金:保合い上放れ、上値抵抗が下値支持に変化|月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・米利下げと金価格|【Monthly Report】月間展望(9月)
2024年9月2日
~9月1日~9月30日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:円キャリートレード巻き戻しは一巡 日米欧金融政策決定会合・大統領選挙年の月間騰落・ドル円(日足)
金:保合い上放れ、上値抵抗が下値支持に変化 月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・米利下げと金価格
9月注目スケジュール:米大統領選挙TV討論会・雇用統計・FOMC
ドル円:円キャリートレード巻き戻しは一巡
日米欧金融政策決定会合・大統領選挙年の月間騰落・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
8月のドル円は、日銀の追加利上げに加え、植田日銀総裁が記者会見で「一段の政策金利の調整はあり得る」と、更なる追加利上げを否定しなかったことに続き、パウエル議長がFOMC後の記者会見で「早ければ9月会合での利下げがあり得る」などと金融緩和に前向きな姿勢を示し、日米金利差縮小が材料視された。7月の米雇用統計米雇用統計を受けて、米景気後退シグナルの一つである「サーム・ルール」も発動となり、200日移動平均線~心理的節目150円割れから下げ加速となった。
この急落劇の背景は、円キャリートレードの巻き戻しと見られている。円キャリー取引(低金利の円を調達し、高金利のドルで運用して金利差収益を得ようとする取引)ブームは、ロシアのウクライナ侵略で、世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱が生じ、米国を始めとする先進国のインフレ圧力が高まり、米利上げが長く続いたことが背景。大きく膨れ上がった円売りポジションが、日米金融政策の転換をきっかけに巻き戻され、リスク資産全般売りに繋がった。
ただ、CFTC建玉明細(8/13現在)では、大口投機玉の円売りが途転買い越しに転じており、円キャリーに伴うパニック的な動きは一巡している。
過去(LTCMショック・リーマンショック時)にも今回と同様に円キャリーが投機的に膨らみ、破裂した例があるが、いずれも数ヶ月~1年ほどで3割程度の円高・ドル安が進んだ。7月上旬に付けた161円台が当面の天井校と考えて良いだろう。9月FOMCでの米利下げは、市場コンセンサスとなっており、対円、対ユーロでのドル売りトレンドは継続しそうだ。
一方、過去の米大統領選挙年の9月~10月のドル円は、次期政権の通貨政策を見極めようと様子見ムードが強まる傾向がある。月間騰落傾向は円高ドル安が優勢の時間帯。ドル円は、140円を維持できれば140-150円。ダブルボトムを形成も、ネックラインと重なる200日移動平均線~150円を超えなければ、レンジ放れ待ちへ移行か?
~日米欧金融政策会合スケジュール・ドル円~
【日米欧金融政策決定会合】
【大統領選挙年の月間騰落】
【ドル円(日足)200移動平均線】
金:保合い上放れ、上値抵抗が下値支持に変化
月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・米利下げと金価格
【今月見通し・戦略】
パウエル議長がカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、米国のインフレについて「(物価目標である)2%に持続的に戻る軌道にあるという自信が深まっている」と語った。その上で「政策を調整する時期が来ている」と述べ、米利下げ観測からドル売りが優勢となり、8月のNY金(12月限)は、4月以降のレンジ上限の2500ドル~2540ドルを上抜けて上げ加速となった。金と相関の高いユーロドルの上昇、米10年債利回り低下が追い風となった。
過去の米利下げ局面下における金相場の値動きを振り返ると、利上げ停止で底固めを行い、利下げ開始と歩調を合わせるかのように、上げ足を強めている。(8/16付:市場分析レポート「米利下げ観測に変化なし」参照)。また、7月22日付:市場分析レポート「米利下げ開始後も、円建て金は優位性」で指摘したように、ドル建て金以上に、過去の米利下げ局面では、円建て金は上昇している。
世界最大級の需要国インドで、これまでゴールドとシルバーにかけていた15%の輸入税を、今回の政府予算報告で財務大臣がで6%に大幅に低下させると発表。この輸入税のために密輸が横行していた。ゴールドを半製品にして輸入(関税が低い)、それを溶かして地金にして売る、プラチナとの合金にして輸入(関税が低い)、それを溶かして地金にして売る、という迂回方法が横行していたが、統計上、表面に出てくる数字は強気のものが増えそう。
9月10日に、「トランプVSハリス」のTV討論会が予定されている。米大統領選挙の不透明感は強く、世界各地で地政学リスクの火種が燻る中、金の押し目買い基調は継続するだろう。単なる値頃感でトレンドを見誤らないようにしたい。「買えない相場は高い」の相場格言通りの展開となりそうだ。これまでの上値抵抗が下値支持に変化し、押し目買い基調が継続見通し。
~月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・金下期累積パフォーマンス~
【月間騰落率(OSE金)】
【米利下げ後のパフォーマンス】
【米利下げと金価格】
9月注目スケジュール:
米大統領選挙TV討論会・雇用統計・FOMC
米国で9月10日に予定されている、ドナルド・トランプ前大統領とカマラ・ハリス副大統領の初のTV討論会が注目。激戦州の一つ、東部ペンシルベニア州で、ABCテレビの主催でTV討論会が行われる。
討論会で相手候補の発言中にマイクの音を切るかどうかをめぐり両陣営の意見が対立。ハリス氏の陣営は常にマイクの音を入れるよう求めている。政治専門サイト「ポリティコ」はトランプ氏の不適切な発言を引き出すことが狙いだと伝えている。トランプ氏は「マイクの音を消すという合意だった。彼女が討論会を望んでいないからルールを変えようとしている」と不満を示したほか、主催するテレビ局の公平性に疑問があるなどと主張し、両者の駆け引きが活発になっている。
6月下旬の1回目のTV討論会(トランプVSバイデン)でバイデン撤退が決まったが、TV等損壊が接戦が予想されている大統領選挙のターニングポイントとなる可能性も。
日本では自民党総裁選挙が注目。自民党の刷新感・改革が意識されると日本買いのきっかけとなる可能性も。同時期に立憲民主党の党首選挙も実施されるが、野田氏が党首になれば、左派系党員の離脱に伴い、自民党の小規模な分裂・離党組と維新系の分裂組との合流で新自民・新野田政党の2大保守政党時代へ移行する可能性も。
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。