Monthly Report 2023年8月
2023年8月1日
~8月1日~8月31日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:金利差VSドル離れ(BRICS) ドル円(長期)・CFTC建玉明細・ドル円(日足)
金:金の裏付けあるBRICS通貨誕生か? NY金&JPX金(週足)・NY金&ユーロドル(日足)
8月注目スケジュール:ジャクソン・フォール会合・BRICS首脳会議・ウクライナ停戦会議
ドル円:金利差VSドル離れ(BRICS)
ドル円(長期)・CFTC建玉明細・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
7月の日米欧の中央銀行ウィークは、FOMC・ECB理事会は、事前予想範囲内で、ノーサプライズ。日銀金融政策決定会合は、イールドカーブ・コントロール(YCC)の変動幅の上限である+0.5%を超えて10年国債利回りが上昇することを容認する、運用の柔軟化策を決めるサプライズとなった。ドル円は、「YCC修正案を議論する」との報道から、141円近辺から138円台後半まで急速に円高が進行したが、日銀金融政策決定会合後、10年物国債利回りが急騰したことを受けて、日銀は政策会合会議の翌営業日に、2月22日以来の臨時の国債買い入れオペを実施。金利上昇を容認しない姿勢が確認されたことで、円安ドル高が加速した。
ドル円は、6月高値~7月安値までの下げ幅に対する61.8%戻しと重なるネックライン(7/21高値)を上抜き、7月14日安値と7月28日安値とのダブルボトム完成。1月安値を起点としたエリオット波動を形成しており、5波動が1波動と同値幅上昇すると仮定すると、上値は147.92円がカウント可能。一目均衡表からは、N=152.68円、V=152.92円などがカウント可能。
まずは、6月高値を起点とする下降トレンドを上抜けるか否かが焦点。抜けきれないと、1月安値を起点とした上昇トレンドとの三角保合い放れ待ちへ移行する。本邦当局は、150円を上抜けるような悪い円安を避けたい意志も明確にしており、米国から介入の許可も得ている模様で、三角保合いで、ジャクソンホールや、BRICS首脳会議を待つような展開か?金利差という足元の材料とドル離れという大きなテーマとの綱引き相場。
過去の季節傾向では、8月は円高ドル安傾向が強い時間帯(33戦14勝19敗)。月初に円安ドル高に振れていても、月末には景色が一変している可能性も。大口投機玉の円売り越しが10万枚を超えると、過熱感が意識されやすい。
~ドル円・CFTC建玉明細~
【ドル円(長期)】
【CTFC建玉明細】
【ドル円(MAC)】
金:金の裏付けあるBRICS通貨誕生か?
NY金&JPX金(週足)・NY金&ユーロドル(日足)
【今月見通し・戦略】
昨年から米長期金利が4%を超えるとNY金は売り圧力を受けるものの、結果として、金利上昇を嫌気して付けた安値が買い場となっている。2023年7月の金利上昇局面も4%超への金利上昇を嫌気したが、4%越えの金利上昇に対する耐久力は高まっており、心理的節目1900ドルが下値支持となり、過去の4%超時の下げと比べても高い値位置での底打ちとなっている。先月末の4%超の金利上昇局面でも、金の下値は限定的。押し目は、素早く買い拾われた。
6月の米個人消費支出(PCE)物価指数と4~6月期の米雇用コスト指数はともにインフレの鈍化基調を示し、米利上げサイクルの終わりが近いとの見方が改めて広がっているが、米景気のソフトランディング観測が高まれば、良い金利上昇からNY金は緩やかな上昇トレンドへ。一方、インフレ再燃からハードランディングシナリオが高まれば、悪い金利上昇から金利上昇・NY金上昇が同時に起こる。このシナリオの場合、金の上昇は早く・大きくなるだろう。
BRICSが8月に開く年次定例サミットで、米ドルに替わる非米側の基軸通貨としてBRICS共通通貨の創設を発表する模様。これは、世界的な決済におけるドルの役割を弱め、米ドルの基軸通貨体制に揺らぎが意識されるだろう。
NY金相場と金星逆行期の関係を見ると、逆行期は保合いが続くが、終了と共に、直近2回の場合、大きく上放れている。円建て金の優位性も継続している。早ければ、8月にも1g=1万円相場が実現しそうだ。
~NY金(金星逆行)・NY金(満月・新月)~
【NY金(金星逆行期)】
【NY金(満月・新月】
【NY金&米10年債】
8月注目スケジュール:
ジャクソン・フォール会合・BRICS首脳会議・ウクライナ停戦会議
サウジで5-6日に、ウクライナに関する会合を開催される。米国も参加予定で、穀物や原油についても材料が出る可能性もあり、要注意。米国とサウジの距離感に変化が出るか否かにも注意したい。18日にはキャンプデービッドで日米韓の首脳会談。
24~26日には、米国で経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催される。同会議は、1978年に始まった会合で、世界の中央銀行総裁や経済学者、エコノミストらが参加。経済・金融に関する重要テーマについて議論が交わされることから、過去には、同会議で金融政策に関する重要なメッセージが発信され、株価や為替が大きく変動したケースも多い。
今年は、米覇権・ドルの基軸通貨体制の揺らぎという観点からは、22-23日に開催が予定されているBRICS首脳会議が最大注目。
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。