アメリカの早期緩和政策縮小観測は後退。 金融緩和政策と財政拡大による景気刺激策で経済成長の押し上げ効果 が継続。基調ドル高の流れは変わらず。

基調ドル高の流れ

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2021年4月10日

 

3月の米雇用統計は2月に続き市場の予想を大きく上回る改善を示し、雇用市場の確かさを示す内容となりました。また、バイデン政権が1.9兆㌦規模の追加経済対策に加え、今後8年間で2.3兆㌦規模のインフラ設備投資計画を発表したことも、経済の持続的な成長を促すものとして好感されており、10年債利回りは景気の順調な回復とインフレ圧力が強まることを先読みして一時1.77%まで上昇、ドル/円もこれに連れて110円台後半まで急伸しました。しかし、公開されたFOMC議事録要旨(3/16-17日開催分)がハト派的な内容であったことや、パウエルFRB議長の「インフレ上昇は一時的、米国経済の回復は依然不完全で強弱まちまち」との発言もあって、早期の緩和策縮小観測が後退して長期金利が低下、ドル/円相場も109円台半ばに値を戻しています。企業増税を骨子とする財源確保に紆余曲折はあると見られますが、足元の経済指標に力強さが増しており、基調ドル高、円安の流れは継続すると見られます。一方で、欧州は行動制限が解けない中にありますが、ワクチンの接種は進んでおり、また製造業を中心に業績が回復しており、アメリカとのファンダメンタルズ格差が僅かながらも縮小する傾向にあり、対ドルでの欧州通貨の下値余地も徐々に限られる展開が予想されます。

チャートから見た、注目通貨の方向性

今月は新年度入りしましたので、ドル/円、ユーロ/円の中・長期的な方向性を見直します。

1.ドル/円相場:短・中期トレンドは“ドル強気”。長期トレンドも変化した可能性が点灯中。

週足を見ると、直近の週足(4月第2週)は陰線引けとなり、前週の陽線の値幅を打ち消しています。また、2018年10月に付けた114.54を基点として上値を切り下げて来たトレンドライン(A)の上値抵抗である110.50-60を実体ベースで上抜けきれずに越週しており、目先は上値余地が限られ易い展開が予想されます。また、直近の陰線が2月第4週の安値、104.92を基点として下値を急角度で切り上げて来た短期的なサポートライン(B)から下抜けた位置で終えており、ドル急騰の流れが一服してスピード調整に入った可能性が高くなっています。一方で、今年1月に付けた102.59を基点とするサポートライン(C)を守っており、週足の形状も崩れていません。この週足の下値抵抗は107.00-10にあり、この下げが調整的なものに留まる可能性が高いことを示唆しています。
調整下げが浅いものに留まった場合は、先週付けた109.00で一旦終了した可能性が高くなりますが、109円割れで越週するか、日足が108.50割れで終えた場合は、本格的な調整下げの流れに入って、ドルの下落余地がさらに拡がり易くなります。この場合でも前述の107.00-10の抵抗を割り込んで越週しない限り、短期トレンドは大きく変化しません。週足ベースで見た上値抵抗は、110.50-60,111.70-80,112.40-50に、下値抵抗は109.00-10,108.40-50,107.00-10にあります。31週、62週移動平均線は105.51と106.52に位置しており、中期トレンドは“ドル強気”の流れに変わりありません。また、111円台で越週した場合は長期トレンドも変化して一段のドル上昇に繋がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

月足で長期的なトレンドを見ると、3月足が高値圏で引ける陽線引けとなり、この足が、2015年6月に付けた125.86を基点として上値を切り下げて来た流れ(A)から頭一つ上抜けた位置で越月しており、長期トレンドに変化が生じ始めています。108.50割れで越月した場合は、上抜けが“ダマシ”となった可能性が生じますが、この場合でも106.50~107.00ゾーンに強い下値抵抗が出来ており(B)、簡単には下抜けそうもありません。一方上値は、114.00~114.50に月足ベースで見た強
い横レジスタンスがあり、続伸に繋げた場合でもこのレベルは簡単には上抜けないでしょう。4月足の上値抵抗は112.50~113.00,114.00~114.50に、下値抵抗は109.20~109.70,108.50~109.00,106.50~107.00にあります。31ヵ月、62ヵ月移動平均線は108.01と109.01に位置しており、長期トレンドが“ドル強気”の流れに入った可能性が点灯中です。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2.ユーロ/円相場:短・中期トレンドは“ユーロ強気”。130.50超えの越月で長期トレンドも強気に変化。

週足は2018年2月に付けた137.50を基点として上値を切り下げる流れから昨年7月にしっかり上抜けて、中期トレンドは“ユーロ強気”の流れに入っています。その後の調整下げ局面でもこのサポートライン(A)にしっかり跳ね返されており、新たな上昇トレンドに入った形となりました。
この週足サポート(B)は4月9日現在、128.20-30に位置しており、これを割り込んで越週しない限り、短・中期トレンドは“ユーロ強気”を維持します。一方で133円台超えからは、中期的に見た上値抵抗の厚いポイントに入ることから、続伸した場合でも急騰にも繋がり難いと見られます。
週足ベースで見た上値抵抗は132.40-50,133.10-20,134.50-60に、下値抵抗は129.40-50,128.60-70,128.20-30にあります。31週、62週移動平均線は126.17と123.34に位置しており、中期トレンドは“ユーロ強気”の流れに変わりありません。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

一方、月足を見ると、3月足は小陽線で終えており、5ヵ月連続陽線引けとなりました。下値を着実に切り上げる流れを維持しており、中期トレンドも強い状態にありますが、個々の陽線が強い上
昇エネルギーを持ったものではないことや、2008年7月に付けた169.97を基点とする超長期的なレジスタンスライン(A)の上値抵抗が130.00近辺に位置しており、3月足がこれを上抜けきれずに越月していることから、これをしっかり上抜けて越月するまでは下値リスクを残した状態と見て取れます。また、上値トライに失敗して128円割れで越月した場合は、サポートライン(B)および(C)を下抜けたことにより、トレンドに変化が生じて一段の下落に繋がり易くなります。4月足の上値抵抗は130.00~130.50(下値抵抗となる可能性が点灯中)、133.00~133.50,135.00~135.50に、下値抵抗は128.00~128.50,125.00~125.50にあります。31ヵ月、62ヵ月移動平均線は123.35と124.54に位置しており、長期的な支持線として働いています。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。