金:三角保合い放れ待ち②|【Weekly Report】週間予定
2025年7月7日
週間展望(7/14~7/20)
このページで知れること(目次)
週間予定:米CPI、参院選挙、ベッセント氏とラトニック氏来日
前週:国家安全保障を理由にした分野別関税
ドル円:140-150円レンジ放れ待ち
金:三角保合い放れ待ち
【価格帯別売買代金】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米CPI、参院選挙、ベッセント氏とラトニック氏来日
・参院選投開票
与党が過半数維持できるかが焦点、過半数割れなら財政悪化懸念で日本売り(株安・円安)
・FRBブラックアウトを前にウォラー理事とボウマン副議長の講演
2人とも7月利下げに賛成
・米消費者物価指数
パウエルFRB議長は関税の影響でインフレは「夏にかけて」上昇と予想
・日本消費者物価指数
前回コアCPIは+3.7%と2年4カ月ぶり高水準、コメ中心に食品伸び加速
・ベッセント氏とラトニック氏が大阪万博イベント出席のため来日
赤沢再生相との会談の有無・内容が注目されるが、参院選前に話される内容は限られる
前週:国家安全保障を理由にした分野別関税
【追加関税】
トランプ米大統領は9日夜、幅広い製品に使われる戦略物資としての位置づけから、銅の輸入に50%の関税を課すと表明した。また、資源国であるブラジルに50%の関税を賦課するとの書簡を送付。いずれも8月1日に発動する。これらの発表を受け、銅先物相場が上昇し、その他の金属商品にも買いが波及している。
年前半のように関税懸念で米国の先物が買われている。関税が掛からない間に、スポット買い・先物売りをしてメタルをNYに持っていくと儲かるというスキーム。このためロコロンドンなどの在庫が減少し、NY在庫が増加。
リースレート上昇
リースレートも上がり、価格も上がるという循環に。ゴールドは関税が掛からないとはっきりしているが、その他のメタルは、まだわからない状況で、銀や白金のリースレートが上昇している。
関税が掛けられたアルミ相場と同様、NY銅とLME銅とのスプレッドも急拡大している。医薬品・医薬品原料にも1年超の猶予期間を設けたうえで200%の追加関税を課す。ラトニック米商務長官は米CNBCのインタビューで、銅関税の発動時期は7月末から8月初旬になるとの見通しを示した。
国家全然保証
トランプ米政権が検討しているのはいずれも、国家安全保障を理由にした通商拡大法232条に基づく追加関税で、実際に発動すれば自動車と鉄鋼・アルミニウム製品に続く新たな分野別関税となる。銅そのものだけでなく銅線や銅スクラップ、銅が含まれた製品など派生品も広く対象になる見通し。米ホワイトハウスによると、銅は米国防総省が使用する各種素材のなかで2番目に多い。電線などインフラだけでなく、電気自動車(EV)でも用いられる。トランプ政権は国内で生産・精製拠点を拡大し、35年までに生産量を7割増やし、輸入依存度を現在の45%から30%まで下げる目標を掲げている。こちらの関税は、米貿易赤字削減や財源確保の関税とは性格が異なる点に注意。
ドル円:140-150円レンジ放れ待ち
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、トランプ米大統領が7日、日本に25%の関税を課すと明らかにした。関税が本格的に発動されれば、米国の物価上昇圧力が高まる一方、日本の景気には下押し圧力が働くとの観測が浮上。
強気の雇用統計
関税政策がインフレ圧力の上昇につながるとの見方から、米債券市場で10年債利回りが上昇したことも、円売り・ドル買いを促した。米関税政策の影響を見極めるために米連邦準備理事会(FRB)が利下げに慎重になり、日銀も利上げに踏み切りづらくなるとみられている。今年前半の主要通貨に対する急激なドル売りが、足元で一巡し、持ち高調整目的の円売り・ドル買いも入った。
新税率の通知「第1弾」は日本や韓国、チュニジア、マレーシア、カザフスタンなど14ヶ国。世界で最も取引される10の通貨グループ「G10」に該当するのは日本だけだったこともあり、円売りが加速した。
9日にトランプ米大統領はブラジルに対して50%の関税を課す考えを示し、10日には、自身のSNSにカナダに関税率を通知する書簡を公表した。カナダが報復措置をとれば、35%とした税率をさらに引き上げる考えも示した。10日の米NBCテレビのインタビューでは、通知を受け取っていない国に対しては一律で15%か20%の関税をかけることを検討していると述べた。
米財政赤字拡大
FRBのウォラー理事が10日に「我々は(金融を)引き締めすぎており、7月に利下げを検討する可能性がある」との認識を示したことで、円買い・ドル売りで反応する場面もあったが、高関税が米国の物価上昇につながるとの観測を背景に、米債券市場で長期金利が上昇し、ドル円は三角保合いを上放れ。200日移動平均線と重なる150円が意識される流れ。同水準を明確に上抜けるか否かが焦点。参院選を前に、様子見ムードが高まる可能性も。
金:三角保合い放れ待ち
【今週見通し・戦略】
NY金(8月限)は、価格帯別出来高の厚い3300~3500ドルを中心とした三角保合い放れ待ちが継続している。中東の地政学リスクの後退や、米関税政策の先行きを巡る不透明から徐々に買い戻される展開となっている。
中国銀行8ヶ月連続金準備増加
ウォラーFRB理事が10日、7月末のFOMCで「利下げを検討することは可能」と、早期の利下げ再開に前向きな発言をしたことも材料視された。
主要中銀による金購入拡大の報も支援要因となった。中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した6月末時点の金準備が7390万トロイオンスと、8カ月連続で増加した。
ビットコイン高値更新
ドル高・NY金高に振れているため、円建て金の優位性が高まる時間帯となっている。内外共に押し目買い戦略維持。
ビットコイン価格が連日で最高値を更新している。米連邦議会は今週をクリプトウイーク(仮想通貨週間)と定め、仮想通貨に関する法案を集中審議する。金から暗号通貨への資金シフトの動きが強まるか否かにも注意。
【価格帯別売買代金】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。