内外共に連日の史上最高値更新|【Weekly Report】週間予定
2024年4月8日
週間展望(4/8~4/14)
このページで知れること(目次)
週間予定:ECB理事会・米CPI・FOMC議事録・中国CPI・PPI
前週:米雇用統計
ドル円:152円の攻防戦、ブレイク後の乱高下も
金:内外共に連日の史上最高値更新
【先物市場が織り込む利上げペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
週間予定:ECB理事会・米CPI・FOMC議事録・中国CPI・PPI
・8日に実質賃金、前回から減少幅が再拡大し23ヶ月連続でマイナスとなる見通しだが、
春闘大幅賃上げより第2四半期にプラス転換する見込み
・10日に植田日銀総裁の挨拶と国内企業物価指数。
植田総裁「物価目標達成の確度高まれば 追加利上げ検討」とインタビューで語る
・11日はECB理事会。6月に利下げ開始との見方が強まっている。
3月独CPIは3カ月連続で低下、ユーロ圏CPIは予想以上に低下した
・10日は米消費者物価指数、前回は前年比+3.2%と伸びが加速。
・米FOMC議事録が公表される、3月会合では今年3回の利下げ見通しが維持された
・中国消費者物価指数と生産者物価指数が発表される。
CPIは伸びが鈍化し、PPIは下落幅が拡大する見込み。
前週:米雇用統計
【米雇用統計】
米労働省が5日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は、前月比30万3000人増加し、市場予想平均の20万人増を大幅に上回った。予想レンジは15万-25万人増だった。賃金の上昇も続き、米経済が第1・四半期も堅調だったことが示された。
2月は前回発表の27万5000人増から27万人増に小幅下方修正された。第1・四半期の雇用増は月平均27万6000人と、昨年第4・四半期の21万2000人から増加した。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。2月は0.2%上昇。天候に関連した統計の歪みが後退。前年比では4.1%上昇、2月は4.3%上昇だった。
週平均労働時間は34.4時間。2月は34.3時間だった。
失業率は3.8%で、前月の3.9%から低下。26カ月連続で4%を下回り、1960年代後半以来の長さとなった。
米議会予算局(CBO)は1月、24年の流入数の推計を一気に330万人に引き上げた。雇用統計でも移民を示す国外生まれの働き手が急増している。移民の大量流入で、雇用者数の伸びが想定以上に大きくなるものの、賃金の伸びは弱まっているという最近の傾向と合致する。
ドル円:152円の攻防戦、ブレイク後の乱高下も
【今週見通し・戦略】
ドル円は、米国の金利は当面、高止まりする一方、日本の金利引き上げも当面はないとの思惑は強く、日米金利差は当分の間、縮小しないとの観測がドル円の下値を支えている。一方、米ISM製造業景況指数など強気の米マクロ経済指標やFRB当局者発言を受けて、米利下げ観測はやや後退気味だが、本邦当局による介入警戒感も強く、心理的節目152円を上値抵抗とした三角保合い放れ待ちが続いている。
三角保合い放れ待ち
先週、アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、インフレ減速が想定よりも緩やかになっており、「年内の利下げは1回」「利下げ開始は10-12月期が適切」との見解を示した。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、経済が堅調に推移すれば、高金利下でも景気を維持できるとの認識を示し、「今後、インフレ率が下げ止まった場合は、年内に一度も利下げしない可能性がある」と述べた。
仮に、ドル円が152円台に乗せた場合、テクニカル的な買いが一気に加速する可能性はあるものの、本邦当局の介入も予想されることからブレイク後の乱高下が予想される。一目均衡表からの上値目標は、V=154.2円。 125円水準を上抜けた場合、終値ベースで152円台を維持するか否かが焦点となる。週足ベースでは、前回の152円水準の攻防は、4~5週間目に決着が付いた。今回は4週目に当たり、来週にかけて、いずれかに抜ける可能性には注意したい。今週は米米消費者物価指数などを受けての米金利動向に加えて、ラマダンも明け、イランのイスラエルへの報復攻撃も波乱要因。植田日銀総裁は朝日新聞のインタビューで、円安について「為替の動向が賃金と物価の循環に、無視できない影響を与えそうなら金融政策として対応する理由になる」と踏み込んだ発言をしている。
6週目以降に放れの時期がずれ込むと、それ以降のもち合いが長く続けば続くほど、次に放れた際の値動きは大きくなる。この場合は、GW中の値飛びリスクの可能性が高まる。
金:内外共に連日の史上最高値更新
【今週見通し・戦略】
先週は、米金利高を嫌気してNY株価は下落したが、内外共に金価格は、連日の史上最高値を更新した。
地政学リスクの高まり
パレスチナ自治区ガザでの紛争を受け、イスラエルはイランの代理勢力(ハマス・ヒズボラ・フーシーなど)と、これまでも散発的に戦火をまじえてきたが、公館(大使館)を標的にした直接攻撃は異例。敵対勢力との紛争の緊迫度が増し、周辺国を巻き込み中東全面戦争に広がる恐れが、金利高にも関わず金が史上最高値を更新している一因だ。
前週末のNY金(6月限)は、雇用統計で、米労働市場が好調を維持していることが示され、年央の米金利引き下げ期待が後退したことから売り優勢となったが、手仕舞い売り一巡後は、地政学的リスクからの買いもあり、史上最高値を更新した。
金利高にも関わらず、金が上場来高値を更新しているもう一つの理由は「インフレ再燃」・「スタグフレーション懸念」だ。今後の原油・穀物市場の行方次第では、株式市場で期待を込めてコンセンサスになっている「高金利下でも景気後退は起こらない米国経済の強さ」と言うシナリオがひっくり返る可能性もあろう。
ただ、52週移動平均線との乖離率拡大や1000円ごとの節目を上抜くスピード感から、短期的な買われ過ぎ感も強く、テクニカル的な調整も予想される点には注意。
それでも、ラマダン明けのイスラエルによるラファ攻撃の可能性や、異常気象に伴う穀物高リスクなどもあり、金の調整安は、すかさず買い直されそうだ。利食いや短期売買は良いが、単なる値頃感で新規売りすると踏まされる相場格言の「買えない相場は強い(高い)」を地で行く展開だ。要注意は、週末に飛び込んできたイスラエル撤退報道。
【先物市場が織り込む政策変更ペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。