コロナ後を見据えた米経済回復への期待が一段と膨らむ。円独歩安の流れが継続か。

米経済回復への期待

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2021年3月13日

 

2月の米雇用統計は市場の予想を大きく上回る改善を示し、ポジティブサプライズとなりました。また、バイデン政権による1.9兆㌦に上る追加経済対策が成立したことも、雇用対策や景気刺激策を盤石にする構えが見て取れ、景気拡大観測から長期金利は一段と上昇、ファンダメンタルズ格差を映して為替相場もドル全面高の展開となっています。また米国民を最優先とするワクチン接種の普及により行動制限の全面的な解除も既に視野に入っており、コロナ後を見据えた景況感はイエレン財務長官の「雇用市場は来年までに元の軌道に戻る」との楽観的な発言にも表れています。
一方で、FRBのパウエル議長との温度差は大きく、労働参加率や、長期間の失業保険受給者の推移などを見れば楽観視できない点もまだ多いことは否めません。失業保険の給付金上乗せ期間の満了(9月中)や現金給付効果の剥げ落ち、またそれ以前に、期待先行で続伸する株式市場のバブル破裂の可能性にも注意する必要がありそうです。
足元では金利高、ファンダメンタルズ格差を映してドル高、円の全面安の展開となっており、来週のFOMCの結果が注目されます。また、日本についてはコロナ対策が遅れていること、政局不安も表面化していることから、今しばらくは円の独歩安の流れが継続すると見られます。

チャートから見た、短・中長期の方向性
1.ドル/円相場:短・中期トレンドともに“ドル強気”。110円はまだ壁となる可能性も。

日足は昨年6月に付けた109.85を基点として上値を切り下げて来た流れから上抜けて短期トレンドは“ドル強気”に変化しています。

また、2/23に付けた104.92を基点として新たな上昇トレンドに入っており(A)、この日足の下値抵抗は108.70-80にあります。日足が108.50以下で終えた場合はドル急伸時にすり抜けた107~108円台の足元を固め直す動きが強まり易くなりますが、この場合でも今年1月に付けた102.59を基点とするサポートラインの下値抵抗が105.50-60にあることから(B)、105.50割れで終えない限り、短期トレンドは“ドル弱気”に変化しません。

日足の上値抵抗は109.20-30,109.90-00,111.00-10に、下値抵抗は108.70-80,108.00±10銭、107.00-10にあります。21日、120日、200日移動平均線は106.78,104.82、105.47に位置しており、全てを上抜けて短・中期トレンドは“ドル強気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

週足で中期的なトレンドを確認します。週足は4週連続陽線引けとなり、下値を急角度で切り上げています。直近の週足が上昇エネルギーの強いものではないことや、2017年1月に付けた118.60を基点とする週足の上値抵抗が109.20-30と109.90-00に位置していること、また、もう少し近い所では2018年10月に付けた114.54を基点として上値を切り下げて来たトレンドラインの上値抵抗が110.50-60に位置しており(A)、これらを全て上抜けて越週するまでは上値余地も拡がり難く、下値リスクを残した状態です。

一方で昨年2月に付けた112.23と3月に付けた111.71を結ぶトレンドライン(B)を2手前の大陽線がしっかり上抜けて越週しており、短期的には新たな上昇トレンドに入った形となっています。このため、このトレンドラインを下抜けて終えない限り、トレンドが変化せず、下値余地も限られる展開が予想されます。この週足の下値抵抗は106.40-50にあります。

また、これを下抜けた場合でも、今年1月に付けた102.56を基点として下値を切り上げて来たサポートライン(C)の下値抵抗が105.70-80に位置しており、105.50以下で越週しない限り、短・中期トレンドは“ドル弱気”に変化しません。今週の週足ベースで見た上値抵抗は109.20-30,109.90-00、110.50-60に、下値抵抗は107.20-30,106.40-50,105.70-80にあります。31週、62週移動平均線は105.03と106.50に位置しており、中期トレンドは“ドル強気”の流れに入っています。可能性がまだ低いと見ますが111円台で越週した場合は長期トレンドも変化して一段のドル上昇に繋がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2.豪ドル/円相場:短・中期トレンドは“豪ドル強気”。一段の上昇の可能性が点灯中。

日足を見ると、10/29に付けた73.14を直近安値として下値を切り上げる流れを維持しており、短・中期トレンドは“豪ドル強気”の流れを維持しています。この日足の下値抵抗は82.10-10にあります(A)。また、1/28に付けた79.20を基点として新たな上昇トレンド形成の動きに入っており、この日足の下値抵抗は83.10-20にあり(B)、これを割り込んで終えない限り下値余地も拡がり難い状態です。

一方上値は、2/25に付けた84.95を基点として上値を切り下げて来た短期的なレジスタンスラインから上抜けた位置で終えており、一段の上昇の可能性が点灯中です。84.80~85.20ゾーンに週足ベースで見たやや強い抵抗がありますが、85.50超えで終えた場合は、長期的な上値抵抗ゾーンである87~88円台をトライする動きに繋がり易くなります。逆に83円割れで終えた場合は(B)を下抜けて下値リスクが点灯します。

この場合でも(A)の抵抗が82.10-20に控えており、82円割れで終えない限り、短期トレンドは変化しません。日足の上値抵抗84.80-90,85.20-30,86.00-10に、下値抵抗は83.10-20,82.8-90,82.10-20にあります。21日、120日、200日移動平均線は82.96,78.39,77.26に位置しており、短・中期トレンドともに“豪ドル強気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

一方、週足を見ると、昨年10月に付けた73.14を基点として新たな上昇トレンドに入っており、この週足の下値抵抗は82.50-60にあります(A)。これを下抜けて越週した場合は、下値余地がもう一段拡がり易くなりますが、2020年3月に付けた59.91を大底として下値を切り上げて来た中期的なサポートラインの下値抵抗が80.30-40にあり、80円割れで越週しない限り、トレンドが変化せず下値余地も限られる展開が予想されます(B)。

一方で、月足ベースで見た超長期的な上値抵抗が91~92円台にあり、90円台定着にはまだ時間を要すると見られます。週足ベースで見た上値抵抗は85.10-20,85.50-60,87.10-20に、下値抵抗は82.50-60,80.30-40にあります。31週、62週移動平均線は78.14と74.95に位置しており、中期トレンドは“豪ドル強気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。