Weekly Report 2023年9月19日(火)
2023年9月19日
週間展望(9/18~9/24)
このページで知れること(目次)
週間予定:米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀金融政策決定会合
前週:資源災害が多発
ドル円:米ドットチャートに注目
金:悪い金利上昇が材料視されてくるか?
【ミシガン大学期待インフレ率】
【米CPI・PPI】
金ETF
週間予定:米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀金融政策決定会合
米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現行の5.25-5.50%で維持される見込み。利上げが実施されればサプライズだが可能性は低い。
注目は年内の利上げ動向で、声明やパウエル議長会見に注目が集まる。更に、四半期に一度示されるFOMCメンバーによる経済見通しの中でも、特に年末時点での各メンバーの政策金利見通しをドットで示したドットチャートが注目。
前回6月のFOMCで示されたドットチャートでは、2023年末時点での中心的な見通しは5.50-5.75%となっており、3月時点での5.00-5.25%から0.5%引き上げられた。2024年末時点での見通しは4.50-4.75%が中央値で、3月時点の4.25-4.50%から0.25%引き上げられた。
2023年末に関して、5.25-5.50%が大勢になり、利上げ打ち止め期待が高まるか否かが焦点。今回から参加するクーグラー理事、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、7月に退任したブラード・セントルイス連銀総裁の代理で参加するパエーゼ第一副総裁(暫定総裁)がどのような見通しを示すかが注目。
前週:資源災害が多発
【リビア洪水】
リビア東部を襲った大洪水の被害について国連人道問題調整事務所(OCHA)は16日、最も被害が大きい都市デルナで、死者が約1万1300人、行方不明者が1万100人に上ると発表。
リビア東部では暴風雨でデルナを流れる川の上流にあるダム2つが決壊。大量の水が11日にデルナを襲った。世界気象機関(WMO)は、地中海のハリケーンを指す「メディケーン」という低気圧による大雨が原因だとしている。
リビアは2011年にカダフィ政権が崩壊後、内戦状態に陥った。西側が承認する政権が西部の首都トリポリにある一方、東部にはロシアなどが後ろ盾になっている軍事組織が主導する政権がある。
対立する2つの政府が併存する分裂状態で、インフラの整備や更新は滞っている中、救助や支援受け入れの足かせになる恐れがある。
スーパー・エルニーニョ現象の影響もあり、世界的に大規模な自然災害が頻発する中、世界各地で紛争や不安定な政治情勢が被害の拡大につながっており、資源高が長期化する恐れがある。
米国の覇権の揺らぎが起きている中、米国が中露と対立する時代に移行しつつあり、G7と異なり、BRICSやグローバルサウス各国は資源国が多い。
世界が多極化方向に向かう中、異常気象も加わり、インフレの高止まりが続く時代も継続しそうだ。
ドル円:米ドットチャートに注目
【今週見通し・戦略】
読売新聞の植田日銀総裁への単独インタビュー記事を受けて、ドル円は一時1ドル=145円90銭水準まで下落。FRBウオッチャーで知られる米WSJのニック・ティミラオス記者が、10日付の記事で、FRBが利上げに慎重になりつつあるとの見解を示したこともドル売り要因となった。ただし、今回の日銀総裁発言では、マイナス金利解除について幾分踏み込んだ発言をした一方、「物価目標の実現にはまだ距離があり、粘り強い金融緩和を続ける」、「(物価が)下振れした時の対応は非常に難しい。下振れリスクを重視せざるを得ない」とも述べており、必ずしも緩和修正の強いシグナルを発した訳ではなく、政策に自由度を確保しておきたい考えから、早期の金融政策の早期正常化の意図はないとの見方から、円高ドル安は限定的。
米消費者物価指数は強弱内容が交錯する結果となった。コア前年比は落ち着いた動きを見せたものの、エネルギー価格の上昇などを背景に総合は前月比、前年比ともに伸びが加速した。予想でも伸びの加速は予測されていたものの、インフレ率の高止まりにより、米高金利継続との見方からドルの下値支持要因に。
8月の米小売売上高や8月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回り、米景気の底堅さが意識された。米長期金利の上昇による日米金利差の拡大が材料視された。欧州中央銀行(ECB)の利上げ打ち止め観測から対ユーロで円が買われたため、ドル円の動きは小動きとなった。
日米金融政策会合
今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)や、日銀金融政策決定会合が注目。米政策金利据え置きがコンセンサスで、注目は声明文やパウエル議長の記者会見に加えて、政策金利見通し(ドットチャート)やGDP、インフレ率など経済見通しが注目。これらの見通しが据え置かれるのか、上方修正、あるいは下方修正されるのかが焦点。日銀金融政策決定会合も金融政策は現状維持とみられるが、今後の政策変更に含みを持たせる発言があるか否かが注目。円安ドル高に大きく振れた場合、介入の有無にも注意したい。
テクニカル的には、145-150円のレンジを放れた方向に、短期的には動意付きそうだ。昨年の円安局面との違いは、ドル全面高ではない。ドル円のレベルほど、ドルインデックスは強い訳ではない。米金利上昇に対する悪影響も意識されてきた感触。
金:悪い金利上昇が材料視されてくるか?
【今週見通し・戦略】
先週のNY金相場は、堅調な米経済指標を受けてドル高に振れたことを受けて調整継続。CPIは強弱交錯で、各市場で反応はまちまちの中、やや乱高下。
一方、JPX金先限は、海外安を円安が相殺する展開が継続。週末の夜間立ち合い(9/19日付)で上場来高値を更新した。国内現物小売価格は、1g=1万円を維持した。
引き続き、円建て金の優位性は継続している。足元は円建て金が強く、高過ぎると感じるかもしれないが、長い歴史の中では、円建て金の相対的な割安感が強い。この長期的な割安感の調整が起きているため、円建て金の優位性は、しばらくは継続しそうだ。
NY金(12月限)は、6月高値を起点とした下降チャネル継続。200日移動平均線が上値抵抗として機能しているものの、注目は前週末に米金利が上昇したにも関わらず、急伸したこと。前営業日には、短いながら下ヒゲ陽線引けしており、短期的な底打ち感が高まっている。
悪い金利上昇ならNY金は上昇へ
先週レポートで『ここから追加利上げするとなれば、「米長期金利上昇→ドル高」とはならず、むしろ先々の景気悪化懸念から長期金利低下・ドル安・NY金買いにつながるだろう。』としたが、徐々に悪い金利上昇が意識されてきた証左であろう。
19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金利据え置きが市場コンセンサス。足元の米マクロ経済指標は強弱混交だが、原油市場が年末に向けて、過去最大の供給不足観測から上値追いが続いており、各国のインフレは目先は沈静化したように見えても、高止まりからインフレ再燃の可能性は高いだろう。
【ミシガン大学期待インフレ率】
【米CPI・PPI】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。