FRBのテーパリング開始は織り込み済み。バイデン政権の財政拡大政策を巡る攻防に注目。

FRBのテーパリング開始は織り込み済み。バイデン政権の財政拡大政策を巡る攻防に注目。

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2021年10月9日

 

米9月の雇用統計は非農業部門就業者数が+19.4万人と市場予想より少なかったものの、失業率は4.8%と完全雇用に近い状態に戻しつつあることが確認されました。マーケットでは早ければ11月にもFRBのテーパリング開始を見込み、金融政策の正常化へ向けて第一歩を踏み出すと予想しています。足元のインフレ高止まりによる物価上昇圧力が消費に影を落とす可能性も否めませんが、雇用市場が堅調であることや、経済が緩やかな拡大基調を維持していることから、FRBのシナリオ通りに行けば来年央にはテーパリングを終了、来年後半にも利上げ実施の可能性が視野に入ってきます。こうした状況下でFRBが金融政策面から経済を下支えする役目は一旦終了しており、これからはバイデン政権による財政出動策で景気の下支えと成長の押し上げを図って行くと見られます。財政出動策とその財源確保を巡り、与野党の攻防も白熱化することが予想されますが、アフガン撤退政策の失敗でバイデン政権の信認が低下しており、共和党の協力を得るのも容易ではありません。また、民主党内でも穏健派とリベラル派の対立が起きており、3.5兆㌦規模の財政拡大策は規模を小さくして審議する可能性が高くなっています。さらには暫定措置で延長した債務上限引き上げ問題や、連保政府のつなぎ予算も12月には再び期限が到来しますから、予算案や債務引き上げ問題が11月に入れば再びクローズアップされるでしょうし、結果如何では為替、株式市場の急変を招く可能性を内包しているとも言えそうです。
一方欧州経済も7月以降の感染拡大により一時的な落ち込みはあったものの、足元ではワクチン接種率がさらに上がり感染拡大もかなり抑え込まれています。人、モノの動きは増加傾向にあり、サプライチェーンの問題が残っているものの、持続的な回復基調を維持するとみられます。金融政策面では日本と同様にかなり緩和的であることや、ドイツの政局不安などがあり、ユーロの上値が抑えられる傾向にありますが、悪材料も出尽くしつつあり、大幅なユーロ下落にも繋がり難いと見られます。
日本は衆院選挙を控えており、その結果と新政権の政策に注目が集まっていますが、株式市場はすでに急騰、急落を経て年内の高値、底値見た感があります。また、為替相場についても米債務引き上げ問題がクローズアップされればリスク回避の動きから一時的な円高に繋がる可能性もあるものの、金融政策やファンダメンタルズ格差から見れば現在の円安、ドル高の基調が大きく変わる可能性も低いと見られます。

チャートから見た注目通貨の方向性

1. ドル/円相場:短期はドル高/円安の流れ。一段のドル上昇へ。110円台を割り込めば短期トレンドに変化。

週足は2018年10月に付けた114.54を基点とし、昨年2月に付けた112.23を結ぶレジスタンスライン(D)を3週前の陽線が上抜けて短期トレンドに変化が生じています。さらに、今年7月に付けた111.66を結ぶトレンドライン(A)も先週足が上抜けて越週しており、新たな上昇トレンドに入った可能性が生じています。この週足サポートは111.20近辺に位置しており、111円割れで越週しない限り、“ダマシ”となりません。また、7月に付けた111.66を基点として上値を切り下げて来た短期的なレジスタンスライン(B)からも3手前の陽線が上抜けて越週しており、短・中期的な上値抵抗を一気に上抜けたことで、強い上昇エネルギーが働いた格好となっています。また下値も、今年4月に付けた107.48を直近安値とするサポートライン(C)が短期トレンドをサポートしており、この週足の下値抵抗ポイントが109.30-40に位置していることから、これを割り込んで越週しない限り、“ドル弱気”に変化しません。トレンドが変化してまだ日が浅いことから、今後4~5週間は基調“ドル強気”の流れが継続する可能性が高くなっています。但し、111円を割り込んで越週した場合は上昇一服となり、110~111円ゾーンの足元を固め直す動きが強まり易くなりますが、この場合でも前述の通り、109.30-40の抵抗を下抜けて越週しない限り、トレンドは大きく変化しません。週足ベースで見た上値抵抗は113.10-20,114.60-70に、下値抵抗は111.20-30,110.00-10,109.30-40にあります。31週、62週移動平均線は109.85と107.39に位置しており、短・中期トレンドをサポートしていますが、109.30以下で越週した場合は下値リスクが点灯、109円割れで越週した場合は“ドル弱気”に変化してドルの下落余地がさらに拡がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元のトレンドを確認します。日足は7月に付けた111.66を基点として上値を切り下げて来た流れから9/24の陽線がしっかり上抜けて短期トレンドに変化が生じています(A)。111.90-00の抵抗に一旦ぶつかって反落しましたが、調整的な押しに留まり再び上値追いの流れに戻した形となっており、9/22に付けた109.12を直近安値とする短期的なサポートライン(B)がサポートした形となっています。この日足の下値抵抗は111.50-60に位置しており、これを割り込んで終えない限り、下値余地が拡がり難い状態です。111.50以下で終えた場合は日足の形状が若干悪化して110~111円台の足元を固め直す動きが強まり易くなりますが、この場合でも(A)が110.00-10に位置しており、強い下値抵抗として働く可能性が高いと見られ、ます。また、これを下抜けた場合でも4月に付けた107.48を基点とするサポートライン(C)が109.30-40に位置しており、109円台を割り込んで終えない限り、短期トレンドは大きく変化しません。日足の上値抵抗は112.60-70,113.10-20,114.60-70に、下値抵抗は111.50-60,111.00-10,110.00-10にあります。21日、120日、200日移動平均線は110.60,109.94,108.65に位置しており、短・中期トレンドは“ドル強気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2.ユーロ/円相場:一方向へ動き出す可能性に注意。130.00超えの越週で一段の上昇へ。128円割れで終えた場合は“ユーロ弱気”に変化して一段の下落へ。

直近の週足を見ると前週の陰線を切り返して陽線引けとなりましたが、128~130円ゾーンでの揉み合いの域を抜けきれていません。しかし、この揉み合い状態に入ってからすでに12週を数えており、そろそろ一方向へ抜け出す可能性に注意が必要です。今年6月に付けた134.13を基点として上値を切り下げて来た流れから上抜けきれていませんが(A)、この週足の上値抵抗が130.00-10に位置しており、これを上抜けて越週した場合は、揉み合いを上抜けて一段のユーロ上昇に繋がり易くなります。逆に昨年5月に付けた114.43と直近安値127.93を結ぶサポートライン(B)の下値抵抗が128.00-10にありますが、これを割り込んで越週した場合は、新たな下げエネルギーを得て一段のユーロ下落に繋がり易くなります。この場合は中期的なサポートポイントである124~126円ゾーンの抵抗をトライする動きが強まるでしょう。今週の週足ベースで見た上値抵抗は前述の130.00-10と132.20-30,133.00-10に、下値抵抗は128.80-90,128.00-10,126.50-60にあります。31週移動平均線は130.64に位置しており、上値を抑え込んだ状態にありますが、62週線は128.04に位置しており、週足の下値抵抗とも重なっており、強い下値抵抗として働く可能性が高い状態です。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元の動きを確認します。直近の日足は高値圏引ける陽線が出ており、週初から上値トライの動きが強まると見られますが、今年6月に付けた134.13を基点として上値を切り下げる流れから上抜けておらず(A)この日足の上値抵抗は130.20-30にあります。これを上抜けて終えるか、値動きの中で130.50-60の抵抗をクリアした場合は、揉み合いを上抜けて一段の上昇に繋がり易くなります。一方下値は、8月に付けた127.94と9月の127.93で短期的な二番底を確認した形となっていますが、再び128円を割り込んで終えた場合は、(B)のサポートラインを下抜けて短期トレンドが“ユーロ弱気”に変化します。この場合は二番底確認の可能性を打ち消して、ユーロの下落幅拡大に繋がり易くなるので注意が必要です。日足の上値抵抗は130.00-10,130.50-60,131.10-20に、下値抵抗は129.30-40,128.70-80,128.00-10にあります。21日移動平均線は129.23に位置しており、これを直近の日足が上抜けて日足の形状が強い状態に変化していますが、120日、200日線は130.80と129.80に位置しており、これらを上抜けきれておらず、下値リスクを残した状態です。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

3.金/円相場:下値リスクに注意。6450円台を回復すれば下値リスクがやや後退、6100円割れで終えた場合は下落余地がさらに拡がる可能性に注意。

金相場が下値リスクのやや高い状態にあるのでレポートします。
金は対ドルの相場がトレンドを左右します。現状はドル/円相場が円安基調にあるので金/円は急落に繋がっておらず、むしろじり高の展開となっていますが、ドル/金相場のトレンドがまだ弱い状態にあることから、金/円も下落リスクにより警戒する必要があります。

対ドルの週足を見ると昨年8月に付けた2075ドルを基点として上値を切り下げる流れに変化が認められず、トレンドは弱い状態にあります。(A)また、直近の週足の上ヒゲがやや長く上値トライに失敗して押し戻された形となっていることや、一目均衡表の雲の下で推移しており、下値リスクに警戒が必要な状態です。3月に付けた1676ドルを基点とするサポートライン(B)が1700ドル近辺に位置しており、下値抵抗として働いていますが、1700ドル割れで越週した場合は1600ドル方向への一段の下落に繋がり易くなります。対ドルの上値抵抗は1780-90ドル、1830ドル、1860-70ドルありますが、全て上抜けて越週した場合は“強気”に変化して一段の上昇に繋がり易くなります。下値抵抗は1720-30ドル、1700-10ドルにありますが、全て下抜けて終えた場合は、1600ドル前後までの一段の下落リスクに要注意。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

対円の週足を見ると、昨年8月に付けた7032円を基点として上値を切り下げる流れにあり、下値リスクがより高い状態です。(A)また、直近の週足が一目均衡表の雲の上限にぶつかっており、上値トライにも失敗した形となっています。現状は3月に付けた5852円を基点として下値を切り上げる流れを維持していますが(B)、4週連続陽線引けとなっても9月第三週の大陰線を上抜けておらず、強い上昇エネルギーも感じられません。6,200円近辺に強い下値抵抗があり、これを割り込んで来ないと下値余地も拡がり難い状態ですが、6200円を割り込んで越週した場合は下値リスクが点灯、6100円割れで越週した場合は5950~6000円にある強い抵抗を切り崩しつつ一段の下落に繋がり易くなります。この場合は最大で5400~5500円近辺までの下値余地を見る必要があります。但し、このレベルは長期的に見れば絶好の買い場となりそうです。一方上値は、強い抵抗が6380~6400にありますが、6450円超えで終えれば下値リスクが後退して上値余地が拡がり易くなります。6,600円超えで越週した場合は7000円方向への一段の上昇に繋がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。