超金融緩和局面の終焉と各種相場の先行き

超金融緩和局面の終焉と各種相場の先行き

(相場研究家) 市岡 繁男
2021年6月28日

 
2008年のリーマン・ショックに際し、米政府はMMF(マネー・マーケット・ファンド)の政府保護を打ち出した。一部のMMFが元本割れとなり、取り付け騒動のような形で資金が流出したからだ。MMFの運用会社は外銀等が発行する短期証券の購入を拒否し、資金繰りに窮した外銀は保有資産の売却を余儀なくされた。
一連の対策が奏功し、そんな悪循環は収まったが、いまMMFの弱点が形を変えて再浮上してきた。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融機関が保有する国債を毎月1200億㌦購入している。銀行等はその売却代金を短期金融市場で運用するが、マーケットに流入する資金が多過ぎるため、短期金利はマイナス金利一歩手前の状況が続いていた。

これに対しFRBは今年3月以降、翌日物の短期国債売却を通じて余剰資金を吸収し(リバースレポ)、短期金利の下支えに注力してきた。その取引額は日ごとに拡大し、最近は約8000億㌦にも膨らんでいる。
つまりFRBは、毎月1200億㌦の資金を供給する一方で、その6.5ヶ月分を回収するマッチポンプのような取引を行っているのだ。これは事実上のテーパリング(量的緩和の縮小)に他ならない。
FRBのリバースレポ取引額は今年5月中旬、昨年3月のピーク時を超えた(図1)。

【図1】日次のリバースレポ取引額と5年予想インフレ率【図1】日次のリバースレポ取引額と5年予想インフレ率出所:セントルイス連銀(元データはニューヨーク連銀)

それをみた市場参加者はFRBの手詰まり感を察知したのだろう。国債購入による量的緩和相場はもはや限界ということだ。以来、予想インフレ率や貴金属から非鉄、農産物に至る商品相場等の下落が始まった(図2)。

【図2】2021年5月中旬前後の予想インフレ率と各種価格
(2021年5月中旬前後の各種価格ピーク=100)
【図2】2021年5月中旬前後の予想インフレ率と各種価格(2021年5月中旬前後の各種価格ピーク=100)出所:セントルイス連銀、ブルームバーグ

これは、「FRBの量的緩和でマーケットにはお金があり余っている。だから株高も当然」だったが、今やその前提が崩れ、市場規模が小さい商品相場から影響が表れ始めたということだ。だとしたら、多少のタイムラグをおいて株価も下落する可能性があり、7月以降は要注意だ。
 だが、その調整局面はせいぜい数ヶ月間だろう。FRBの資金循環統計によると、米年金基金のポートフォリオはその9割が株や投信、ヘッジファンドで占められており、株価下落を放置すると社会の安定が損なわれるリスクがあるからだ。だから、いざとなればFRBは日銀と同じく、S&P500などのETF買いを行うのでないか。  
その場合、真っ先に上がるのは、やはり市場規模が小さく、実物資産としての本源的価値をもつ金や金鉱株だろう。

相場研究家市岡 繁男(いちおか しげお)氏
市岡 繁男(いちおか しげお)氏

1958年、北海道生まれ。
81年一橋大卒、住友信託銀行入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。
1996年に同社を退職後は長銀、あさひ銀行、ロスチャイルド投資顧問、日本興亜損保、富国生命、中前国際経済研究所で内外債券、株式、為替の運用や調査研究業務を務めた。
2018年に独立し、現在は財団等の投資アドバイザーを務める。
週刊エコノミスト、日経ビジネスなどへの執筆多数。