金:テクニカル的に売られた安値は、中長期的な買い場|【Weekly Report】週間予定
2025年8月18日
週間展望(8/18~8/24)
このページで知れること(目次)
週間予定:ジャクソンホール会議、FOMC議事録、日本消費者物価指数
前週:米ロ首脳会談
ドル円:三尊天井形成中・ジャクソンホール待ち
金:テクニカル的に売られた安値は、中長期的な買い場
【海外投資家動向(225)】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:ジャクソンホール会議、FOMC議事録、日本消費者物価指数
・ジャクソンホール会議
トランプとベッセントが利下げ要求する中、パウエルFRB議長の発言が注目
・FOMC議事録
1993年以来はじめて2人(ウォラーとボウマン)が据え置き決定に反対
・英消費者物価指数
インフレ上振れリスク 英中銀8月利下げ決定も予想以上の接戦だった
・日本消費者物価指数
ベッセント発言で利上げ前倒し観測 備蓄米放出でコメ価格下落傾向
前週:米ロ首脳会談
【米ロ首脳会談】
トランプ米大統領とプーチン露大統領は、現地時間15日昼(日本時間16日早朝)、米アラスカ州アンカレジで会談した。2022年2月にロシア・ウクライナ戦争が開始以来、米ロ首脳が対面で会うのは初めて。
停戦合意には至らず
トランプ氏は会談後の共同記者発表で「生産的だった」と話しつつ、ロシアが侵略するウクライナの停戦で合意できなかったと明かした。トランプ氏は「多くの点で合意した。残っているのはごくわずかだ。いくつかはそれほど重要ではない。ひとつはおそらく最も重要なものだろう」と話した。会談内容をゼレンスキー大統領や欧州の首脳に報告をすると明かした。
一方、プーチン氏は「会談は建設的で非常に有益だった」と述べた。米国がウクライナ和平に向けて取り組む姿勢を評価しつつ、「危機の根本的な原因が取り除かれなければならない」と改めて主張した。米国との経済協力の進展にも期待を示した。
会談後、トランプ大統領は、停戦に関する姿勢を転換し始めた。即時の停戦ではなく、包括的な和平合意を目指す意向を表明したほか、東部ドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)からウクライナ軍を撤退させる案を支持している模様だ。
ゼレンスキーと会談
一方で、トランプ氏は以前は消極的だった、ウクライナの「安全の保証」に米国が関与する意向も示唆し出した。ロシアが要求する「ドンバス地方のロシアへの割譲承認」と、ウクライナが求める「安全保障面での米国の関与」をセットにすることで、和平合意を目指すとの見方がある。トランプ氏は、18日にワシントンで予定されるゼレンスキー大統領との首脳会談で、これらの受諾を迫る可能性も。
ドル円:三尊天井形成中・ジャクソンホール待ち
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、上値の重い展開が継続した。7月の米消費者物価指数(CPI)は、ほぼ市場の予想通りと受け止められた。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げするとの観測が広がり、円買い・ドル売りが優勢になった。
追加利下げ観測
FRBの独立性を巡る不透明感もドルの重荷になった。トランプ米大統領は、12日、改めて利下げを要求したほか、パウエル議長に対し「大規模な訴訟の容認を検討している」と自身のSNSに投稿した。ベッセント米財務長官が13日のブルームバーグテレビのインタビューで政策金利は「1.5~1.75%低い水準にあるべきだ」との考えを示した。「9月の0.5%の利下げから始まって、一連の利下げ局面に入る可能性がある」とも述べた。日銀の金融政策にも言及し「インフレを制御する必要がある」と利上げを奨励したことも円買いの一因。
その後、7月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回る伸びだったことや、週間の新規失業保険申請件数は22万4000件と市場予想(22万9000件)を下回ったことで、米国の大幅な利下げをするとの一部観測が後退する場面もあったが、9月利下げを否定するものでなく、ドル円の戻りは限定的だった。
グランビルの売り法則
52週移動平均線や200日移動平均線に上値を抑えられ、グランビルの売り法則となっており、4月安値を起点とした上昇トレンドを試す流れ。日足でも三尊天井を形成しており、売り方有利の流れ。
今週は、21~23日にジャクソンホール会議が開催される。パウエルFRB議長講演などが注目されるものの、利下げに慎重な姿勢を見せたとしても、既にレイムダッグ化している中、大きな変動を与える可能性は低い。トランプ米大統領は、次期FRB議長候補を3~4人に絞り込み、早めに指名する考えを示している。ベッセント財務官も利下げ要求を暗示している。
金:テクニカル的に売られた安値は、中長期的な買い場
【今週見通し・戦略】
NY金(12月限)は、米税関が金地金などを関税の対象にしたとの報道をきっかけに、中心限月として過去最高値を付けた後、ホワイトハウスが金地金への関税を免除する方針を明確にすると伝わり、利益確定売りが広がった。
関税問題で混乱
11日の通常取引終了直後にはトランプ米大統領は自身のSNSで「金には関税をかけない!」と投稿した。
世界的な金の供給混乱に対する懸念が後退したことから、11日午後の時間外取引では買い持ちの解消が進行。12日朝に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は、7月の米消費者物価指数(CPI)がおおむね市場予想通りの内容だった。インフレへの過度な懸念が薄れたことや、米中両国は12日に期限を迎えた24%の関税適用の停止期間をさらに90日間延長したことから株式相場が大きく上昇し、相対的に安全な資産とされる金に売りが出た。
米マクロ経済指標は強弱まちまちで、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを決めるとの市場の見方に大きな変化はなく、トランプ米大統領とプーチン大統領の、米アラスカ州アンカレジでウクライナ和平実現に向けての協議を前に、様子見ムードも強かった。
引き続き、価格帯別出来高の厚い3400ドル水準を中心とした三角もち合い放れ待ちが継続。
ジャクソンホール会合
ジャクソンホール会合や、ロシア・ウクライナ停戦・和平合意などを受けて6月安値を割り込むと、一時的に売り圧力が高まる可能性はあるものの、金を取り囲む大きなテーマ(米覇権・基軸通貨ドル体制の揺らぎなど)に変化はなく、テクニカル的に売られた安値は、中長期的な買い場となる。チャートパターンの底打ち確認を待って、買い戦略で対処したい。
【海外投資家動向(225)】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。