか否かが焦点
【海外投資家動向(225)】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:日米首脳会談、米中首脳会談

・日米首脳会談
顔見せ程度で終わる見通しだが、防衛費増額や対米投資でトランプ米大統領から強い要求があるとネガティブサプライズに。
・米中首脳会談
トランプ氏はあらゆる分野で合意できると前向き。レアアース問題が焦点。
・日銀金融政策決定会合
10月は金利据え置き濃厚、12月利上げに前向きな姿勢示すか
・米FOMC
25bp利下げほぼ織り込み済み、米政府閉鎖で積極利下げ観測浮上
・豪州消費者物価指数
中銀目標範囲上限に迫る可能性、コアはほぼ横ばいか
英国市場と欧州市場は冬時間に移行(※経済統計発表が1時間遅くなる)
ECBブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)(30日まで)
FRBブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)(31日まで)
※米政府機関閉鎖の影響で米経済統計の発表は延期になる可能性
前週:高市首相・所信表明演説
【高市内閣スタート】


高市早苗首相は24日、衆参両院の本会議で就任後初の所信表明演説で、「日本列島を強く豊かにする」と、経済の再興と安全保障の強化に取り組むと表明した。
強い経済
「強い経済」という言葉を6回使い、戦略的に財政出動すると強調した。所得増と消費マインドの改善により、税率を上げずに税収増をめざすと訴えた。債務残高の伸び率を成長率の範囲内に抑えて財政規律にも配慮する姿勢をみせた。
成長戦略の具体策を議論する「日本成長戦略会議」を新設すると打ち出した。経済安保や食料安保、エネルギー安保などのリスク対応へ官民で投資する「危機管理投資」を要に位置づけた。
「未来への不安を希望に変え、成長を切り開く」と語った。人工知能(AI)、半導体、造船、量子などの戦略分野にも重点を置いた。
物価高対応
足元の最優先課題として「物価高への対応」を挙げた。ガソリンの旧暫定税率の廃止や所得税の非課税枠「年収の壁」の引き上げ、厳冬期の電気・ガス料金への支援などに言及した。
税と社会保障の一体改革に向けては超党派と有識者を交えた「国民会議」を設けると表明した。中・低所得層の負担軽減と効率的な支出につながる給付付き税額控除の制度設計に着手すると説明した。
ドル円:日米・米中首脳会談に注目
【今週見通し・戦略】


先週のドル円は、21日の首相指名選挙で自民党の高市早苗総裁が選出され、女性初の首相に就任した。戦略的に財政出動を行う方針を示した。
財政拡張・金融緩和
新政権が財政拡張や金融緩和を志向するとの観測が円売り・ドル買いを誘った。
米政府機関の一部閉鎖が近く終わるとの楽観や米地銀を巡る信用不安がいったん後退したことも円売り・ドル買いにつながった。米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は20日の米CNBCの番組で、米政府機関の一部閉鎖は「今週中に終わる可能性がある」と語った。
米中首脳会談
トランプ大統領は20日、中国の習近平国家主席との会談を巡り、「中国と私は非常に公正で素晴らしい貿易を巡るディールを共に結ぶことができると思う」と記者団に対して語った。トランプ氏は10月末に韓国で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議とあわせて習氏と会談し、来年にも訪中する可能性を示唆した。米中貿易摩擦への過度の警戒は後退している。
24日発表の9月の米消費者物価指数(CPI)はエネルギー・食品を除くコア指数の前月比や前年同月比の伸びが鈍化し、市場予想を下回った。インフレ懸念が後退し、米利下げ継続との見方が広がった。また、S&Pグローバルが同日発表した10月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値は製造業とサービス業がともに前月から上昇し、米景気の底堅さが意識された。
三角保合い放れ待ち。FOMCは0.25%の利下げ、日銀金融政策決定会合で、政策金利は据え置きがコンセンサス。日銀の利上げ指向(年末~年初)に変化はないが、市場の織り込みは低い。日米首脳会談・財務相会談などでの米側の意向にも注目。米政権側からは円安牽制とみなされる発言も出ており、高市トレードが加速した場合は要注意。
金:3分の1押しで下げ止まるか否かが焦点
【今週見通し・戦略】

地政学的リスクや中央銀行による買い入れ、脱ドル化の動き、上場投資信託(ETF)への堅調な資金流入により、内外共に強い上昇を見せてきた金相場だが、NY金(12月限)は、長大陰線での包み足で、目先の天井を付けた可能性も。長期上昇トレンドは継続・変化なしだとしても、事象的な調整シグナルは、あちらこちらで点灯し始めていた
調整局面
OSEのプレミアムが先限でLoco London Forwardの理論値から一時、1000円近く割高になった異常事態は、一般投資家の買いが、裁定取引をやっている商社売りを、大幅に超えた為だ。
金ETFも金価格との乖離が大きくなっており、本来、小さな現物市場をベースに成り立っていた貴金属マーケットに証券・金融系の大きな資金が一気に流入している事で、ボラティリティが高まっている。異常値は時間を経て平準化されるが、その過程の中での調整局面だ。
8月20日安値~10月17日高値までの上昇に対する38.2%押しは3995.3ドル。心理的節目4000ドル~基準線と重なる支持線。先週は同水準が下値支持として意識され、下ヒゲを形成したが、同水準で下げ止まるか否かが焦点。戻りが鈍いようなら、再度の下値試しも想定される。心理的節目4000ドルを維持出来ないようだと、半値押し(3875.7ドル)~61.8%押し(3752.4ドル)が意識される。例年通り、10月の月間騰落の弱さが表れている状況。
米政府機関一部閉鎖の行方
過去の政府機関一時閉鎖の際の金の値動きを見ると、「つなぎ予算」が可決した段階で、利食いによる調整を見せている。また、米中首脳会談で、問題解決に前向きなヘッドラインが出るようなら、金価格水準が高いが故に、調整安の材料にもなり易い。来日が予定されているトランプ大統領のドル円相場に関する不規則発言にも注意が必要だ。
金を取り巻く環境は長期強気で、10月~11月にかけての調整安は、アノマリー的な年末年始高の買い場を提供することになるだろう。
【海外投資家動向(225)】

【CME FED WATCH】

金ETF

この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

