金:地政学リスクの高まりは一服|【Weekly Report】週間予定
2025年5月12日
週間展望(5/12~5/18)
このページで知れること(目次)
週間予定:米CPI・小売売上高
前週:各国との貿易協議(米英合意・米中も合意期待)
ドル円:12日に予定されている米中共同声明の内容が注目
金:地政学リスクの高まりは一服
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米CPI・小売売上高
・米中貿易協議共同声明
枠組みだけの抽象的なものとなるのか、具体的な進展が見えるものなのか否かが焦点
・ロシア・ウクライナ首脳直接対談
15日に実施されるのか否か
・日銀主な意見
5月会合は2%目標実現時期を1年先送りするなど想定以上にハト派で円売り強まった
・日本GDP速報値
輸出低迷・物価高による消費低迷で4四半期ぶりのマイナス成長が見込まれる
・パウエルFRB議長が金融政策見直しについて講演
・ウォラーFRB理事は中央銀行について講演
・米CPI・小売売上高
CPIは総合・コアともに前月比で上昇の見込み、小売はガソリン価格下落で鈍化
・EU通商担当相会合
米国との貿易関係やEU経済安全保障について協議する
前週:各国との貿易協議(米英合意・米中も合意期待)
【各国との関税協議】
米英両政府が8日、2国間の貿易協定を締結することに合意したと発表した。米国が英国から輸入する自動車に低関税の枠を新設する一方、米国側は農産品、工業製品の対英輸出拡大を見込んでいる。トランプ米政権が相互関税を巡り、各国と進める貿易交渉の第1弾の合意となった。
トランプ関税への対応を巡り米中両政府がスイスで開いた初の閣僚級協議が、現地時間11日午後(日本時間12日未明)に終了した。10〜11日の閣僚級協議は、スイスの国連大使公邸で開催された。米国側からはベッセント氏と米通商代表部(USTR)のグリア代表が出席。中国は経済政策担当の何立峰(ハァ・リーファン)副首相が出席した。
出席したベッセント米財務長官は米メディアなどに「確かな進展があった。協議は生産的だった」と語った。
グリア氏は「これほど早く合意に達することができたということは、両国の隔たりは思ったほど大きくなかったということだろう」と話し、なんらかの合意があったことを示唆。合意内容が、米国の対中貿易赤字の解消に役立つとの認識を示した。
12日に共同声明
中国の何副首相もベッセント氏と同様に「建設的で確かな進展があった」と述べた。米中が貿易問題について協議する枠組みを設立することに合意したとして、双方が懸念する問題についてさらに協議を継続する方針を確認した。
米中両政府は協議の詳細を12日の共同声明で公表するとみられる。米中相互にかけ合っている100%を超える相互関税の引き下げに言及するのかどうかが注目。
中国国営新華社は10日の社説で「世界最大の2大経済大国の持続的な対話と、意見の違いへの責任ある対応、ウィンウィンの協力関係の深化が世界経済に確信と勢いを取り戻す」と訴えた。
ドル円:12日に予定されている米中共同声明の内容が注目
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、2日に米中関税交渉進展への期待感や、強気の米雇用統計から、一時145円台を回復。
ただし、トランプ関税に対する不透明感が根強いことで反落。142.30台まで下落した。
米中貿易協議
7日に、中国商務省は何副首相が9日から12日の日程でスイスに向かい、ベッセント財務長官と協議を行うと発表。また米国側も10日にベッセント財務長官とグリアUSTR代表が中国高官と協議を行う旨を公表。この報道を受けて、リスク回避の動きが後退。
米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利は市場予想通り、4.25~4.50%に据え置き。声明では、「経済見通しの不確実性がさらに高まった」「失業率とインフレの上昇リスクが高まった」といった見解が示された。パウエルFRB議長は記者会見で、「利下げを急ぐ必要はないと考えている。忍耐強くデータを確認する」「関税の影響が警戒されているが、まだ影響は顕在化していない」「高関税が続くようなら、インフレの再燃に加えて景気減速や雇用の悪化を招く」との見解を示した。
利下げに否定的
6月のFOMCでの利下げに関しては否定的な見解を示したことや、米英の関税交渉での合意が報じられ、3月28日高値~4月22日安値までの下げ幅に対する38.2%戻し(144.2円)と重なるネックラインを上抜き、リターンムーブからの反発パターンとなった。61.8%戻し(146.8円)、N=148.3円、V=149.5円、E=151.9円などを試す流れ。
今週は、米消費者物価指数(CPI)、米小売売上高などが発表されるが、市場では景気指標よりも「関税交渉の結果待ち」といった雰囲気が強い。まずは、12日に予定されている米中共同声明の内容が注目。
>金:地政学リスクの高まりは一服
【今週見通し・戦略】
NY金(6月限)は、4月7日安値~4月22日高値までの上昇に対する半値押しを達成。価格帯別出来高の厚い支持帯である4月2日高値(3201.6ドル)~3200ドルで支えられ、GW中に急伸となった。連休明けの中国勢の押し目買いや、米関税措置の不透明感や、ドル安を受けて買い優勢となった。
また、地政学リスクの高まりも、GW中の金買いに繋がった。イスラエル軍は6日、イエメンの首都サヌアの空港などを空爆した。フーシがイスラエルの空港にミサイル攻撃したことへの報復とみられる。イスラエルは5日にもイエメン西部の港を空爆しており、両者の攻撃の応酬が激しくなっている。
地政学リスク後退
更にインド政府は7日、パキスタンと領有権を争うカシミール地方のパキスタン側にある計9ヶ所の「テロリストのキャンプ」を攻撃したと発表。核保有国の衝突に緊張感が走り、金買いが強まったが、トランプ米大統領は10日、「米国が仲介した長時間の協議の末、インドとパキスタンが完全かつ即時の停戦に合意したと発表する」と投稿した。また、プーチン大統領は11日、ウクライナを巡る和平交渉について15日にトルコのイスタンブールでの直接交渉をウクライナに提案すると述べ、ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領が提案した直接交渉について、ロシアが一時停戦に応じれば「会談する用意はある」と述べた。地政学リスクが後退すると、金の上値抑制要因に。
NY金(6月限)は、終値ベースで3500ドル台を維持できると、上昇過程での中段のもち合い上放れとなり、一目均衡表の目標値、N=3748.9ドル、V=3810.4ドルなどを試す流れとなる。一方、3500ドルをザラ場で抜けても、押し戻されるようなら、3200ドル~3500ドルのもち合いで日柄を稼ぎながらの放れ待ちとなりそうだ。関税猶予期限の7月上旬までは、目まぐるしく状況が変わる貿易交渉の行方を見極めようとする展開も想定される。
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。