Weekly Report 2022年9月26日(月)
2022年9月12日
週間展望(9/26~10/2)
このページで知れること(目次)
週間予定:イタリア選挙結果判明。右派躍進
前週Review:円安加速も、介入で乱高下
ドル円:24年振りのドル売り介入も効果は限定的
金:ネックライン割れで、下値試しの流れだが。。
金ETF
週間予定:イタリア選挙結果判明。右派躍進
25日に行われたイタリア選挙結果が、日本時間26日のお昼頃に判明する。出口調査によると、中道右派連合が上下院で過半数の議席を獲得する勢い。
ウクライナ東部と南部の4つの州で行われている住民投票は、27日に終了。その後、ロシア編入にむけた関連法案が29日に議会で審議され、早ければ30日にも編入の手続きが行われる可能性があると報じられている。
編入以降、4つの州への攻撃は、ロシアへの攻撃とみなされる可能性は高い。
10月初旬は中国が国慶節で長期休場入りとなる。
前週Review:円安加速も、介入で乱高下
【日銀だけがマイナス金利政策】
連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決めた。一部で噂された1%の利上げではなかったものの、政策金利見通しは、2022年末で4.4%、23年末は4.6%となった。前回6月会合の予想(それぞれ3.4%、3.8%)から引き上げた。
22年末~23年末に政策金利を4.4%~4.6%まで引き上げた場合、逆算したドル円の上値は147円~150円水準が想定される。
150円の攻防戦
ドル円の長期チャートで歴史を振り返ってみると、1995年以降の保合い相場上限の攻防戦だ。レンジ上限では逆張りの売り(利喰い&新規)が予想されるが、150円を上抜いてくると、長い保合いからの歴史的な上放れとなり、「日銀の債務超過」に伴うデフォルト懸念・「悪い円安」が本格的に意識され、150~250円へのレンジアップも想定される。
スイス国立銀行(中央銀行)は22日、政策金利を従来のマイナス0.25%からプラス0.5%に引き上げた。利上げは2会合連続で、8年近くにおよぶマイナス金利政策を終了する。欧州中央銀行(ECB)は今年7月に、デンマーク中銀は9月にマイナス金利政策から脱却。今回のスイスの利上げで、マイナス金利政策を導入する主要中銀は日銀だけになる。イタリア選挙結果を受けたユーロ売り・ドル買いの動きにも注意したい。ちなみにCFTC建玉明細では、大口投機玉はユーロドルは、買い越しに途転となっている。
ドル円:24年振りのドル売り介入も効果は限定的
【今週見通し・戦略】
米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決めた。政策金利見通しは2022年末で4.4%、23年末は4.6%となった。前回6月会合の予想(それぞれ3.4%、3.8%)から引き上げた。来年末の水準は市場予想(4.4%程度)を上回り、想定よりタカ派的と受け止められた事に続き、22日の日銀金融政策決定会合で、従来の緩和策維持を示したことで、防衛線と見られていた145円を上回り、上げ加速となった。黒田日銀総裁会見後に、ドル円は145.90円水準まで急伸。その後、神田財務官が介入を行ったことを表明。24年振りのドル売り介入(9/16日付市場分析レポート「ドル円、98年との違いは?」参照)に、短時間で140.70円レベルまで急落した。ただし、鈴木財務相と神田財務官が夕刻に会見を開き、日本の単独介入であることが示されると、143円台乗せまで反発。週末には英財務相が大幅な減税を伴う景気支援策を発表し、市場では財政の持続可能性が疑問視され、英国債が下落、ポンド売りが広がった。更に22日には、プーチン大統領がウクライナ侵攻で部分的な動員令に署名。情勢緊迫化への懸念から、地理的に近接する欧州売り・ドル買いの動きもドル円に影響した。
ファンダメンタルズは円安ドル高
日経新聞によると、外貨準備を原資にする円買いドル売り介入は、外貨準備が介入可能な金額の上限となる。この点が、理論上は無制限に介入が可能な円売り介入とは異なる。「外貨準備は8月末時点で約1.29兆ドル(185兆円)程度あり、一見潤沢にみえるが、国際決済銀行(BIS)の2019年4月調査によると、日本の外国為替市場の1営業日あたりの平均取引高は約3700億ドル。ドル以外の取引も含む金額だが、単純計算で外貨準備はその3日分ほどしかない」。ドル円の動向を決める二大要因は「経常収支」と「日米金利差」と言われるが、ファンダメンタルズに反した単独介入・金融政策と矛盾した介入効果は限定的と見る向きが多い。24年前の介入は、当時の介入は米国との協調であり、ファンダメンタルズに合致していたことでトレンドが反転したが、今回は単独介入の間は効果は限定的で、147円~150円を試すのは時間の問題かもしれない。特に、150円を上抜けてくると、27年間続いたレンジを上放れることとなり、別次元のステージに入る。150円の攻防が重要。逆張りの大きなボックスが続くのか、新たな水準へ切り上がるのかの分岐点。1998年の147.57円、一目均衡表からは、N=149.29円、V=152.72円などが上値目標値。
金:ネックライン割れで、下値試しの流れだが。。
【今週見通し・戦略】
FOMCが想定以上のタカ派となった事で、米10年債利回りが6月高値を更新、ユーロドルもパリティを維持できず底割れした事で、NY金は7月安値を割り込み、一番底を探る流れとなっている。
ネックライン割れ
9月1日付け市場分析レポート「NY金、自己相似形(フラクタル)」で、『ネックラインを割り込んでくると、ダブルトップ完成から一時的に売り圧力が高まる可能性。』と指摘したが、引き続き、2011年高値を付けた時と自己相似の強い展開となっている。
一目均衡表(月足)からの下値目標は、E=1284.4ドル、V=1275.4ドルなどがカウント可能。ただし、自己相似(フラクタル)は、相関関係が崩れた場合、崩れた方向に大きく動意付く傾向があり、要注意。
日本を除く世界主要国で利上げが始まっており、景気後退やスタグフレーションリスクも高まっている。NYダウは、早々に3万ドルを回復できないとチャート形状は悪化、高値から20%減少で景気後退入りも意識される。23日から4ヶ所で、ロシアへの編入への賛否を問う住民投票が行われており、「欧米」VS「ロシア」へ戦争のステージが変わる可能性も。
イタリア議会選挙では、EUに批判的な右派政党を中心とする勢力が議会の過半数を獲得する見通し(日本時間26日昼頃に大勢判明)。金にとっては、本格的な買い要因となる事象が揃いつつあるJPX金(円建て金)は、NY金(ドル建て金)と比較して、チャート形状は崩れていない。200日移動平均線を維持する限り、押し目買い戦術を維持したい。円建て金の優位性は継続しそうだ。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。