Weekly Report 2022年10月17日(月)
2022年10月17日
週間展望(10/17~10/23)
このページで知れること(目次)
週間予定:共産党大会開幕
前週Review:11月G20サミットに向けて水面下で攻防
ドル円:150円の攻防戦、介入催促相場へ
金:1番底を(9月安値)を維持できるか否かが焦点
金ETF
週間予定:共産党大会開幕
中国共産党大会が開始。共産党大会の準備にあたった第19期中央委員会第7回全体会議(7中全会)のコミュニケでは、習近平総書記(国家主席)への忠誠を打ち出す概念「二つの確立」について、「全党が決定的意義を深く悟らなければならない」と強調。党規約にも明記される見通し。
ドル円は、介入催促相場。150円の攻防戦において、欧州通貨安に対するけん制と共に口先や覆面を含む介入に注意。米金利上昇の影響を受けて、米マクロ経済指標が落ち込みを見せるのか否かに注目。徐々に中間選挙へ市場の関心が移行も。
前週Review:11月G20サミットに向けて水面下で攻防
【政治的駆け引き】
米中間選挙まで1ヶ月を切り、米国内外で政治的な駆け引きが交錯している。
10月5日の「ニューヨーク・タイムズ」(民主党寄り)が、匿名のインテリジェンス筋の情報として「8月30日にモスクワ郊外で起きたダリヤ・ドゥーギナの殺害にウクライナ政府が関与した」との記事が掲載された。
この記事が出た時には、米インテリジェンス機関のウクライナに対する(暴走)警告説が主流であったが、「MK」(ロシア発行部数上位の日刊紙)は、ワシントンへの内部シグナルかもしれないと論じた。米中間選挙を前にバイデン政権が大きな賭けに出て、無謀な、判断に迷うような行動を取りかねないという懸念が、エスタブリッシュメント側に強まっており、ロシアへのさらなる圧力、挑発は危険だというシグナルが発せられたと説明。この後、ワシントンポストが「FBIからの情報でハンター・バイデンが近々脱税と不法拳銃購入で逮捕」と報じられ、その直後に、クリミア大橋の爆破が起き、ロシアによるウクライナへの報復攻撃が激化した。エスタブリッシュメント側が懸念する新たなカリブ危機(キューバ・ミサイル危機)が発生する可能性が急浮上してきた状況だ。
一方、停戦へ向けた動きも水面下も含めて行われている模様。戦争の長期化でロシアだけでなく、欧米側も深刻な兵器・弾薬の在庫不足となっている。オースティン国防長官は「兵器によっては、数週間~数ヶ月・数年かかるものもある。ウクライナにハイマースを18基追加供給するが、実際の生産・導入までに2~3年かかる」と述べている。米シンクタンクCSISは、ハイマース・ジャベリン・スティンガー・M777榴弾砲の部品の一部が入手困難で、在庫不足に陥っていると警鐘を鳴らしている。
11月のG20が直接交渉の場か?
ウクライナのゼレンスキー大統領には、停戦の決定権が事実上ないと想定されることから、停戦の鍵を握るのは、米ロの直接協議・首脳会談だ。現段階では、中国共産党大会・米中間選挙と言う2大大国の政治イベントが終えた11月のインドネシアで行われるG20首脳会議(サミット)が会談の候補。
ただ、米国史上最高齢のバイデン大統領の失言を報道官が火消しする頻度が高まっている中、「バイデン降ろし」とも感じられる報道(FBIが2020年大統領選直前に出たハンター・バイデンの中国、ウクライナからの莫大なカネの受領を、FBやTwitterに検閲圧力をかけた)が、民主党寄りメディアからも出始めている。中間選挙後に、急速にバイデン政権のレイムダッグ化が進むようなら、ロシアや中国は次期政権との交渉まで長期戦に持ち込むリスクもある。各地でプロパガンダ合戦が激しさを増す中、マーケットが金融情勢だけでなく、政治相場化するリスクにも注意したい。
ドル円:150円の攻防戦、介入催促相場へ
【今週見通し・戦略】
先週は、米消費者物価指数(CPI)を受けて米大幅利上げ観測が広がり、米長期金利が14年ぶりの高水準をつけ、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが強まった。9月介入時に付けた145.9円を上抜き、上げ加速。98年高値も上抜き、32年ぶりの高値更新となった。
9月のCPIでエネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比6.6%上昇と40年ぶりの高い伸びとなり、市場予想(6.5%上昇)も上回った。
ポンド安ドル高
14日に米ミシガン大学が発表した10月の米消費者態度指数59.8に上昇し、市場予想(89.0)も上回った。消費者の物価見通しを示す予想インフレ率は1年先が9月の4.7%から5.1%に5年先が2.7%から2.9%に上昇。米消費者の予想インフレ率の高まりなどを受け、FRBが大幅利上げを続けるとの見方から149円台を伺う展開となっている。トラス英首相が14日、減税策の一部撤回とクワーテング財務相の解任を明らかにした。英政治の混乱や経済政策を巡る不透明感から、英ポンド売り・ドル買いが強まった事も円安ドル高の一因。
米国はドル高容認姿勢
G20財務相・中央銀行総裁会議は、先進各国の利上げがもたらす影響に配慮することで一致したが、共同声明の発表なしで終了。G20はリーマン危機への対応をきっかけに生まれたが、国際協調の枠組みとしての機能不全を露呈している。イエレン米財務長官は14日、「市場で決まる為替レートがドルにとって最良だ」と発言。バイデン米大統領も15日、「ドル高を懸念していない。米国経済は力強い」と述べた。米国は、ドル独歩高を問題視しない姿勢を示しており、ドル円は150円を試す流れ。相場の最終局面では、オーバーシュート気味になる傾向がある点には要注意。ただし、これまでのジリジリした値動きから、スピード感・過熱感も出始めており、(口先・覆面を含む)介入と共に19日に発表される9月の住宅着工件数と、20日に発表される米中古住宅販売件数が、金利上昇の影響を受けて、予想以上の落ち込みを見せると、調整安のきっかけとなる可能性には注意。一方、150円を上抜けてくると、新たなステージに移行する。
金:1番底を(9月安値)を維持できるか否かが焦点
【今週見通し・戦略】
予想以上の米インフレ指標を受けて、NY金(12月限)は、2番底を試す流れ。
英政府の減税措置の一部撤回検討を受けてポンド主導でドル高が一服すると下げ一服となる場面もあったが、先週末には、10月のミシガン大学消費者信頼感指数が事前予想、前月を上回る強気の数字となると、1650ドルの節目を割り込んだ。終値で1650ドル割れとなったのは9月27日以来。9月安値~10月高値までの上昇に対する61.8%押し(1666.7ドル)を達成。引き続き、米金利上昇・欧州通貨売りが嫌気されている。
1番底を維持できるか否かが焦点
20年高値と22年高値を重ね合わせてみると、自己相似の強い状態が継続している。1番底とダブルボトムを形成できれば、年末にかけて下値切り上げパターンが想定される。
一方、自己相似形は、相関が崩れた場合、崩れた方向に大きく動意付くというアノマリーもあり、ダブルボトム形成に失敗なら、ワニの口が大きく開くようなパターンも想定される。終値ベースで、1番底(9月安値:1622.2ドル)を維持できるか否かが焦点。
NY金が3月高値を起点に下降チャネルを形成しているのに対して、JPX金は円安ドル高が海外安を相殺して、レンジ相場内での逆張りが続いている。仮に、介入等でドル高一服となった場合でも、今度は円高を海外金高が相殺する見通し。NY金が底割れとならない限りは、レンジ内の逆張りで対処したい。年内にNY金の底打ちが確認されれば、抵抗となっている8000円台を固める展開に移行する。逆張り主体の押し目買い方針で。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。