インフレ高進でFRBの利上げ加速と早期資産縮小開始観測が高まる。足元では地政学的リスクが波乱要因に。

インフレ高進でFRBの利上げ加速

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2022年2月12日

 
米1月の雇用統計は失業率が4.0%、非農業部門就業者数は+467千人とオミクロン株の感染拡大が拡がる中でも雇用市場が引き続きタイトであることを印象付けました。また消費者物価も高止まり傾向が続いており、FRBはインフレリスクに対応するため早急に行動を起こす必要に迫られています。マーケットは3月に利上げを開始、早ければ6月にも資産縮小を開始すると見ており、既に年内の利上げを4回まで織り込み、長期金利も一時2.0%に乗せています。景況感が悪化して消費が冷える前にFRBは金融政策でインフレを鎮静化させることが出来るのでしょうか?今のところ国内の消費も好調で、また、企業業績も全般的に懸念するほどの悪化は認められませんが、インフレによる企業物価の上昇や労働コストの上昇は企業収益の圧迫に繋がり、価格転嫁が一段と進む可能性があります。バイデン政権はインフレ対応の遅れでさらに信任が低下しており、また財政拡大による経済対策も身内の造反者により早期施行開始の妨げになっていますから、財政拡大による景気下支え路線は想定通りに進みそうもありません。
一方ユーロ圏でも想定以上に長引く需給ひっ迫とインフレの高止まりに業を煮やしている様子が窺えます。ラガルドECB総裁は金融政策変更を急がないとしながらも、「データ次第」で対応する構えを示しており、年内の利上げ観測も高まりつつあります。足元でのウクライナ情勢の緊迫化による地政学的リスクがユーロ売りに繋がる可能性が高いものの、欧米の中央銀行は金融政策正常化へ向けて舵を切り始めており、一方的なドル高にも繋がり難いと見られます。一方日本については、円安による輸入物価の上昇やサプライチェーン問題の影響を受けて、物価上昇圧力が一段と強まっていますが、日銀は金融緩和姿勢を変えておらず、長期金利抑制策として10年国債を0.25%で買い入れ、金額も無制限とする指し値オペの実施を発表しています。このように、景況感、金融政策格差から見れば、基調的には円独歩安の流れが今後も続く可能性が高いものの、FRBの金融政策正常化の動きは緩和マネーの吸い上げに繋がりますから、株式市場への影響は避けられず、為替市場でもリスク回避の動きが潮流を変える可能性にも注意する必要がありそうです。また足元でのロシア、ウクライナ情勢の緊迫化による為替相場の変動にも注意が必要です。

チャートから見た注目通貨の方向性

1. ドル/円相場:短・中期トレンドは“ドル強気”を維持。114円割れで短期トレンドが変化。112.50割れの越週で中期トレンドも変化。

週足を見ると、2018年10月に付けた114.54を基点とし、2020年2月に付けた112.23を結ぶレジスタンスライン(A)を上抜けた位置にあり、また、昨年1月に付けた102.59と、昨年9月に付けた109.12を結ぶ中期的なサポートライン(B)も上抜けた位置を保っており、中期トレンドは“ドル強気”の流れにあります。この週足サポートは112.80-90にあります。短期的には、昨年9月に付けた109.12と11月に付けた112.53を結ぶ短期的なサポートライン(C)を若干下抜けた位置で推移しており、この週足の上値抵抗が115.90-00に位置していることから、これを上抜けて越週するまでは上値余地も拡がり難い状態です。先週も実体ベースでこれを上抜けきれずに押し戻されて終えています。現状は9月の109.12と今年1月に付けた直近安値113.47を結ぶ短期的なサポートライン(D)が最後の下値抵抗をとして働いていますが、この週足サポートが114.20-30に位置していることから、これを割り込んで越週するか、日足が114円割れで終えた場合は、短期トレンドが変化してドルの下落幅が拡大し易くなります。さらに可能性がまだ低い状態ですが、112.50以下で越週した場合は、(B)を下抜けて中期トレンドも変化する可能性が生じます。週足ベースで見た上値抵抗は前述の115.90-00と117.10-20に、下値抵抗は、115.00-10,114.20-30,112.80-90にあります。31週、62週移動平均線は112.53と110.02に位置しており、中期トレンドをサポートしています。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元のトレンドを確認します。日足は昨年9/22に付けた109.12と、11/30に付けた112.53を結ぶトレンドライン(A)の下に入り込んでおり、下値リスクを残した状態ですが、1/4に付けた116.35を直近高値とする短期的なトレンドライン(B)をかろうじて上抜けた位置をキープしており、反発に転ずる可能性を残しています。また、9月の109.12と1/24に付けた直近安値113.47を結ぶ短期的なサポートライン(C)を上抜けた位置で推移しており、短期トレンドは“ドル強気”の流れを維持しています。この日足の下値抵抗は114.00-10にあります。また、この直近安値113.47を基点とする超短期的なサポートライン(D)の下値抵抗が115.00-10にあり、直近の陰線がこれに跳ね返されており、反発の可能性を残しています。以上から、115.00-10の抵抗を下抜けて終えた場合は、下値余地がもう一段拡がり易くなります。さらに114.00-10の抵抗を下抜けて終えた場合は、(C)を下抜けて短期トレンドが“ドル弱気”に変化してドルの下落余地が一段と拡がり易くなります。逆に116円台を回復して引ければ(A)を抜き返して下値リスクが軽減されます。この場合は116.30-40超えにある上値抵抗をトライする動きが強まり易くなります。日足の上値抵抗は115.90-00,116.30-40,117.10-20に、下値抵抗は115.00-10,114.00-10,112.50-60にあります。21日、120日、200日線は114.79,113.32,111.95に位置しており、短期トレンドは“ドル強気”の流れを維持していますが、114円割れで終えた場合は短期トレンドが変化します。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2. ユーロ/円相場:短期は“やや弱気”中期は“強気”。128円割れで中期も“弱気”に変化。133円台で終えれば短期が“強気”に変化。

EU圏でも需給ひっ迫とインフレ高進が止まらず、ECBの年内利上げ観測が高まっています。ラガルドECB総裁は金融政策の修正を急がないとしていますが、インフレが予想より高止まりしていること、全ての委員がインフレデータを懸念していることを認めており、今後のデータ次第では利上げ時期が早まる可能性も高いと見られます。足元ではロシアとウクライナとの地政学的リスクがユーロの上値を抑えると見られますが、対ドルでは1/28に付けた1.1121で既に底打ちした可能性も高く、ユーロ/円も大幅な下げにも繋がり難いと見られます。但し、ドル/円相場が急変した場合や、ユーロが対円で128円を割り込んだ場合は、下げ幅が拡大する可能性が高くなります。
チャートを見ると、週足は昨年6月に付けた134.13を基点として上値を切り下げており、このトレンドライン(A)の上値抵抗は133.10-20にあり、先週はこの週足の上値抵抗にぶつかって押し戻されて陰線引けとなっています。また、昨年5月に付けた114.43を基点とし、9月に付けた127.93を結ぶトレンドライン(B)からも若干下抜けた位置で推移しており、短期トレンドは“ユーロやや弱気”の流れにあります。2020年5月の114.43と昨年12月に付けた直近安値127.52を結ぶサポートライン(C)の下値抵抗が128.60-70にありますが、128.50以下で越週した場合は、新たな下落リスクが点灯、128.00割れで終えた場合は中期トレンドも変化して下値余地がさらに拡がり易くなります。週足ベースで見た上値抵抗は132.00-10,133.00-10,134.10-20に、下値抵抗は130.00-10,128.60-70,127.00-10にあります。31週、62週移動平均線は129.87と129.71で収束していますが、128.50以下で越週した場合は中期トレンドも“やや弱気”に変化します。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元の動きを確認します。日足は、昨年10/20に付けた133.48を基点として上値を切り下げて来たトレンドライン(A)を2/3の大陽線が上抜けて短期トレンドに変化を生じさせましたが、直近の大陰線の下ヒゲ部分が(A)を若干下抜けており、下値リスクが点灯中です。この日足の下値抵抗は130.50-60にありますが、これを割り込んで終えた場合は、下値リスクが生じて、10/20の大陽線の足元を固め直す動きが強まり易くなります。この場合は、昨年12月に付けた127.52と今年1月に付けた128.25を結ぶサポートライン(B)が128.50-60にあり、強い下値抵抗として働きます。但しこれも下抜けて終えた場合は中期トレンドが変化する可能性が生じます。さらに128円割れで終えた場合はサポートライン(C)も下抜けて、中期トレンドも“ユーロ弱気”に変化します。この場合は124~126円ゾーンの長期的な下値抵抗をトライする動きが強まり易くなります。日足の上値抵抗は131.50-60,132.00-10,132.40-50に、下値抵抗は130.50-60,129.00-10,128.50-60にあります。21日、120日、200日線は130.14,130.03,130.50にあり、短期トレンドをサポートしていますが、128円割れで終えた場合は中期トレンドも変化します。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。