金:調整終了、押し目買い再開②|【Weekly Report】週間予定
2024年5月20日
週間展望(5/20~5/26)
このページで知れること(目次)
週間予定:FOMCメンバーの発言予定。FOMC議事録
前週:インフレ鎮静化に伴う利下げ期待
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ち
金:調整終了、押し目買い再開
【4月の米小売売上高】
【CB米景気先行指数】
金ETF
週間予定:FOMCメンバーの発言予定。FOMC議事録
・日本消費者物価指数 先行指標とされる東京都4月CPIは高校授業料無償化が影響し伸びが大幅鈍化
・FOMC議事録 5月会合ではパウエル議長「次の動きが利上げとなる可能性低い」と発言
・日銀多角的レビュー 「過去25年間の経済物価情勢と金融政策」をテーマに内田副総裁が参加
・23日に日銀国債買い入れオペ 13日に続き再び減額なら金融政策「早期正常化」観測高まる ※17日は据え置きだった
・頼清徳氏が台湾総統に就任 対中政策の内容に関心集まる 中国は「台湾は中国の一部だ」と台湾を牽制
・FOMCメンバーの発言予定。 19日にパウエルFRB議長講演。20日はアトランタ連銀総裁、バーFRB副議長、21日はリッチモンド連銀総裁、ウォラーFRB理事、NY連銀総裁、およびボスティック総裁、ボストン連銀総裁、クリーブランド連銀総裁によるパネルディスカッション、22日にシカゴ連銀総裁、23日にボスティック総裁、24日にウォラー理事。
前週:インフレ鎮静化に伴う利下げ期待
【米金利低下】
4月の生産者物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比(季節調整済み)0.5%上昇で、市場予想以上に加速した。サービスと財の価格が大幅に上昇。市場予想は0.3%上昇。3月は0.1%下落に下方改定された。PPI前年比では2.2%上昇で市場予想と一致。
4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で3.4%と3月の3.5%から鈍化した。インフレ率が第2・四半期初に再び低下傾向に転じたことが示唆され、市場では9月の米利下げ期待が高まった。
CPI前月比前月比の伸びも0.3%と2月および3月の0.4%から鈍化。事前予想は、前月比0.4%上昇、前年比3.4%上昇。
4月の小売売上高(季節調整済み)は予想外に横ばいとなった。ガソリン価格の高騰で他の商品への支出が減り、消費の勢いが鈍化していることが示唆された。事前予想は0.4%増だった。前年比では3.0%増加した。3月分は0.6%増(速報値0.7%増)に下方修正された。
これらを受けて「ゴルディロックス(適温)相場」期待が高まり、米長期金利は4.3%台まで低下。NYダウは、史上初の4万ドル台に乗せた。
国内債券市場では、13日に日銀は国債買い入れオペ(公開市場操作)で残存期間5年超10年以下の買い入れ額を従来から減らした。17日の買い入れ額は、13日から据え置いた。
23日予定のオペで、17日比で減額がなければ需給の引き締まりが意識されやすくなる。
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ち
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、三角保合い上限の151円台が支持線として機能し反発後、半値戻しで上値が抑えられた。
米雇用統計を始め、弱気のマクロ経済指標が増えつつある中、米消費者物価指数や米小売売上高の結果を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB) による早期利下げ観測が台頭している。
これまではFRB高官のタカ派的な発言から、年内の利下げは1回程度といった見通しが広がっていたが、年内2回の利下げ(9月と12月)を織り込む格好となっている。
今週は、22日にFOMC議事要旨(4月30-5月1日)で、新たな材料が出てくるかが注目。経済指標では22日に米4月中古住宅販売件数、23日には米4月新築住宅販売件数と住宅関連指標。23日に米5月製造業PMI速報値、米5月サービス業PMI速報値などが注目。
FOMCメンバー発言
また、パウエル議長が20日早朝にジョージタウン大学の卒業式でスピーチ、20日にボスティック・アトランタ連銀総裁、バーFRB副議長、21日にバーキン・リッチモンド連銀総裁、ウォラーFRB理事、ウィリアムズNY連銀総裁など、FOMCメンバーによる発言予定が相次ぐ。投票権あるタカ派メンバーがCPIなどを受けてハト派寄りになるか否かが注目。
150-160円のレンジ相場放れ待ちが継続。
金:調整終了、押し目買い再開
【今週見通し・戦略】
4月に内外共に連日の史上最高値を更新してきた金相場は、イランとイスラエルの報復合戦が一服したこと(中東の地政学リスクの鎮静化期待)や、米利下げ観測の後退などが材料視され、日本のゴールデンウィーク(GW)にかけて調整入りとなった。ただし、大幅な値幅調整とはならず、NY金(6月限)は、2月安値~4月高値までの上昇に対する38.2%押しや、2023年10月安値を起点とした緩やかな上昇チャネル上限と重なる心理的節目2300ドル水準が下値支持帯として意識され、下値を切り上げてきた。円建てのJPX金も、GWの薄商いで付けた5月7日の長い下ヒゲ安値を起点に反発となっている。円安ドル高一服も、NY金相場高が相殺し、堅調推移を見せており、終値ベースで心理的節目12000円を上抜くと更に強気感が増すチャート形状だ。内外共に史上最高値更新は、時間の問題だろう。
米財政破綻の恐れ
GW中には、サウジを始めとする中東各国が米国から金塊引き出しの動きとの噂が中国SNS上で飛び交ったが、米国覇権・ドル基軸通貨体制の揺らぎと言う大きなテーマに変化はなく、中央銀行や中国の個人の買いも継続している。元世界銀行総裁(2019~2023年)のデイビッド・マルパス氏は5月、米国政府は高額の公的債務を抱えながら過剰な支出を行うために、早ければ2025年にも財政破綻しうると警告した。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)報告(4/30付)によると、1-3月期に個人などが保有する地金やコインは前年同期3%増の312.3トン。中国は同68%増、インドは同19%増。各国中銀や国際通貨基金(IMF)などの純購入量は289.7トン。第1四半期として過去最大だった。
今回と同様、調整安はすかさず買い直され、金がリード役になり、相対的な割安感が強い「銀・白金」も追随しながらスパイラル的に上昇する流れが来年にかけて継続しそうだ。
【4月の米小売売上高】
【CB米景気先行指数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。