Weekly Report 2023年10月30日(月)
2023年10月30日
週間展望(10/30~11/5)
このページで知れること(目次)
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・雇用統計
前週:国連緊急特別会合で「人道的休戦」決議案を採択
ドル円:心理的節目150円の攻防戦
金:NY金、200日移動平均線で値固め
【米PCE】
【ミシガン大学消費者信頼感指数】
金ETF
週間予定:米FOMC・日銀金融政策決定会合・雇用統計
10月31日、11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)。
据え置き見通しが市場コンセンサス。サプライズはないと思われる。10月に入って発表された米国の主要マクロ経済指標は、おおむね強気のものが多いが、中東の地政学リスクや、米政府機関閉鎖懸念などから追加利上げ期待は高まっていない。
一方、波乱含みが日銀金融政策決定会合。金融政策の現状維持が見込まれているものの、
①2024年の賃上げ見通しを上方修正したこと、
②経済予測の前提となる為替レートを1ドル=140円から145円に変更した結果、当面の物価上昇率の減速ペースが鈍化する見通しとなったこと、
③10月2日公表の、9月21日、22日に開催された金融政策決定会合の発言内容をまとめた「主な意見」で、異次元緩和からの出口を巡る活発な議論がみられたこと
④10月の展望レポートでは2023年度物価見通しが3%近くへ上方修正され、2024年度は2%「以上」への引き上げが視野に入っている(10/17付Bloomberg)こと
などから政策変更の可能性が浮上している。
10月22日に日経新聞が報じた「YCCの上限再拡大」や、形骸化しているETFおよびJ-REIT買い入れ停止と、マネタリーベースの拡大方針を修正・削除するなど金融緩和の度合いを落とす可能性が指摘されている。
この場合、異次元緩和の終了により、日本国債の利回り上昇、日本株の下落、ドル安・円高の進行が予想されることから、日銀が長期金利急騰時の柔軟な国債買い入れ姿勢を継続するか否かも注目したい。
前週:国連緊急特別会合で「人道的休戦」決議案を採択
【パレスチナ問題】
国連総会は27日、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐる緊急特別会合で、人道回廊の設置や「人道的休戦」を求める決議案を採択した。採択に必要な投票全体(賛否のみ)の3分の2以上にあたる121カ国が賛成した。
反対は米国やイスラエルなど14カ国だけ。日本、英国、カナダなど44カ国は棄権。
同決議案はアラブ諸国が作成しヨルダンが提案した。休戦や人道回廊の設置に加え、イスラエルに「占領国」としてパレスチナ自治区ガザ北部の住民や国連職員などに対して出した避難命令の撤回を求める。
この決議には法的拘束力はなく、パレスチナ・ガザ地区の複数の地点でイスラエル軍による激しい攻撃が始まっている。従来の空爆に加えて、海上や地上からの攻撃が観測され、ヨルダン外相はイスラエルによる地上戦が始まったとの認識を示した。
26日には米軍がシリア東部でイラン関連施設を空爆した。米軍の中東地域での空爆はハマスがイスラエルを奇襲攻撃した7日以降では初めて。親イラン武装勢力によるシリアやイラク駐留米軍への攻撃が活発になっている。
ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルは25日、同地区の状況を「国際人道法違反」だとした国連のアントニオ・グテーレス事務総長に対し、改めて辞任を要求した。イスラエルは国連関係者への査証(ビザ)発給を止める動きも見せている。グテーレス氏は24日の安全保障理事会で、ガザ地区のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃を明確に非難しつつ、「何もない状況から急に起こったわけではない」と発言。「パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた」とした。
死傷者数を比較すれば一目瞭然にパレスチナ側の被害が大きい。今回の国連緊急決特別会合を見ても分かるよう、世界の多数は、西側先進国ではないことが証明されてきている。英米のダブルスタンダードの弊害が表面化している。イスラエル、並びに、これを支援している米国に対して、距離を置く国が増えている。
ドル円:心理的節目150円の攻防戦
【今週見通し・戦略】
ドル円は、米10年債利回りが節目の5%を上回る場面があり、心理的節目150円を上抜いてきた。三角保合い上放れで150円が下値支持として意識され、150.70台まで上昇、年初来高値を更新した。
米新築住宅販売件数の大幅な伸びや第3四半期の米GDP速報値の上振れなどがタカ派的な米金融政策が続くことを連想させ、長期金利上昇の要因となった。
日銀の金融政策修正も
ただ、本邦当局による円買いの為替介入への警戒感が強い中、日銀金融政策決定会合やFOMCを控え、日銀が政策を修正する可能性も意識された。大きな材料はなかったものの、米長期金利5%乗せでの達成感もあり、週後半には米債利回りが低下した。米FOMCや日銀決定会合などを控えて、ポジション調整もあり、ドル円は150円割れで週末を終えた。
中東の地政学リスクの高まりも、相対的に低リスクとされる円買いにつながった。イスラエル軍の報道官が27日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を拡大すると述べた。
米10年債の利回りがリーマン危機(2007年)以来初めて5%を上回ったが、連動して米国債からジャンク債まで長期金利が上昇しており、低金利で延命していたゾンビ企業も、低コストで追加資金を調達できなくなってくる。
昨年のドル高局面と異なり、ドルインデックスは上値が抑えられており、ドル全面高となっていない。金利差拡大でここまで買われてきたドル円だが、市場の関心がドルや米国の不安定さに移行すると、ドルの上値は重くなるだろう。今週は、日銀金融政策決定会合が波乱要因。週末は雇用統計もあり、日本は連休となる。連休明けの波乱にも要注意。
金:NY金、200日移動平均線で値固め
【今週見通し・戦略】
ニクソンショック(1971年8月)から50年の節目の2021年に、アフガニスタンからの撤退など中東での米国の存在感が落ち込んだ流れに続き、第4次中東戦争勃発(1973年10月)から50年の2023年、イスラム組織ハマスが、イスラエルに対する攻撃が行われたことをきっかかけに、安全資産の金が急反騰となっている。2007年以来の金利上昇を嫌気して上値が抑えられていたNY金だが、足元は金利上昇にもかかわらず、上昇している。
イスラエル軍が、地上侵攻をともなう大規模攻撃にいつ踏み切るのか、緊迫した状況が続く中、今回の中東の地政学リスクの高まりが、米国の覇権・ドルの基軸通貨体制の揺らぎの幅を大きくさせる可能性は高いだろう。
地政学リスクの高まりに加えて、米議会でつなぎ予算案が可決されたものの、11月17日までの暫定予算であり、下院議長が決まったものの、年内に政府機関が一部閉鎖される可能性が高く、米債務残高は急増で、格下げリスクもあることが、金利上昇が金売りに繋がっていない背景だろう。
金現物を手元に置く動き
ウクライナ戦争と中東戦争の2正面作戦・支援に対する反対が共和党から強く出ており、米内政の不安定さが表面化する可能性も高い。
米国の政治的な不安定さもあり、G7以外の国々のドル離れの動きは続いており、金の現物を手元に置くような動きも顕著になっている。
債務問題も抱え、米国の覇権・ドルの基軸通貨体制の揺らぎに変化はなく、仮に大規模地上戦開始に伴う急伸に対する調整はあっても金の押し目買いが継続するだろう。
【米PCE】
【ミシガン大学消費者信頼感指数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。