金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点|【Weekly Report】週間予定

NSインベストメント 菊川弘之
2025年11月17日

週間展望(11/17~11/23)

週間予定:日本GDP、ADP雇用統計、FOMC議事録

【週間スケジュール(11月10日~11月16日)】

・日本GDP

 6四半期ぶりマイナス成長見通し、輸出減・消費鈍化で日銀利上げ遠のく


・英消費者物価指数

 GDP減速に失業率悪化、CPI伸び鈍化なら12月利下げ観測一段と


・FOMC議事録

 パウエル議長は市場の12月利下げ観測を牽制、1人は据え置き支持


・米ADP週次雇用統計

 10月雇用統計欠損により民間代替データに頼るしかない


・米政府再開に伴い9月雇用統計など延期されていた米経済統計が公表される見通し



前週:日本成長戦略会議

【日本成長戦略会議】

日本経済の方向性を検討する2つの会議

日本成長戦略会議は10日、初会合を開いた。議長を務める首相は「従来の枠組みにとらわれない大胆な発想で検討を進めていただきたい」と呼びかけた。人工知能(AI)やバイオなど17の戦略分野を掲げた。スタートアップや労働市場改革など8つの分野横断的課題も挙げた。成長戦略の肝とする「危機管理投資」を具体化する。 


首相が毎回指示を出し、各府省に政策を推進させる。特徴のひとつは経団連や日本商工会議所、連合という労使トップがメンバーであることだ。岸田文雄、石破茂両政権で司令塔だった新しい資本主義実現会議の構成を踏襲している。


高市早苗首相は16日午後、首相公邸で関係閣僚らと総合経済対策について協議した。財務省が17兆円台で調整中の対策規模を巡り、意見を交わした。片山さつき財務相は協議後、記者団に「規模的には(17兆円より)大きくなる」と述べた。


片山氏は経済対策に関し「物価高に直面する層に手当てしたいというのが首相の考えだ」と語った。「措置について全部360度、聖域なく洗い出して検討をした」と説明した。財務省案では経済対策の裏付けとなる2025年度の補正予算の歳出規模は前年度を上回る14兆円程度とする。所得税がかかり始める「年収の壁」の引き上げやガソリン税などに上乗せされる旧暫定税率の廃止による大型減税も盛り込む。減税も含めれば17兆円を超え、財政投融資を含めると20兆円を超える見込み。

日中関係悪化

一方、台湾有事は「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会答弁をきっかけとして日中関係が急速に悪化している。G20首脳会議で歩み寄れないと、問題が長期化となり、悪影響は日本の方が大きい。



ドル円:心理的節目155円突破

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)200日移動平均線乖離率

ドル円(日足)200日移動平均線

先週のドル円は、ドル円は、心理的節目155円を上抜いてきた。高市政権の積極財政の方針が市場で再び意識されている。また、高市政権が経済政策の司令塔となる会議に、財政規律よりも経済成長を優先すべきだと主張する有識者を揃えたことが、きっかけとなった。


12日の新体制下での初会合でも2025年度補正予算の規模について「24年度(13.9兆円)より大きくすべきだ」との声が上がった。首相は諮問会議で「強い経済成長と安定的な物価上昇の両立に向け、適切な金融政策運営が行われることが重要だ」とも語った。

155円が上値抵抗

円独歩安の背景は、ドルの上昇もある。米国時間12日に過去最長の43日に及んだ政府閉鎖が終了。経済の正常化につながり、米国景気を下支えするとの見方からドル買いが進んだ。追加利下げに慎重なFRB高官が増えている事も、ドル売り円買い要因になっている。ボストン連銀のコリンズ総裁が12日夕の講演で「しばらくの間、政策金利を据え置くのが適切になりそうだ」 と語った。クリーブランド連銀のハマック総裁は、インフレ抑制のために、政策金利を「やや抑制的な水準に維持する必要がある」と話した。米短期金利先物市場では、12月の利下げ予想確率が低下している。


マーケットの過熱感をテクニカル分析から見ると、200日移動平均線との乖離率は、2022年・2024年の介入した時と比べると、過熱感に乏しい。ただ160円接近場面で過熱感が高まってくると、介入が意識されるだろう。米国側の意向もトランプ大統領・ベッセント財務長官共に、行き過ぎた円安ドル高是正の方向で一致している。


2022年・24年共に介入は、1度目の介入効果は限定的で、戻り局面で追撃しトレンド転換が起きた点は、憶えておきたい。



金:ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)MAC(Moving Average Channel)

NY金相場は、10月20日高値~10月28日安値までの下げ幅に対する61.8%戻しを達成した。ADP雇用統計で非農業部門の民間就業者数に関する速報値で、過去4週間に平均1万1250人の雇用が減少したと分析。これらが利下げ継続観測を強めたことも金の買い材料と受け止められ、11月11日の十字線高値を上抜き、上げ加速となった。

調整局面

政府活動再開に伴い債務が拡大するとの懸念が再燃し、リスク回避的に金が買われ、一時4250ドル近辺まで上昇したが、買い一巡後は戻りを売られた。


米利下げ観測の後退も一因。ボストン連銀のコリンズ総裁が12日講演で「しばらくの間、政策金利を据え置くのが適切になりそうだ」と語った。クリーブランド連銀のハマック総裁は13日、インフレ抑制のために、政策金利を「やや抑制的な水準に維持する必要がある」と話した。セントルイス連邦準備銀行のムサレム総裁は13日、3%台で推移するインフレ率を踏まえれば、「利下げ余地は限定的だ」と指摘。カンザスシティー連邦準備銀行のシュミッド総裁は14日、「インフレが高過ぎる」と述べた上で、12月のFOMCで再び利下げ反対を表明する可能性を示唆した。CMEグループのフェドウオッチによると、0.25%利下げの確率は50%未満に低下している。


前週末は、陰線ながら長い下ヒゲを付けて下げ幅を縮小した。LMAで下支えられた格好。ネックライン(10月28日安値)の攻防が焦点となる。割り込めばダブルトップ完成からの下値試し。一方、維持されればダブルボトム形成や、三角保合い放れ待ちへ移行する。

WGC四半期報告

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の四半期報告書「ゴールド・ディマンド・トレンズ」によると、第3四半期の金需要は前年同期比3%増の1313.1トンとなり、四半期として過去最高を記録した。投資需要で金ETF(上場投信)が同134%増の221.7トン、地金と金貨が同17%増の315.5トンとなった。



【海外投資家動向(225)】

海外投資家動向と日経平均株価(週次)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

この記事を読んだ方にお勧めの記事

  • 日本の第4四半期GDPが市場予想を上回り、日銀の早期利上げ観測が台頭してドル安円高が進行して150円割れ。2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が98.3となり、市場予想の102.5や前回値の105.3(改定値)も大きく下回ったことで、景気の先行き不透明感…

  • 注目のジャクソンホールでのパウエル議長講演で、利下げを示唆したとの受け止めが広がり、ドル円は急反落。米長期金利が低下し、日米金利差の縮小から円買い・ドル売りが入った。

  • IMF世界経済見通し ゲオルギエワIMF専務理事はトランプ関税による世界経済減速を警告・IMF世銀春季会合に合わせてG20/G7財務相中銀総裁会議開催 日米財務相会合開催の可能性

他ジャンルの最新はこちら

  • 金投資の基礎知識

    中国:海外中銀の金準備保管サービスに進出?

  • スペシャル

    ドル円、155円突破

    今週ドル円は、心理的節目155円を上抜いてきた。高市政権の積極財政の方針が市場で再び意識されている。

  • 動画

    ヒンデンブルグ・オーメン発生から見る今後の金市場の動向について



当サイトのコンテンツは情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に関わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。

取引にあたっては、必ず日産証券ホームページに記載の重要事項リスク説明等をよくご確認ください。
重要な注意事項についてはこちら