2022年の展望

2022年の展望

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2022年1月8日

 
2021年はパンデミック禍で行動制限を強いられる期間がありましたが、経済活動を止めることなく欧米経済は緩やかな拡大基調を維持しています。金融政策面では12月のFOMCでFRBがテーパリングを3月に終了後、早期利上げの可能性とバランスシートの縮小について議論したことが明らかとなり、金融政策の正常化へ向けて踏み出したことが確認されています。確かに2020年1月時点では4兆㌦規模であったFRBの資産は2021年末には8.7兆ドルにまで膨れ上がっており、コロナ禍での量的緩和の規模が尋常でなかったことが解ります。ECBもパンデミック緊急購入プログラム(PEPP:1兆8500億ユーロ)の新規購入を3月末で終了します。資産購入プログラム(APP)については4-6月期に400億ユーロに増額、7-9月期に300億ユーロに増額、これ以降は必要な限り200億ユーロ/月のペースで購入を続けるとしており、量的緩和政策は継続されますが、経済の回復基調がはっきりすれば金融政策正常化への道筋も見えて来るはずです。日本についても物価上昇圧力が強まっていますが、日銀の金融政策の変更は考えにくく、金利が大幅に上昇する可能性が低いことから、景況感格差や金融政策の相違を材料に基調は円安の流れが継続すると見られます。一方で円の実質実効為替相場が極端な円安状態となっており、日本経済にとっての「悪い円安」が表面化する可能性も高くなっています。 
一方、世界的な需要と供給バランスの歪みは依然として改善しておらず、当初は早い時期に解決されると見られていたサプライチェーン問題は長期化の様相を呈しています。物価の上昇傾向が続く中で、中央銀行がインフレ懸念を抑え込み、且つ、景気が後退することなく緩やかな拡大基調を維持できるかが2022年の最大のテーマとなりそうです。足元では雇用市場が堅調で消費も良好な状態を保っており、サプライチェーン問題も徐々に改善されるとの楽観的な見方が大層を占めています。しかし、早期利上げによりインフレ懸念を封じ込み、アメリカ主導で景気拡大基調を維持できるかどうかは未だ不透明です。FRBの金融政策の舵取りが今年のアメリカ経済や世界の金融市場の鍵を握ると見られ、その動向が特に注目されます。
2022年の注目材料は、①パンデミック禍でのサプライチェーン問題の行方、②中央銀行の金融政策正常化の動きと金融市場への影響、③米中間選挙の行方、そして、④米中、米ロ関係の地政学的リスクや、新興国通貨の動向などが挙げられます。①については医療逼迫に陥らない限り、一段の悪化には繋がらないものの、流通市場が落ち着くまでになお時間を要すると見られ、物価の上昇傾向や高止まりが継続すると見られます。②は前述の通り、FRBによる適時適切な金利引き上げや流動性操作に失敗した場合(引き締めが拙速に過ぎた場合)は、金融市場にとって大きなリスク要因となります。③はバイデン政権の信任低下により民主党が負けた場合は、議会にねじれ現象が起こり、経済政策の遂行に影響を及ぼす可能性が高くなります。④は一時的なリスクとして働く可能性に注意が必要です。
以上から、2022年は中央銀行の金融政策、特に先陣を切って利上げとバランスシートの縮小に踏み切る可能性の高いFRBの手腕が問われることになると見られ、その舵取りが注目されます。また、期待インフレ率のさらなる上昇やこれに伴う実質金利の動向にも注意が必要です。

チャートから見たドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円の短・中長期の方向性

1.ドル/円相場:中・長期トレンドはドル高/円安の流れ。但し、118円台は長期的な上値抵抗。

月足で見ると、2015年6月に付けた125.86を高値として上値を切り下げる流れ(A)から、昨年3月足が上抜けており、中期トレンドに変化が生じています。さらに、2016年12月の118.66と2018年10月に付けた114.54を結ぶトレンドライン(B)を昨年9月足が完全に上抜けて、新たな上昇トレンドに入っています。また、中期的なトレンドを見ても、昨年1月に付けた102.59を基点として下値を切り上げる流れを維持しており、このサポートライン(C)の下値抵抗が112.00~112.50に位置しており、これを割り込んで越月しない限り、“ドル強気”の流れが変化しません。またこれを下抜けた場合も(B)のサポートラインが108.00~108.50にあり、108円割れで越月しない限り、長期トレンドも変化しません。月足の上値抵抗は117.00~117.50,118.00~118.50,120.50~121.00に、下値抵抗は112.00~112.50,108.00~108.50にあります。31ヵ月移動平均線は108.58に、また62ヵ月移動平均線は109.82に位置しており、長期トレンドは“ドル強気”の流れにあります。
2022年の年間予想レンジを108~118円と見ていますが、118円台は長期的な上値抵抗ポイントとして働く可能性が高く、一時的に120円を見る場面があっても、120円台定着は難しいと見ています。また、112円を割り込んで越月した場合は中期トレンドの変化に要注意。108円割れで越月した場合は、長期トレンドが変化して102~103円方向への円高リスクが生じます。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

週足で短・中期的な方向性を確認します。週足は2016年12月に付けた118.66を基点として上値を切り下げる流れ(A)から、3月には一旦上抜けましたが、その後は上下動を繰り返して6月以降は109.00~110.50での揉み合い商状が9月まで継続、9月の最終週に109.12までの下押し調整を経て10月第1週に漸く揉み合いから上放れて“ドル強気”の流れに入っています。また114.50-60にあった中期的な上値抵抗もしっかり上抜けて、新たな上昇トレンドに入った状態にあり、短期トレンドは強い状態を維持しています。この週足の下値抵抗(C)は114.00-10に位置しています。114円割れで越週した場合は下値リスクが点灯しますが、この場合でも、昨年1月に付けた102.59を基点とするサポートライン(B)の下値抵抗が112.00-10に位置しており、これを割り込んで越週しない限り、中期トレンドは変化しません。週足ベースで見た上値抵抗は116.80-90,117.50-60,118.10-20に、下値抵抗は114.50-60,114.00-10,112.00-10にあります。31週、62週移動平均線は111.82と109.15に位置しており、中期トレンドも“ドル強気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2.ユーロ/ドル相場:中・長期トレンドは“ユーロ安/ドル高”。1.15台回復でトレンドに変化。

ユーロ/ドルは、2008年7月に付けた1.6040を高値として上値を切り下げて来た流れから一旦上抜けたものの(A)、1月7日現在は再びこの下に入り込んだ状態にあり、中・長期トレンドは“ユーロ弱気”の流れから脱しきれていません。一方で、2017年1月に付けた1.0341と2020年3月に付けた1.0636を結ぶ長期的なサポートライン(B)が下値を支えており、この月足サポートが1.0700~1.0750に位置していることから、これを割り込んで越月しない限り、下値余地も限られる展開が予想されます。また(A)の月足の上値抵抗が1.1400~1.1450にありますが、これをしっかり上抜けて1.15台で越月した場合は、短・中期トレンドが変化して、上値トライの動きが強まり易くなります。この場合でも1.2200~1.2400ゾーンに長期的な上値抵抗が控えており、1.25台で越月するまでは長期トレンドは変化せず、下値リスクを残します。月足ベースで見た上値抵抗は1.1400~1.1500、1.2000~1.2050,1.2200~1.2250に、下値抵抗は1.1200~1.1250,1.1000~1.0950,1.0700~1.0750にあります。31ヵ月、62ヵ月移動平均線は1.1514と1.1505で収束しており、上値を抑え込んでいますが、1.15台で越月した場合は、下値リスクが後退して一段のユーロ上昇に繋がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

週足でもう少し近場のトレンドを確認します。短期トレンドは2021年5月に付けた戻り高値1.2266を基点として上値を切り下げる流れ(A)から上抜けておらず、“ユーロ弱気”の流れにあります。この週足の上値抵抗は1.1450-60に位置していますが、これを上抜けて越週した場合は、短期トレンドが変化して一段のユーロ上昇に繋がり易くなります。この場合でも2021年1月に付けた1.2349と同年5月に付けた1.2266を結ぶレジスタンスライン(B)の上値抵抗が1.21台後半にあり、1.22台に乗せて越週するまでは上値余地も拡がり難いでしょう。また、2020年3月に付けた1.0636と2021年11月に付けた直近安値1.1186を結ぶサポートライン(C)が1.12台前半に位置しており、強い下値抵抗として働いた状態ですが、1.1200割れで越週した場合は、新たな下げトレンド入りの可能性が高くなり、一段のユーロ下落に繋がり易くなります。週足ベースで見た上値抵抗は、前述の1.1400~1.1450と1.1550~1.1600,1.1800~1.1850に、下値抵抗は1.1200~1.1250,1.1000~1.1050,1.0700~1.0750にあります。31週、62週移動平均線は1.1638と1.1844に位置しており、中期トレンドは“ユーロ弱気”の流れにあります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

3.ユーロ/円相場:短期はユーロ高/円安。中・長期は下値リスクを残した状態。

ユーロ/円は2008年7月に付けた169.97を起点として上値を切り下げる流れ(A)から若干上抜けて来ましたが、強い上昇エネルギーも感じられず、また、2012年7月に付けた94.12の大底と2016年6月に付けたBrexit時の安値109.57を結ぶトレンドライン(B)からも上抜けきれておらず、下値リスクを残した状態です。この月足の上値抵抗は133.50~134.00にあります。また、(A)の下値抵抗が125.00~125.50にありますが、125円を割り込んで越月した場合は120円方向への一段のユーロ下落に繋がり易くなります。この場合は(C)が最後のサポートとなりますが、118円を割り込んで越月した場合は下支えを失って110円方向への新たな下落リスクが生じます。31ヶ月移動平均線は125.01に、62ヵ月線は126.32に位置しており、中期トレンドをサポート中ですが、125円割れで越月した場合は、中期トレンドが変化して一段の下落リスクが生じます。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

週足で短・中期的なトレンドを見ると、2020年5月に付けた114.43で底打ち、反転の流れに入っていますが、この114.43と昨年8月に付けた127.94を結ぶ最初のサポートライン(A)からは下抜けた位置にあり、下値リスクを残した形となっています。この週足の上値抵抗は132.00~132.50にあります。また、これを上抜けて越週した場合でも、昨年6月に付けた134.13と10月に付けた戻り高値133.48を結ぶレジスタンスライン(B)の上値抵抗が133.00~133.50に位置しており、134円台にしっかり乗せて越週するまでは上値余地も拡がり難いでしょう。短期的には昨年12月に付けた直近安値127.39を基点として反転、上昇の流れに入っており、短期トレンドは“ユーロ強気”の流れにありますが、(A)及び(B)の上値抵抗にぶつかる可能性にも注意が必要です。また、2020年5月に付けた114.43と直近安値127.39を結ぶサポートライン(C)の下値抵抗が128円台にありますが、128円を割り込んで越週した場合は、短期トレンドが“ユーロ弱気”に変化して125円方向への一段の下落リスクが生じます。31週、62週移動平均線は130.11と129.22に位置しており、短期トレンドをサポート中ですが、31週移動平均線が下向きとなっており、62週線とデッドクロスする可能性があります。128円割れの越週で弱気が確定的となりますが、その前に、129円を割り込んで越週した場合は弱気転換の可能性が点灯するので注意が必要です。逆に134円台で越週した場合は中期トレンドも“ユーロ強気”に変化して上値余地がさらに拡がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。