金:内外共に年初来高値更新➁|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:内外共に年初来高値更新➁|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2025年2月10日

週間展望(2/10~2/16)

週間予定:中国対米報復関税発動・FRB議長半期議会証言

【週間スケジュール(2月10日~2月16日)】

・中国対米報復関税発動

 米国からの輸入品に最大15%の追加関税 トランプ氏「問題ない」


・パウエルFRB議長の半期に1度の議会証言

 米上下両院で金融政策や経済情勢について語る


・ボスティック・アトランタ連銀総裁、経済見通しについて講演


・米消費者物価指数・小売売上高 

 FRBはインフレ進展確認するまで利下げ急がない姿勢


・マン英中銀委員経済見通しについて講演

 6日の金融政策会合で予想外に50bp大幅利下げ主張した


・OPEC月報・IEA月報


・ミュンヘン安全保障会議(16日まで)

 トランプ米政権がウクライナ戦争終結案発表か?


・ルビオ米国務長官がイスラエル、UAE、サウジアラビアを訪問(18日まで)



前週:DeepSeekショック

【ディープシーク】

米国雇用統計

米国 ミシガン大学1年先期待インフレ率、5年先期待インフレ率 速報値

2025年1月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は14万3000人増加と、事前予想の17万人増を下回った。カリフォルニア州の山火事や国内各地の寒波が影響したとみられる。ただ、失業率が4.0%と低水準にあることから、FRBは少なくとも6月までは利下げを延期できる可能性が高いとの観測が強まった。


12月の非農業部門雇用者数は30万7000人増に上方改定された。当初発表は25万6000人増だった。時間当たり平均賃金は前月比0.5%、前年比4.1%それぞれ上昇。12月は前月比0.3%、前年比4.1%上昇していた。

【ミシガン大学】

一方、米ミシガン大学が7日に発表した2月の消費者信頼感指数(速報値)は67.8と、7カ月ぶりの低水準を付けた。トランプ政権が掲げる関税措置による購買力の低下を回避するには遅すぎるとの懸念から、期待インフレ率が急上昇した。1月の消費者信頼感指数確報値は71.1。事前予想は71.1だった。2月の景気現況指数速報値は68.7と、前月の74.0から低下。


消費者期待指数速報値は67.3と、前月の69.3から低下。共に予想を下回った。


1年先の期待インフレ率は4.3%と、前月の3.3%から上昇し、2023年11月以来の高水準。5年先の期待インフレ率は3.3%と、前月の3.2%から上昇し、08年6月以来の高水準となった。



ドル円:200日移動平均線割れ

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

2月5日には厚生労働省が発表した24年12月の毎月勤労統計調査で実質賃金が2ヶ月連続のプラスとなった。追加利上げに向けて賃上げの動向を重視する日銀にとっては追い風といえる中、5日には赤沢亮正経済財政・再生相が「足元はインフレの状態で(日銀の)植田総裁の認識と特に齟齬はない」と述べたのに続き、6日午前、加藤財務相が衆院予算委員会で「現状物価が上がっているという意味ではインフレ」と述べた。

日銀金融正常化の強い意思

また、日銀の田村委員は6日、長野県で開いた金融経済懇談会の挨拶で、「2025年度後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価安定の目標を持続的・安定的に達成するうえで必要だ」などと述べた。市場の想定より利上げのペースが速く、金融引き締めに積極的なタカ派的との受け止めから、円買い・ドル売りが進んだ。


米ISM非製造業(サービス業)景況感指数が市場予想を下振れたことなどを受けて、米長期金利が低下したことも円買い・ドル売り要因。


米ドルの実質実効為替レートが、1985年のプラザ合意以来の高値圏に到達している中、日銀が金融正常化を急ぎ始めた背景には、ベッセント財務長官が円安を問題視しているからではないかとの見方も浮上している。米財務省は5日、ベッセント米財務長官と日銀の植田和男総裁が電話協議したと発表。

貿易赤字解消を

トランプ米大統領は日米首脳会談で大統領執務室で記者団に対し、対日貿易赤字の問題に取り組み、「均衡」に戻したいと語った。関税が赤字に対処する選択肢とも述べたが、日本は既に、アメリカの輸入におけるシェアは大きく落ち込んでおり、米国にとっては、関税交渉する優先順位は、メキシコ・カナダ・中国・欧州と比べると、相当低い。米国の貿易赤字においても、全体に占める日本のシェアは劇的に減少しており、「互恵関税」になると思われ、日米当局の思惑が一致する為替水準での暗黙での調整も想定される。



金:内外共に年初来高値更新

【今週見通し・戦略】

チャート

JPX金(日足)

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は5日、2024年の世界の金需要が投資の増加に伴い、1%増の4974.5トンと過去最高を記録したと発表。各国の中央銀行が第4・四半期に金購入を加速させた。トランプ米大統領が課した関税に中国も報復する中、「安全資産」の金に買いが集まり、金価格は内外共に最高値を更新している。


金の主要な買い手である中央銀行の2024年の購入量は、3年連続で1000トンを超えた。WGCの試算に基づくと、24年第4・四半期の中銀による金購入は、前年同期比54%増の333トンだった。


金の輸入にもトランプ関税がかかるのではないかとの思惑から、米国の駆け込み需要が増加、これがコメックス金在庫の増加に繋がっているとの見方も材料視されている。当面は金が包括関税に含まれないと想定されているものの、思惑的な動きが続いている。

2月は下げ有利

また、バイデン政権末期に実施されたロシアへの追加制裁や、トランプ大統領が「南アへの資金援助をすべて停止する」と言う大統領令に署名したことなどから、現物のタイト感を背景にリースレートも上昇しており、買い方有利の流れが続いている。ただし、要注意は、CFTC達玉明細での大口投機玉の買い越し水準が過去最高に接近しており、他のリスク資産の調整絡みがあると、短期的には追随するかもしれない。2月の月間騰落率は、NY金は1月の買い方有利から一転して売り方優勢の時間帯。ただし、そのような内部要因からの調整局面は、投機玉の買い越し整理の後は改めて買い直されるだろう。調整局面で出る安値が。中長期的な買い場となりそう。



【米雇用統計&ADP雇用統計】

米国ADPと米雇用統計



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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