内外ともに、史上最高値更新|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

内外ともに、史上最高値更新|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2024年3月11日

週間展望(3/11~3/17)

週間予定:日本GDP改、米消費者物価と小売売上高 中国新築住宅価格

【週間スケジュール(3月11日~3月17日)】

今週は、春闘回答結果に日本GDP改定 米消費者物価と小売売上高 中国新築住宅価格 米国は夏時間入り。FRBはブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛期間)。


日本GDP改定値の内容次第では、日銀3月マイナス金利解除との見方がさらに高まり、円買いが強まる可能性も。


2月の米消費者物価指数(CPI)の市場予想は、前年比+3.1%と1月と同水準の伸びが見込まれる。コアは+3.7%と1月から伸びが鈍化見込み。前月比では+0.4%と1月の+0.3%から伸びが強まる見込み。コア前月比は+0.3%と1月から伸びが鈍化見込み。


半導体不足からの供給制限の緩和が改善している自動車部門の価格低下が継続して見込まれていることもあり、全体に低めの数字が見込まれる。


前回伸びが予想を超えた主要因として、帰属家賃内の一戸建て住宅と集合住宅のウェイトが予想外に変更された影響が大きかったが、今回はウェイト変更を加味しており、前回のようなサプライズにはなりにくい。



前週:ヌーランド辞任

【ヌーランド更迭】

ヌーランド更迭※CBSニュース

3月1日、ドイツ空軍高官がクリミア大橋爆撃計画を謀る会話がロシアによってリークされ、米国務省は5日、同省ナンバー3のヌ―ランド次官(政治担当)が近く退任すると発表した。ヌ―ランド氏はウクライナの強力な支持者。ロシア外務省のマリア・ザハロワ公式報道官は、ヌーランド米国務副長官の数週間以内の辞任決定の理由について、ジョー・ バイデン政権の反露路線の失敗と関連していると述べた。ヌーランド氏は2013年に国務次官補・欧州・ユーラシア担当に任命された。ユーロマイダンの最中に何度もウクライナを訪れ、キエフのクーデター(マイダン革命)の立役者の一人とみなされている。夫であるロバート・ケーガンは、ブルッキングス研究所の外交政策評論家であり、1998年に新アメリカ世紀のためのネオコンプロジェクト (PNAC) の共同創設者で夫婦揃っての強力なネオコンだ。


ドイツ国防相は5日、会議参加者がネット接続する際に機密保持措置を怠り、内容が傍受されたと述べ、ドイツ側でも本物の音声だと認めた。傍聴された会議の内容によれば、クリミア大橋への攻撃方法以外に「ショルツ首相は腰抜けだ」などの悪口もあったとのこと。ヌーランドは、2014年2月、ジェフ・パイアット駐ウクライナ大使との通話内容がYouTubeに投稿され、そこでヌーランドは国連によるウクライナへの介入を支持し、ヌーランドの意にそぐわないEUを「Fuck EU」と発言をし、米国務省のサキ報道官はこの会話内容が本物であることを認め、EU側に謝罪した経緯もある。ロシア攻撃に関して最も積極的なヌーランドが更迭されたということは、停戦の動きに繋がる可能性がある一方、ロシアはウクライナの黒海を抑える勢いを見せており、自分から停戦する必要はなくなっている。ただ、もしトラに備えた話し合いへの動きも見せている。モルドバ情勢が波乱要因。同国東部の一部を実効支配している親ロシア派勢力の議会は2月28日、モルドバ中央政府の圧迫からの保護をロシア側に要請している。



ドル円:200日移動平均線の攻防戦

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

ドル円(週足)52週移動平均線

パウエル議長は下院金融委員会の議会証言で、「年内いずれかの時点での利下げ開始が適切」「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークにある可能性が高い」「今年の利下げの回数は経済指標次第」などと述べたものの、「2%目標の確信が深まるまで利下げは適切ではない」と早期の利下げ期待を牽制した。ただ、年内の利下げに言及したこともあり、米長期金利の低下やドル売りにつながった。

マイナス金利解除に向けた地ならし

また、6日に「日銀の3月決定会合で、一部出席者がマイナス金利の解除が妥当と意見表明する見通し」との報道も、円高要因となった。7日午前中には一部報道で、「一部の政府関係者は日本銀行が3月か4月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除することへの容認姿勢を示している」と報じられた。さらに同日に中川日銀委員が「日銀物価見通し実現の確度引き続き少しずつ高まっている」と述べている。


日銀の植田総裁も7日に2%の物価安定目標について、「実現する確度は引き続き高まっている」との認識を示した。実現が見通せる状況となれば、「マイナス金利政策などの大規模緩和策の修正を検討していく」と述べた。日銀関係者のマイナス金利解除に向けた地ならしとみられる発言が相次いでいる。


週末のドル円は、一時146円台へ大幅続落。雇用統計を受けて、賃金インフレ鈍化が意識され、米連邦準備理事会(FRB)が年前半の利下げに動きやすくなったと受け止められた。日銀が3月の金融政策決定会合でマイナス金利解除など政策の正常化に動くとの見方が強まっていることも円買い要因に。


今後のドル円は米国の経済指標と日銀の政策変更が意識される展開に。前回サプライズになった米CPIは今回は落ち着いた数字になる見通し。200日移動平均線~心理的節目145円の攻防戦。同水準が下値支持に機能するか、抵抗線に変化するかが焦点。



金:内外ともに、史上最高値更新

【今週見通し・戦略】

NY金(4月限)

JPX金(週足)とNY金(週足)

NY金(4月限)は、パウエルFRB議長が下院金融サービス委員会の公聴会で年内の利下げ見通しを示したことや、欧州中央銀行(ECB)がインフレ見通しを引き下げたことを受けて堅調となった。

イスラム組織ハマスはパレスチナ自治区ガザの停戦交渉の提案の草案を受け取ったが、ラマダン(断食月)を前にした戦闘休止の合意は難しくなっている。


前週末のNY金(4月限)は、3日連続で過去最高値を更新した。2月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比27万5000人増加と、市場予想を上回った一方、1月分は35万3000人増から22万9000人増へと大幅に下方修正された。失業率は3.7%から3.9%に上昇し、平均時給の前月比の伸び率は0.1%と市場予想(0.2%)を下回った。米労働市場の過熱感が薄れつつあり、賃金インフレ鈍化が意識され、米利下げ観測が再燃した。更に、バイデン大統領はフィラデルフィアで行われた選挙イベントで、「保証はできないが、きっとそれらの金利はもっと下がるはずだ。金利を設定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」と語った。歴代の米大統領は伝統的に連邦準備制度に関する発言を控えており、ホワイトハウスも政策決定について通常コメントしない。それだけ大統領選挙で追い込まれている証左か、単なる認知的失言かは不明。大統領選挙年における米国覇権や基軸通貨ドルの揺らぎは、金の長期的な買い要因。日銀が3月の金融政策決定会合でマイナス金利解除など政策の正常化に動くとの見方が強まっていることもドル売り・金買い要因に。

燻る地政学リスク

また、イスラエルVSハマスは、中東全域へ拡大のリスクが高まっている事に加え、旧ソ連圏の東欧・モルドバ情勢が緊迫している。沿ドニエストルの議会は28日、ロシアに「モルドバからの圧力が高まる中、沿ドニエストルを保護する措置」を取るよう訴える決議を採択した。ロシア国営メディアによると、同国外務省は決議を検討すると表明。「沿ドニエストルの住民の保護は優先事項の一つだ」とも強調した。ここに新たな戦線が開かれると、ロシアが黒海を完全に掌握するリスクと共に、NATOとロシアの全面戦争リスクも高まる。金は短期的急騰に対する調整はあっても、限定的であろう。

円建て金も、円高を海外相場高が相殺する構図となり、円高の影響は限定的となりそうだ。押し目買い方針継続。



【先物市場が織り込む利上げペース】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



【OPEC財政均衡価格】

財政均衡原油価格(2024)



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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  • 8月日本実質賃金 前回は予想に反して増加、2カ月連続プラスとなった。特別給与が大幅増加・9月米消費者物価指数 今回の予想は前年比が+2.3%と鈍化見込み。6カ月連続の伸び鈍化予想。 コアは+3.2%で横ばい見込み。

  • 10月のドル円は、石破氏が衆院選に向けて、これまでの姿勢を封印(豹変)したことに加え、強気の米経済指標が相次ぎ米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが優勢になった。

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