Weekly Report 2023年6月26日(月)
2023年6月26日
週間展望(6/26~7/2)
このページで知れること(目次)
週間予定:米個人消費支出(PCE)デフレータ
前週Review:ワグネルがモスクワ進軍停止、ベラルーシ仲介
ドル円:三角保合い上放れ
金:8月22日、新通貨体制発表か?
【米PMI】
【米CPI・PCE】
金ETF
週間予定:米個人消費支出(PCE)デフレータ
30日の米個人消費支出(PCE)デフレータが注目。
13日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%と、4月の同+4.9%から大きく鈍化。食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+5.3%と、4月の同+5.5%から鈍化している。ガソリン価格が前年比-19.7%と4ヶ月連続で下落する中、下落率が最も大きくなった。食料品は前年比+6.7%と、4月の同+7.7%から伸びが鈍化。伸びの鈍化は9ヶ月連続。住居費が前年比+8.0%と小幅ながら2ヶ月連続で伸びが鈍化した。また、医療サービスが4月の前年比+0.4%から同-0.1%と低下しています。
今回の米PCEデフレータは前年比+3.8%と4月の同+4.4%から大きく鈍化見通し。実際にそうなれば約2年ぶりに4%を下回ることになる。ただ、米金融当局が重視するPCEの総合とコア価格指数いずれも当局の2%目標を依然大きく上回って推移しており、コア指数に関しては前年比+4.7%と4月と同水準見通し。
ガソリンの低下や食品の伸び鈍化はPCEにも影響が強く出る。コア部分に関しては、CPIよりも全体に占める割合(ウェイト)が大きい医療サービスのマイナスが響いてくる可能性がある一方で伸びが鈍化した住宅部門のウェイトがCPIよりも小さい影響が出てくる可能性も。
事前予想に反してコア部分の伸びが4月を超えてくるようだと、利上げ期待が強まり、ドル高となる可能性も。
この場合、本邦当局からの牽制の度合いが焦点になる。
前週Review:ワグネルがモスクワ進軍停止、ベラルーシ仲介
【武装反乱ひとまず収拾】
「ロシア国民への呼びかけ」
2023年6月24日 午前10:00(モスクワ時間、日本時間同日16:00)
プーチン大統領の演説主旨は以下の通り。
ロシアは自国の未来のために極めて苦しい戦いを行っている。西側の軍事、情報の全てのマシンがロシアに対抗している。
これは国民の命運を左右する戦いである。この戦いにはあらゆる勢力が一丸となり、結束し、責任をとることが求められる。
団結を裂く行動は、事実上、前線で戦う戦友に対する背信である。今、ロシアは裏切りに直面している。途方もない野心と私利私欲が反逆につながった。意図的に裏切りの道を歩んだ者は全員が処罰は逃れようがなく、法の前にも国民に対しても答えねばならない。
ロシア軍とその他の国家機関は必要な命令を受け、ロストフ・ナ・ドヌーの状況安定化のために断固とした行動をとる。反乱を組織した者はロシアを裏切った。ゆえにその責任を取ることになる。
ロシア大統領として、最高司令官として、ロシア国民として、私は国を守り、憲法秩序、国民の生命、安全、自由を守るために全力を尽くす。
私たちは、私たちにとって大切で神聖なものを擁護し、祖国とともにどんな試練も乗り越え、さらに強くなっていくと私は信じる。
出典:http://kremlin.ru/events/president/news/71496
ドル円:三角保合い上放れ
【今週見通し・戦略】
米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)などに続いて、英中銀(BOE)、スイス中銀なども利上げを実施。英国ではインフレ率の高止まりから、BOEは22日の英金融政策委員会(MPC)で0.5%の大幅利上げを実施、年内複数回の利上げが見込まれている。
各国中銀の金融政策の違い
一方で、日銀の植田和男総裁が21日に金融緩和を継続していく姿勢を改めて示し、ドル円やクロス円は全般に上値を伸ばす展開に。日本と各国中銀のスタンスの違いが外貨買い/円売りの動きにつながっている。
パウエルFRB議長の議会証言では、年内の追加利上げを示唆した。「FOMCメンバーのほぼ全員が一段の利上げが必要と予想している」と述べ、利上げ見送りにより、さらに情報を見極めるとの考えを強調した。
さらに「利上げのスピードは重要でない」として、緩やかな利上げを示唆した。
22日にFRBのボウマン理事が「インフレ率を2%まで低下させるために一段の利上げが必要」と述べた。23日にはサンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、年内あと2回の利上げ予想について「現時点で非常に妥当な見通しだ」と述べた。これらFRB関係者発言を受けて、金融引き締めが長期化するとの見方から、ドル円は2022年10月21日高値~2023年3月24日安値までの下げ幅に対する61.8%戻し(142.49円)~心理的節目143円を達成。
CME FEDウォッチでは、7月のFOMCでの政策金利の据え置き確率が23%前後、0.25%の利上げ確率は77%前後となっている。
9日移動平均線(赤点線:141.6円)~21日移動平均線(青実線:140.5円)を下値支持線として、心理的節目144円~145円を試す流れ。
今週は、30日の米5月個人消費支出(PCE)デフレータが注目される。前年比やコア前年比で予想から上振れするようだと、利上げ継続姿勢が再確認されてドルの下値を支える要因となりそうだ。一方、前週末には鈴木財務相から口先牽制(急激な為替変動は望ましくない。為替動向を注視している)が出ており、本邦当局者の牽制発言には注意。更に、ロシア情勢が急変しており、地政学リスクの高まりにも注意したい。
金:8月22日、新通貨体制発表か?
【今週見通し・戦略】
中央銀行の需要は、2020年に過去10年の最低値を記録した後、力強く回復。2022年の同セクターの買い越しは1000トンを超え、2年連続で前年を上回った。13年連続の買い越しとなっただけでなく、年間需要は1950年までさかのぼるデータの中で最高記録となった。ロシアによるウクライナ進行に伴う米国の制裁で、ドル資産保有リスクを感じたG7以外の中央銀行が、今年に入っても外貨準備における金保有を増やしている。そういった中、国防総省が実施した初の金融戦争ゲームの進行役を務め、「通貨戦争」、「ドル消滅」などのベストセラー作家でもあるジェ-ムズ・リカーズが、8月22日、1971年以来の国際金融における最も重要な政策が発表される、と指摘した。
新通貨体制発足か?
これは、世界的な決済におけるドルの役割を弱め、最終的には米ドルから基軸通貨の地位にとって代わる可能性のある金の裏付けを持った新通貨登場だ。金で裏打ちされた新通貨の導入、決済通貨としての急速な採用、基軸資産通貨としての段階的な使用という一連の流れは、2023年8月22日に始まる。とジェームズ・リカーズは推測している。
一方、NY金価格は、世界的な金利上昇や、テクニカル悪化を受けて下値試しが続いている。4月高値と5月高値をダブルトップとして完成しており、2000ドル水準にあるネックラインが上値抵抗として機能している。
2月安値と3月安値をボトムとしたダブルボトムのネックラインと重なる心理的節目1900ドルが下値支持。ただ、相関の高いユーロとの比較では、割安感が強い。欧州通貨安に反応したのは、やや行き過ぎ感もある。
テクニカル面の悪化から1900ドル水準への押し目があれば、各国中央銀行や実需の買いが出てきそう。円建て金は引き続き、史上最高値圏でのもち合い継続。円建て金の優位性は継続している。
ロシア情勢が波乱要因
前週末、ロシア情勢が急変している。ロシアの民間軍事会社がロシア南部の主要都市ロストフナドヌーにある軍事施設などを掌握。ヴォロネジ市の燃料備蓄基地を燃料備蓄基地を爆破した。世界にとって最悪なのは、プーチン政権が倒れ、より強硬派が出現すること。核戦争のリスクは増し、武器が世界に拡散と言う事態になりかねない。安全資産としての金買いは継続しそうだ。
【米PMI】
【米CPI・PCE】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。