金:ポジション調整一巡で史上最高値更新|【Weekly Report】週間予定
2025年3月17日
週間展望(3/17~3/23)
このページで知れること(目次)
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・米小売り売上高
前週:米つなぎ予算、土壇場で可決
ドル円:大口投機玉の円買い越しは過去最高水準(CFTC)
金:ポジション調整一巡で史上最高値更新
【米ミシガン大学景況感指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・米小売り売上高
・日銀会合
3月は利上げ見送り濃厚、植田日銀総裁「実質賃金と消費は改善の見込み」発言
・米FOMC
3月は利下げ見送りか、パウエルFRB議長は会見でハト派姿勢示すか、米CPIは鈍化
・米小売売上高
1月は寒波・山火事、自動車部門低迷で2年ぶりの大きな落ち込みとなった
・連合25年春闘第2回回答集計結果
・日本2月消費者物価指数
・FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~20日)
・カナダのオンタリオ州フォード首相とラトニック米商務長官が再協議(週内)
・カナダのカーニー新首相とトランプ米大統領が数日以内に会談(週内)
前週:米つなぎ予算、土壇場で可決
【米つなぎ予算】
14日深夜に失効する「つなぎ予算」の延長をめぐり、トランプ政権と議会指導部が優位に交渉を進めている。トランプ氏の要望を含めた法案を11日に下院で可決した。下院が可決した法案は、会計年度末となる9月末まで政府予算の失効を回避するもの。本来必要な12本の予算法案も作らず、1年を通してつなぎ予算で乗り切る異例の案。
上院で野党・民主党の議事妨害(フィリバスター)を回避するには60票が必要だが、共和は53議席にとどまり、上院で可決できるか否かは不透明ということが、米株価の下落の一因となった。
当初はつなぎ法案に協力する代わりに米政府効率化省(DOGE)の動きを制限する条文を盛り込むよう求める動きもあったが、トランプ大統領は全面的にイーロンマスク氏を支援している。
予算の失効直前まで与野党が攻防する様は、米議会では年中行事となっているが、トランプ大統領は、第1次政権でも国境の壁の建設を巡って過去最長となる政府閉鎖を実施した「実績」もあることが意識された。
上院も可決
米連邦議会上院は14日、2025会計年度が終わる9月末までのつなぎ予算案を可決した。トランプ米大統領の署名で成立し、14日深夜に迫っていた米政府機関の閉鎖は回避される。
下院は11日、先に共和議員らの賛成多数でつなぎ予算案を可決した。トランプ氏の意向を組んだ内容で、米政府効率化省(DOGE)の政府リストラに制限を設ける民主側の要望は含まれなかった。
ドル円:大口投機玉の円買い越しは過去最高水準(CFTC)
【今週見通し・戦略】
先週もドル円は、日替わりのように、トランプ政権による関税関連の報道、それに対する各国の報復措置、米経済指標の動向などに目まぐるしく振り回される展開が続いた。3月12日にトランプ政権は鉄鋼とアルミニウムに25%の関税措置を発動した。欧州連合(EU)や中国は報復措置を表明。
関税に振り回される
前週末は、トランプ政権の関税政策への警戒感や日銀の利上げ観測などから週前半に146円台半ばと約5ヶ月ぶりの安値を付け、米景気悪化と米連邦準備理事会(FRB)による年内0.25%の利下げ3回をほぼ織り込んだ相場水準になっているとの見方から、週末前のポジション調整が目立った。
米トランプ政権の関税政策が米国の物価上昇圧力を高めるとの見方も一因。ミシガン大学が3月の米消費者態度指数(速報値)とあわせて発表した1年先の予想インフレ率は4.3%から4.9%に切り上がり、長期の予想は3.5%から3.9%と1993年以来の水準に上昇した。
17日の米2月小売売上高は、前回から改善予想。予想比に注目。
19日には日銀金融政策決定会合の金融政策発表と植田総裁の記者会見がある。今回の会合では政策金利は据え置きの見込み。3月12日に集中回答日を迎えた2025年春闘は、トヨタやイオンが満額回答を示すなど好調なものが多く、今後の利上げに向けたヒントが出てくるか否かが焦点。
日米ともに金利据え置き観測
米連邦公開市場委員会(FOMC)とパウエル議長の記者会見も注目。
今回FOMCは政策金利は据え置きの見通し。声明や記者会見で、トランプ関税や経済政策の影響が今後の金融政策運営にどう影響するかが注目される。今回はFOMCメンバーによる政策金利や物価、経済成長率見通しが発表される。
投機筋のドルに対する円の買い越し幅は過去最大規模まで膨らんで、巻き戻しリスクが指摘されているが、対他通貨でのドル売りポジションは限定的。
金:JPX金、90日移動平均線の攻防戦
【今週見通し・戦略】
トランプ関税を巡る不透明感が一段と強まる中、NY株式市場の崩れから調整に入ったが、押し目はすかさず買われ、先週末に最高値更新となった。
ポジション調整一巡
過去最高水準に接近していた大口投機筋の買い越しは、1月21日付をピークとして減少し、米国大統領選挙が無難に通過したことを嫌気してポジション調整が行われた2024年11月19日付水準までポジション整理が進んだ。
こうした中、米政権が相次いで仕掛けた貿易戦争による不確実性の高まりを受け、安全資産である金に資金を逃避する動きが強まったことが高値更新の一因だ。
また、ベッセント米財務長官は3月7日、CNBCとのインタビューで「市場も経済も中毒になっていた。われわれは政府支出に病みつきになっていた」とし、「この先はデトックスの期間になる」と話した。株式相場を下支えするためにトランプ大統領が政策を転換することはあるのかと問われると、ベッセント氏は株式関係者らが期待する「トランプ・プット」といったものは存在しないと明言。「調整されるのは自然なことだ」と述べた。トランプ政権の成長推進政策に向けて「市場は様子見姿勢に入った」と指摘。
Drain the Swamp
トランプ政権として、「DOGE(政府効率局)」のイーロン・マスクらと共に、これまでアンタッチャブルだった痛みを伴う大改革「Drain the Swamp」(ワシントンの泥沼を掻き出せ)を最優先する意向を明確に示した。次期大統領選挙の再選がないトランプ大統領は、「数十年、さらには1世紀先を見据えた富の再構築を進めており、アメリカ株式市場の四半期ごとの結果では、これを測ることはできない」と述べている。
史上最高値圏を更新したNY金は、これまでの抵抗であった2900ドル~3000ドルを下値支持帯として、上値試しが継続するだろう。過去10年間の3月の金月間騰落傾向は、内外共に買い方有利の時間帯だ。円建て金に関しては、4月はこの10年間、更に強気優位の時間帯となっている。押し目買い有利の時間は続く。短期的には前週末の十字線レンジ放れに動意付きそう。
【米ミシガン大学景況感指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。