Weekly Report 2022年12月05日(月)
2022年12月5日
週間展望(12/5~12/11)
このページで知れること(目次)
週間予定
前週Review:パウエルFRB議長講演で利上げ減速示唆
ドル円:ターミナルレートを探る展開
金:200日移動平均線を試す流れ
金ETF
週間予定
中国・上海市は5日からコロナ対策を一部緩和すると発表。地下鉄や屋外の公共の場所での陰性証明は不要となる。
前週末の米雇用統計は強気の内容だったが、市場の反応は限定的。利上げペースの減速観測を覆すのは至らず。米ISM非製造業景気指数(11月)や、米生産者物価指数(PPI)などで、12月FOMCでの0.5%利上げという市場コンセンサスを確認する流れか?
ロシアのペスコフ大統領報道官は2日、停戦に向けた米国との交渉の可能性について「国益を確保するためならプーチン大統領はこれまでも、そして今も交渉に応じられる」と述べた。
バイデン米大統領が1日、マクロン仏大統領との会談後の共同記者会見で、プーチン氏が戦争終結に関心を示せば「北大西洋条約機構(NATO)と相談し、プーチン氏と話をする用意がある」と述べたのに反応した。水面下の停戦協議の行方にも注意。
前週Review:パウエルFRB議長講演で利上げ減速示唆
【利上げ減速へ】
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11月30日、米ワシントンのブルッキングス研究所で講演した。利上げを減速する時期について「早ければ12月の会合になる」と表明。利上げペースを緩やかにすることは、過度の引き締めリスクを低減させるよい方法だとした。
FRBはすでに「かなり積極的な利上げを行っている」として、インフレの早期鎮静化のためだけに一段の大幅利上げで経済を破綻させることはしないと言明した。ターミナルレート(利上げの最終到達点)の推測は示さなかったが、9月の政策金利見通しで示した4.6%より「やや高く」なる可能性が高いと述べた。
0.5%の利上げがコンセンサス
FRBは11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、4会合連続となる0.75%の利上げを決定。週末の雇用統計は強気であったものの、CME FED WATCHでは、12月FOMC会合では、利上げ幅を0.5%に圧縮するとの見方がコンセンサスになりつつある。
来年前半までは、利上げは続くと見られるものの、利上げ幅は小幅にとどまると見られ、11月末のパウエルFRB議長講演が、来年の利上げ打ち止め・利下げ移行を先取りするきっかけとなった。
欧米共に来年の景気後退懸念は強く、原油や穀物価格の落ち着きが続くか否かが、次の焦点となりそうだ。
ドル円:ターミナルレートを探る展開
【今週見通し・戦略】
ドル円は、複数のFRB高官がインフレ抑制のために一段の利上げ余地があると指摘していたため、パウエル議長講演もタカ派発言をするとの観測が強かったが、ハト派内容であったとの受け止めから円買い・ドル売りが優勢になった。10月の米個人消費支出(PCE)の物価指数は、前月比0.2%上昇と市場予想(0.3%上昇)を下回った。前月の0.5%上昇からも上げ幅を縮め、インフレが沈静化していると意識された。
11月の米雇用統計が労働市場の強さを示し、発表直後は円売り・ドル買いが優勢だったが、米連邦準備理事会(FRB)が12月会合で利上げ幅を0.75%から0.5%に縮小するとの観測は後退せず、ドル円の上値は抑えられた。11月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比26万3000人増え、伸びは市場予想(20万人)を上回った。失業率は前月と同じ3.7%で、市場予想とも一致した。平均時給は前月比0.6%上昇し、市場予想(0.3%上昇)より強い内容だった。全体的に強気の内容だったものの、CME FedWatchでは、0.5%の利上げがコンセンサスとなっている状況に大きな変化はなく、98年高値と22年高値を重ね合わせた自己相似(フラクタル)も継続している
0.5%利上げがコンセンサス
ドル円の下値目標は、週足で見ると、2021年安値~2022年高値までの上昇に対する38.2%押しが133.0円。半値押しは127.25円。一目均衡表(日足)からは、V=133.05円、N=127.96円がカウント可能。200日移動平均線は、先週末段階で134.5円水準に位置する。まずは、200日移動平均線が下値支持として機能するか否かが焦点。維持できなかった場合は、心理的節目130円が意識される。
12月中旬に、変化が起こり易い雲のねじれ。12月8日が満月。
5日発表の米ISM非製造業景気指数(11月)や、9日に発表される11月の米生産者物価指数(PPI)などが控えるが、12月FOMC(13-14日)での0.5%の利上げ見通しに大きな変化は出ないだろう。FOMCで、来年の見通しが、どう変化するのかに市場の関心は移行する。
金:200日移動平均線を試す流れ
【今週見通し・戦略】
米金利上昇に伴うNY金の安値は、1600ドル台前半の安値で大底を確認した格好で、相場格言にある「底を付けた相場は、天井を打つまで高い」流れが継続している。
中国の新型コロナウイルス規制に対する抗議活動によるリスク回避のドル高を受けて売られる場面もあったが、パウエルFRB議長が利上げペース減速を示したことをきっかけに急伸した。
20年と22年の高値を重ね合わせたチャートでは、自己相似(フラクタル)の流れが継続。
ユーロドルは、200日MA突破
NY金は200日移動平均線が上値抵抗、ドル円は200日移動平均線が下値支持として、それぞれ機能している。なお、NY金との相関の強いユーロドルは、既に200日移動平均線を上抜いており、同水準を下値支持とした押し目買い基調に転じている。ロシア・ウクライナの停戦協議の行方にも注意したい。
11月の米雇用統計で労働市場の強さが示され、米長期金利が上昇した局面で軟化したが、前半で売りは一巡となり、下値を切り上げた。利食い売り先行だったが、安値を離れ、小幅安で取引を終えた。
2015年末から始まった前回の米利上げ局面では、利上げを嫌気して金の上値は抑えられたものの、実際のFOMCでの利上げで「知ったら終い・反発」と言う流れを繰り返しながら、利上げの最終局面にでは、利上げしても金価格は下がらず、利下げに転じて以降は、金価格の上げは加速していった。今回も前回の米金利引き上げ局面~引き下げ局面への移行と同様な値動きパターンが意識されそうだ。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。