マーケットはFRBによるテーパリングの加速と早期利上げ観測を織り込む。FRBがインフレ懸念を抑え込んで持続的な景気回復基調を維持出来るかどうかが焦点に。株価動向にも注意。

マーケットはFRBによるテーパリングの加速と早期利上げ観測を織り込む。FRBがインフレ懸念を抑え込んで持続的な景気回復基調を維持出来るかどうかが焦点に。株価動向にも注意。

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2021年12月11日

 

米11月の雇用統計は失業率が4.2%と完全雇用に近い水準へ低下しましたが、非農業部門就業者数は+21万人と市場予想を下回りました。しかし、コロナ禍直後に失われた雇用(2020年3-4月の2ヵ月で▼2,236万人)は既に85%を超える水準まで回復しています。また、12/9に発表された新規失業保険申請件数は52年ぶりの低水準となるなど、FRBの責務である「雇用の最大化と物価の安定」のうち、「雇用の最大化」については目的をほぼ達成している状態にあることは明らかです。一方「物価の安定」については、10日に発表された11月の消費者物価指数(CPI)が前月比+0.8%、前年比では+6.8%と39年ぶりの高水準となっています。事前予想の範囲内であったことから金融市場への影響はなかったものの、値上がりは幅広い品目に及んでおり、長引くサプライチェーン問題で需要と供給のバランスは崩れたままであり、インフレ懸念は一段と高まっていることが見て取れます。物価の上昇を食い止め、安定を図るのに時間を要すれば、GDPの60-70%を占めると言われる現在の良好な消費にも悪影響を及ぼす可能性があり、景気減速に繋がりかねません。FRBに対して早急な対策が求められており、12/14-15に開催されるFOMCは特に注目度が高いイベントです。テーパリング加速が決定されるのか、また早期利上げの可能性は? 15日のパウエルFRB議長の記者会見や、メンバーの金利予測チャート「ドットプロット」は今後の金融政策の方向性を示唆するものとなりそうです。また、この週は16日にECB理事会、英政策金利発表、17日には日銀金融政策決定会合などが予定されており、先進国の中央銀行の金融政策会議が目白押しです。金融政策の正常化に歩を進めることが出来るのか、年内最後の大きな注目材料となります。また、海外の市場参加者がクリスマス休暇に入り、マーケットも薄商いとなる中で、市場のかく乱要因として働く可能性にも注意する必要がありそうです。

(出所:商務省統計局)

チャートから見た注目通貨の方向性

1.ドル/円相場:長期トレンドは“ドル強気”。短期的は“やや弱気”。調整下げの範囲内。

週足を見ると、2018年10月に付けた114.54を基点とし、昨年2月に付けた112.23を結ぶレジスタンスライン(D)を上抜けた位置にあり“ドル強気”の流れに変わりありません。さらに、今年7月に付けた111.66を結ぶトレンドライン(A)からも10月第2週の陽線が上抜けて上昇が加速、新たな上昇トレンドに入った状態にあります。この週足サポートは111.30-40近辺に位置しています。一方足元では、11月24日に付けた115.52を直近高値として反落しており、上値を切り下げる流れに変化しており、12月10日現在、短期トレンドはドルの下落リスクがやや高い状態にあります。直近の週足も小陽線で続落を食い止めましたが、上昇余力の強いものではなく、上値を切り下げる流れにも変化が認められません。しかし、前述のトレンドライン(A)が111.30-40に位置しており、これが週足の下値抵抗として働いていることから、111円割れで越週しない限り、調整下げの範囲内に留まります。また、これを下抜けた場合でも、サポートライン(B)の下値抵抗が108.50-60に、(C)が110.00-10に、さらに(D)も109.30-40に位置しており、全てを下抜けるほどの大幅なドル下落にも繋がり難いと見られます。現状は週足の上値抵抗が114.40-50に、日足の上値抵抗が115.00-10にありますが、115.00超えで越週した場合は、調整下げ局面が終了した可能性が高くなり、一段のドル上昇に繋がり易くなります。逆に一番近いサポートライン(A)を下抜け、111円割れで越週した場合は、調整下げ余地がさらに拡がり易くなります。この場合でも、前述の(B)、(C)、(D)の抵抗を全て下抜けて108円割れで越週しない限り、中期トレンドは“ドル弱気”に変化しません。週足ベースで見た上値抵抗は114.40-50,115.00-10,116.20-30に、下値抵抗は、111.30-40,110.00-10にあります。31週、62週移動平均線は111.14と108.53に位置しており、中期トレンドをサポートしています。可能性が低いと見ますが、108円を割り込んで越週した場合は中期トレンドが“ドル弱気”に変化してドルの下落余地がさらに拡がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元のトレンドを確認します。日足は9/22に付けた109.12を基点として下値を切り上げて来たトレンドライン(A)を11/26の大陰線が下抜けており、短期トレンドに変化が生じています。また、直近の日足が10/20に付けた114.70を基点とするトレンドライン(B)にぶつかっており、短期トレンドは“ドルやや弱気”の流れにあります。114円台に実体を戻せば(B)を上抜けて上値余地が若干拡がり易くなりますが、この場合でも115.00-10の抵抗を上抜けて終えない限り、短期トレンドは“ドル強気”に変化しません。また、112円台を維持出来ず終えた場合はもう一段下値余地が拡がり易くなり、111.00~111.30まで下落余地がさらに拡がり易くなります。日足の上値抵抗は113.70-80,114.20-30,115.00-10に、下値抵抗は113.00-10,112.50-60,112.00-10にあります。21日移動平均線は113.92に位置しており、上値を抑え込んだ状態ですが、120日、200日線は111.58と110.67に位置しており、中期トレンドは“ドル強気”の流れを変えていません。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2. ユーロ/ドル相場:短・中期ともに“ユーロ弱気”。1.14台回復で短期トレンドに変化

米欧ファンダメンタルズ格差によりユーロの上値が抑えられる展開が続いていますが、新たな変異ウィルス「オミクロン株」への過度な警戒感は薄れており、都市の大規模なロックダウンに繋がる可能性は低く、経済は足取りが重いながらも緩やかな拡大基調にあると見られています。また、パンデミック拡大懸念がさらに強まればECBも柔軟な金融政策で対応すると見られており、ここに来てユーロの下げ渋りの傾向が見られます。
チャートを見ると、週足は5月に付けた1.2266を二番天井として上値を切り下げる流れに変わりありません。このトレンドライン(A)の上値抵抗は1.1550-60にあります。また9月に付けた1.1909を戻り高値として上値を切り下げる流れにも変化が認められません。このトレンドライン(C)の上値抵抗は1.1400-10にあります。1.14台を回復して越週した場合は、底打ち、反転の流れに入る可能性が生じますが、(A)をしっかり上抜けて越週しない限り、上値余地も拡がり難く、下値リスクを残した状態となります。また、上値トライに失敗して再び1.1200を割り込んで越週した場合は、新たな下げエネルギーを得て1.1000~1.1200ゾーンでのユーロ下げトレンドに入る可能性が生じます。但し、1.1000近辺は超長期的な下値抵抗ポイントであることから、急落地合にも繋がり難いと見られます。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元の動きを確認します。日足は、5/25に付けた1.2266を基点として上値を切り下げる流れにあり、短期トレンドは“ユーロ弱気”の流れに変わりありません(A)。また、10/28に付けた1.1692を戻り高値として、再び上値を切り下げる流れに入っています。この短期的なレジスタンスライン(B)の上値抵抗は1.1390-00近辺に位置しており、1.14台を回復して終えることが出来れば、短期的には反転、上昇に繋がる可能性がやや高くなります。この場合でも、トレンドライン(A)が1.1560-70に位置しており、上値を抑え込んでいることから、“ダマシ”の可能性を排除し、“ユーロ強気”が確認されるのは1.1600超えで終えることが必要です。一方下値は、11/24に付けた1.1186を直近安値として下値を切り上げており、1.1200近辺の足元がややしっかりとした感がありますが直近の小陽線が上昇余力の乏しいものであり、また、上値を切り下げる流れにも変化が認められないことから、下値リスクがより高い状態に変わりありません。また、1.1200割れで越週するか、1.1180割れで終えた場合は一段の下落リスクが生じます。日足の上値抵抗は1.1370-80,1.1410-20,1.1560-70に、下値抵抗は1.1270-80,1.1220-30,1.1180-90にあります。21日移動平均線は1.1304に位置しており、若干上抜けた位置で終えていますが、“ダマシ”の範囲内です。また、120日、200日線は1.1654と1.1799に位置しており、中期トレンドは“ユーロ弱気”の流れに変わりありません。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。