金:長期上昇トレンド継続|月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・金下期累積パフォーマンス|【Monthly Report】月間展望(8月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:長期上昇トレンド継続|月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・金下期累積パフォーマンス|【Monthly Report】月間展望(8月)

NSトレーディング 菊川弘之
2024年8月1日

~8月1日~8月31日 ~

ドル円:日米金利差縮小思惑から天井確認
日米欧金融政策決定会合・ 2024年介入・ドル円(週足)

8月騰落率(ドル円)

【今月見通し・戦略】

7月のドル円は、月初に1986年12月以来の円安・ドル高水準を付けた後、6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことに合わせて、政府・日銀が11日に3兆円規模、12日に2兆円規模で円買い・ドル売りの為替介入を実施した事から円高ドル安に反転した。


また、米大統領選挙TV討論会以降の支持率と民主党内での求心力が急速に低下したバイデン降ろしの動きに続いて、遊説中のトランプ前大統領が狙撃されながらも鮮血に顔を染めながら、拳を突き上げ聴衆にアピールしたことで、一気に「もしトラ」から「トランプ再選で決まり」との見方が広がった中、トランプ氏が16日、為替政策について、強いドルが問題だと指摘し、人民元と円の弱さを名指しで批判した。インタビューの公開後、外国為替市場では急速に円高・ドル安が進み、155円台前半まで続落した。また、17日の米ブルームバーグ通信のインタビューでは、河野太郎デジタル相が円安是正のために日銀に利上げを求める姿勢を示したことで急速にこれまでの円売りドル買いの巻き戻しを伴う調整入りとなった。


7月末の日銀金融政策決定会合では国債買い入れ減額と追加利上げを決め、植田日銀総裁は記者会見で「一段の政策金利の調整はあり得る」と追加利上げを否定しなかった。米連邦公開市場委員会(FOMC)でも金融緩和に前向きな姿勢が示され、ドル円は、テクニカルポイントであった200日移動平均線(52週移動平均線)~心理的節目150円を割り込んできた。


同水準を早々に回復するなら、中長期のドル高継続。152円を回復すると、目先の底打ち感が出てくる。一方、回復できないようだと、日柄経過と共に戻り売り基調が強まり、145円試しへ。155円が上値抵抗。


8月の月間騰落傾向は、円高ドル安傾向(34戦15勝19敗)。ジャクソンホールで利下げ思惑が強まれば、更なる下値試しも要想定。



~日米欧金融政策会合スケジュール・ドル円~


【日米欧金融政策決定会合】

2024年FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合の日程


【ドル円(22・24年介入)】

2024年ドル円相場


【ドル円(週足)52週移動平均線】

ドル円(週足)52週移動平均線



金:長期上昇トレンド継続
月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・金下期累積パフォーマンス

8月騰落率(NY金)

【今月見通し・戦略】

7月のNY金(12月限)は、パウエルFRB議長が15日、利下げについて「インフレ率が2%に達するまで待たない」との姿勢を示し、利下げ開始がそう遠くない可能性を示唆したことや、米10年債の利回り低下、トランプトレードを受けたNYダウの大幅続伸からリスクオン(リスク容認)ムードが強まり、25年6月限以降の全限月が一代高値を更新した。


その後、準備資産である金の積み増しを1年半に渡って続けていた中国人民銀行(PBOC)が5月に続き6月も買い増しを見送ったことや、バイデン米大統領が大統領選から撤退を表明したことから米民主党勝利の可能性が上昇し、傾き過ぎたトランプトレードを見直す動きが出た。最高値更新で利益確定売りも出やすかった中、中国人民銀行の利下げをきっかけに急落した。


ただし、米個人消費支出(PCE)価格指数の伸び鈍化や、FOMCを受けて、価格帯別出来高の厚い2400ドルが下値支持として意識され反発した。パウエル議長は7月FOMC後の記者会見で、今後の物価や労働市場の動きによっては「早ければ9月に利下げする可能性がある」とも述べ、金融緩和期待が高まった。過去、米利下げサイクル入り後の金相場は、株価と比較しても優位性が確認(特に円建て金)される。


更に、中東の地政学リスクの高まりも金買いに繋がった。イスラエル軍はゴラン高原攻撃への報復としてレバノンの首都ベイルートを精密攻撃し、ヒズボラの司令官で作戦本部トップのファド・シュクル氏を殺害した。ハニヤ氏はガザ停戦協議でエジプトやカタールなど仲介役との接点だったことから、対話の頓挫が警戒されているほか、大統領の就任宣誓式に出席するためイランに訪れていたハマスのハニヤ最高指導者が首都テヘランで殺害されたことを巡り、イランはイスラエルの犯行だとして報復を宣言。米大統領選挙に向けて不透明感も強く、ドル基軸通貨体制・米覇権の揺らぎと言う大きなテーマの下、金の押し目買い基調は継続見通し。



~月間騰落率・利下げ後パフォーマンス・金下期累積パフォーマンス~


【月間騰落率(OSE金)】

8月騰落率(金標準)


【米利下げ後のパフォーマンス】

米国の利上げ開始後のパフォーマンス


【金下期累積パフォーマンス】

金下期累計パフォーマンス 1994~2023



8月注目スケジュール:
米民主党大会・雇用統計・ジャクソンホール会議

8月注目スケジュール


民主党の党大会で選ばれる正副大統領候補が誰になるかが注目。バイデン大統領が選挙戦を辞退してから、共和党との支持率は拮抗している。民主党は、8月1~5日に実施する電子投票でハリス氏を正式に大統領候補に選出し、党大会に向けて結束を呼び掛けるとみられる。


8月22日~24日に開催される経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」も注目。「ジャクソンホール会議」は、毎年カンザスシティ連邦準備銀行が主催し、世界各国の中央銀行総裁や財務大臣、学者、金融市場関係者が参加して経済政策について議論するイベント。

特に、米連邦準備制度理事会(FRB)議長による講演は、FRBの金融政策の方向性に関する重要な手掛かりとなるため、ここ数年、金融市場から非常に注目されている。パウエル議長は、7月9日の議会証言で米国経済は「もはや過熱していない」と述べ、7月FOMC後の記者会見で「早ければ9月会合での利下げがありうる」と述べ、雇用統計を始め、マクロ経済指標などのデータを確認した後の8月下旬開催の「ジャクソンホール会議」は、9月利下げ・年内の利下げ回数の行方を探る注目点となる。


日本では、4-6月期の実質GDPが公表される。1-3月期の実質GDPは前期比年率▲2.9%と、品質不正問題による自動車の生産停止などから大きく下振れしたが、4-6月期はプラス転換が見込まれる。

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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