金:「安全資産」としての買い、再開|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:「安全資産」としての買い、再開|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2025年4月14日

週間展望(4/14~4/20)

週間予定:米20年債入札・パウエルFRB議長講演・中国GDP

【週間スケジュール(4月14日~4月20日)】

・ベッセント米財務長官と赤沢亮正経済財政・再生相が日米の政府間交渉


・米イラン核開発問題協議


・WTO世界貿易見通し 

 WTOは米中摩擦による世界貿易の分断を懸念、貿易が80%減少と予測


・IMF専務理事講演

 トランプ関税は世界経済に重大なリスク、各国に摩擦解決するよう求める


・パウエルFRB議長とウォラーFRB理事の講演 

 FOMC議事録ではスタグフレーション懸念が指摘された


・中国GDP

 米小売売上高は関税前の買いで伸び加速か


・トランプ米大統領の関税巡る発言に要警戒

 中国は強硬姿勢維持、EU中国は関係強化



前週:米債券急落・金利上昇で相互関税一時停止?

【トリプル安】

日本と中国の米国債保有残高推移

米10年国債利回り

トランプ政権は9日、相互関税を部分凍結した。この背景にあったのは、「米株安・ドル安・米債安」のいわゆる「トリプル安」に伴う金融危機懸念の浮上と見られる。市場の動揺を受けて、ベッセント財務長官が主導し、トランプ大統領に関税上乗せの一時停止を説得したとされる。


2日に相互関税が発動されて以降は、株価下落などに対する「安全資産」として、米国債が大きく買われ(米金利低下)ていたが、9日午前0時1分に相互関税が発動される直前、米国債が急激に売られ始めた(米金利は急上昇)。


米債券価格が急落(米金利は急上昇)した理由は、


①株価下落で巨額損失を抱えたヘッジファンドが保有国債の換金売りに動いた②中国が報復として米国債売りに動いた。③農林中金の売却。などだが、米国債が時間外で大きく売られるのは極めて珍しく、農林中金の売却との噂が広がった。2024年6月には、農林中央金庫は米国債等運用の失敗により、2兆円を超える含み損を抱えていることが報じられていた。

バーゼル規制に引っかかった?

各国のSNS上では、「昨夜、60倍のレバレッジをかけた10年米国債を運用し、世界を大恐慌から救った日本のヘッジファンドに拍手を送ります。私たちはあなたの犠牲を決して忘れません、兄弟。」


「米国債の大量売却によりトランプ関税を凍結。世界を救った農林中央金庫ではあるが、これだけの円安で米国債での評価損を抱えていた(つまり2025年4月9日の大量売却は損切り)ポンコツトレーダーではある」など飛び交った。



ドル円:関税見送りと引き換えに暗黙の通貨協定か?

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)MAC(Moving Average Channel)

ドル円(日足)とDoller INDEX

ドル円は、9日には相互関税上乗せ部分の発動を嫌気して下落したが、日本時間10日午前2時頃に、上乗せ部分発動を90日間一時停止発表で反発。

関税発動一時停止

148円台まで戻りを見せたが、戻りは売られて前週末には142円台まで反落。ドル円は、9日には相互関税上乗せ部分の発動を嫌気して下落したが、 日本時間10日午前2時頃に、上乗せ部分発動を90日間一時停止発表で反発。148円台まで戻りを見せたが、戻りは売られて前週末には142円台まで反落。日本に対しては相互関税発動の延期が決まったが、国別交渉で、円高容認が示唆されることが意識されている。トランプ関税24%と引き換えに、暗黙の通貨協定を結ばされる可能性だ。国別交渉で、円高容認が示唆されることが意識されている。トランプ関税24%と引き換えに、暗黙の通貨協定を結ばされる可能性だ。


トランプ政権は、「強いドルは国策」という建前は維持しつつも、国内製造業向けに、ドル安誘導したい意向だ。一方、日銀は、160円を超えて加速するような悪い円安(株安)を回避したい姿勢に変化はない。夏の総選挙でも、円安による物価高是正が大きな争点になる。政治的にも円高歓迎の雰囲気が高まろう。安全資産としての米国債に疑念が生じる中、金(GOLD)と同様に、円の安全通貨神話も復活の気配だ。

ドルインデックスとの比較で割高感

ドルインデックスと比較してもドル円は、割高の状態だ。140円は2023年以降の支持線ではあるものの、ドルインデックスの下げが強まるなら、130円水準があってもおかしくはない。単純計算で関税24%との相殺なら125円という数字も出てくる。150円が上値抵抗に変化中。



金:「安全資産」としての買い、再開

【今週見通し・戦略】

NY金(6月限)MAC(Moving Average Channel)

NY金(6月限)と米10年債利回り

時事通信社ゴールドレポート(4/3号)で≪NY金の200日移動平均線との乖離率は、24年に修正入りのきっかけとなった過熱感ある水準にまで高まっている。3月29日は高値の節目を付けやすい新月。4月13日が安値の節目を付けやすい満月だ。水星の逆行期(3月14日〜4月7日)、金星の逆行期(3月1日〜4月12日)も終了してくる。

史上最高値更新

テクニカル的な短期調整が予想されるものの、4月安値は買い直され、急反騰シナリオもありそうだ≫と指摘したが、予想通り、NY金は調整後、急反発。史上最高値を更新した。


株価との逆相関が明確になってきたのは、米ドルの国際基軸通貨としての信認が落ちていることが一因だ。ロシア・ウクライナ戦争以降、ドル資産回避が強まっているが、今回の関税問題での自由貿易体制から保護貿易体制への移行で、中央銀行の外貨準備としてドルが売られ、ドルの代替資産とされる金が買われる傾向が加速していきそうだ。


米つなぎ予算もギリギリの段階で延長が決まったものの、9月末には再び、政府予算の失効問題が浮上してくる。トランプ政権がコントロールするのに苦戦しそうなのが米債務問題だが、中期的には米国債は、誰が買うのかと言うババ抜きも浮上してくるだろう。現段階では、中国の米国債売りに対して、関税交渉の一環として、日本が米国債を更に買うような展開となりそうだ。足元での米金利上昇は、安全資産として米国債が買われていないことを表しており、トリプル安に繋がりかねない悪い金利上昇で、「安全資産」としての大本尊「金買い」は継続する。金の買い戦略も継続で。



【米ミシガン大学・期待インフレ率】

米国 ミシガン大学1年先期待インフレ率、5年先期待インフレ率速報値



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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