Weekly Report 2023年11月6日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2023年11月6日(月)

NSトレーディング 菊川弘之
2023年11月6日

週間展望(11/6~11/12)

週間予定:パウエルFRB議長講演、植田日銀総裁インタビュー

【週間スケジュール(11月6日~11月12日)】

今週は、先週と異なり、米国に目立った経済指標の発表予定がなく、やや材料不足感の中、パウエルFRB議長講演、植田日銀総裁インタビューなどが予定されているが、FOMCや日銀金融政策決定会合で述べられたこと以上の発言がなければ、影響は限定的か?


「イスラエルvsハマス」の影響もあり、欧米によるウクライナ支援に変化が出始めている。米NBCニュースは4日、複数の米当局者らの話として、ウクライナを支援する欧米諸国がウクライナ側と停戦について「ひそかに」協議を始めたと伝えた。

ウクライナがロシアに一定の譲歩をする見返りに、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナの安全を保障し、ロシアの再侵略を防ぐ案が浮上している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は従来、停戦はロシアによる占領地支配の既成事実化と将来的な再侵略を招くとしてプーチン露政権との交渉を否定しているが、ウクライナも欧米側の意向を無視できない見通しで、今後、停戦に向けた動きが表面化する可能性も。


ウクライナでは徴兵逃れと関連した汚職が深刻化。ゼレンスキー政権は各州の徴兵責任者である軍事委員を全州で解任し、組織改革を進めているが、状況は改善していない。

米政府は3日、ウクライナへの4億2500万ドル(約633億円)の追加軍事支援を発表した。この結果、議会が承認済みの資金枠「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」が枯渇し、今後は大統領の権限で米軍在庫から供与できる枠組みから小出しに支援を続けるとしている。



前週:米雇用統計を受けて米追加利上げ観測が後退

【雇用統計】

米国 非農業部門雇用者数と失業率

FOMC(23/12/13)での金利決定予想

米労働省が3日発表した10月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比15万人増加で、事前予想以上に減速した。

全米自動車労組(UAW)による三大自動車メーカでのストライキが影響した。

また、平均時給の前年比での上昇率が約2半ぶりの低水準となったほか、労働力の減少にもかわらず失業率は3.9%と、前月の3.8%から小幅上昇し、2022年1月以来の高水準を更新。


9月の非農業部門雇用者数は33万6000人増から29万7000人増に下方修正され、労働市場が失速しつつある可能性が示された。


米供給管理協会(ISM)が3日発表した10月の非製造業総合指数は51.8と9月の53.6から2ヶ月連続で低下し、5ヶ月ぶりの低水準となった。


米連邦準備理事会(FRB)は10月31日─11日1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合連続で金利据え置きを決定。

前週末の雇用統計や10月の非製造業総合指数を受け、現在のサイクルでの利上げは終了したと見方が強まっている。

米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は3日、米経済の現状況を踏まえると、一段の利上げはもやは必要ないことが示されていると述べた。 ボスティック総裁は「経済成長は緩やかで着実な軌道にとどまると予想している。このまま推移すれば、インフレ率を目標とする2%に引き上げるために現在の金融政策は十分に制約的だと考えられる」と述べた。



ドル円:心理的節目150円の攻防戦

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

ドル円は、10月30~31日に開催された日銀金融政策決定会合では、イールドカーブコントロール(YCC)の再修正の措置(長期金利の上限の1%を超える取引を認める)を決定したが、市場で想定されていたほどの大きな変更ではないとの見方も広がり、円売りで反応し、151.70台まで上昇した。


10月31日~11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事前予想通り、政策金利は据え置きとなった。2会合連続での据え置き。声明では、「経済活動が力強く拡大している」「金融環境の引き締まりが済活動の重石となる」と示すとともに、「必要に応じて政策金利の引き上げがありうる」と利上げの可能性が残されていることを示唆した。


米国債発行計画

これらイベントを受けた、円安ドル高の動きに対して、財務省の神田真人財務官は1日、介入を含めた様々な手段について「スタンバイ」と述べた。この発言をきっかけに、政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感が広がったことや、1日に米財務省が公表した2023年11月〜24年1月の国債発行計画で発行の増加規模が市場予想を下回ったことが、ドル円の上値を抑えた。


10月下旬に長期金利が16年ぶりに5%を上回った際は、財政赤字の拡大に伴う国債需給の緩みが金利上昇を促していた。


10月の米雇用統計で雇用者数の増加幅が市場予想を下回った。米追加利上げ観測が後退し、米長期金利が連日で低下した。日米金利差の縮小観測から円買い・ドル売りが優勢になった。


昨年のドル高局面と異なり、ドルインデックスは上値が抑えられており、ドル全面高となっていない。金利差拡大でここまで買われてきたドル円だが、市場の関心がドルや米国の不安定さに移行すると、ドルの上値は重くなるだろう。


11月中旬には、米つなぎ予算も切れる。政府機関の閉鎖問題が表面化してくると、ドルの信認低下が材料視される可能性も。150円を挟んだ保合い放れ待ち。



金:NY金、200日移動平均線で値固め

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

NY金(12月限)と米10年債利回り

国連総会は10月27日、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐる緊急特別会合で、人道回廊の設置や「人道的休戦」を求める決議案を採択した。採択に必要な投票全体(賛否のみ)の3分の2以上にあたる121ヶ国が賛成した。反対は米国やイスラエルなど14ヶ国だ日本、英国、カナダなど44ヶ国は棄権した。この決議には法的拘束力はなく、イスラエル軍による激しい攻撃が始まっている。


イスラエルのネタニヤフ首相は10月30日、ハマスとの停戦はないと断言し、ハマスとの戦争が「第2段階」に入ったと宣言した。

ブリンケン米国務長官は3日、イスラエルを再訪問し、人質解放などのため、攻撃の一時停止を働きかけたが、ネタニヤフ首相は会談後、「全ての人質が解放されない限り、一時的な停戦は受けいれない」と演説した。米国が求めたガザへの燃料搬入についても否定した。


また、4日には、イスラエル軍がガザ地区最大の病院付近で救急車を空爆。民間人の大虐殺に対し、米国のダブルスタンダードやイスラエルに対しての非難の声も増している。今回の中東の地政学リスクの高まりが、米国の覇権・ドルの基軸通貨体制の揺らぎの幅を大きくさせる流れだ。


地政学リスクの高まりに加えて、米議会でつなぎ予算案が可決されたものの、11月17日までの暫定予算であり、下院議長が決まったものの、年内に政府機関が一部閉鎖される可能性が高く、格下げリスクもある。米国の政治的な不安定さもあり、G7以外の国々のドル離れの動きは続いており、金の現物を手元に置くような動きも顕著になっている。

円建て金の優位性続く

米長期金利に頭打ち感が出ており、NY金は前回の利上げ打ち止めから利上げに向かった流れと同様、200日移動平均線水準での値固め後、史上最高値を目指す流れとなりそうだ。一方、円建て金は、小売価格の1万円が支持線に変化しつつあり、円高・円安いずれに振れても下げにくい地合いが続きそうだ。



【米雇用統計】

米国 ADPと米雇用統計



【米ISM非製造業総合指数】

米国 ISM非製造業景気指数



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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