深刻化するサプライチェーン問題。景気減速懸念と利上げ観測とのせめぎ合い続く。

深刻化するサプライチェーン問題。景気減速懸念と利上げ観測とのせめぎ合い続く。

(外国為替ストラテジスト) 川合 美智子
2021年11月13日

 

米10月の雇用統計は失業率が4.6%、非農業部門就業者数が+53.1万人と3ヵ月振りに50万人台を回復し、失業率とともに市場予想を上回る改善を示しました。また、10月の消費者物価指数は前月比+0.9%(コア+0.6%)、前年同月比で+5.9%(同4.6%)と、これも市場予想を上回り、足元のインフレ懸念が強いことを確認する結果となりました。サプライチェーン問題の改善が進まず、問題の解消が来年にずれ込む可能性が高くなっており、マーケットでは再び利上げ観測が高まっています。FRBのパウエルFRB議長はサプライチェーンの問題が来年まで続く可能性を示唆しましたが、利上げについては「時期尚早」であるとして、利上げ観測を打ち消して来ましたが、足元の物価上昇圧力は一段と強まっており、市場に高まる利上げ観測が先行する形で金利もじわじわと上昇しています。FRB内でも来年の利上げを予想するタカ派が複数名いて、今後の金融政策の舵取りも一段と難しさが増すと見られます。任期満了が近いパウエルFRB議長の続投があるかどうかは不透明ですが、世界的な物価上昇圧力によるインフレ懸念を金融政策でコントロールできるかどうか、今後の景気動向を左右する観点からも重要であり、世界経済の牽引役としてのアメリカの金融当局(FRB)の手腕が問われるとも言えます。
また、バイデン政権の信認が低下する中で、12月には債務上限引き上げ問題や、連保政府のつなぎ予算の期限が到来しますから、これらの問題も再びクローズアップされると見られ、為替、株式市場の急変を招く可能性にも注意する必要がありそうです。
一方欧州経済も行動制限が解除されて経済活動が再開され、景気に明るさが見える一方で感染者の再拡大にも見舞われており、持続的な回復基調を維持出来るかどうかに焦点が絞られるでしょう。金融政策面での緩和スタンスが変わらないことがユーロの上値が抑えられる材料となっており、ユーロ安の流れは大きく変わり難い状況ですが、テクニカルには1.13~1.14台は長期的な下値抵抗ポイントでもあり、この点から見ればさらなる大幅なユーロ下落にも繋がり難いと見られます。
日本は緩和的な金融政策と財政出動による経済対策を継続する構えで、金融政策及びファンダメンタルズ格差から見れば円安の流れは大きく変わらないと見られますが、ワクチンの接種率が先進諸国を追い抜き感染者が激減していること、財政出動による経済支援策の効果により、景気も徐々に明るさを増すと見られ、一方的な円安にもそろそろ限界があると見られます。足元での投機筋による円売りポジションが膨らんでいること、米債務引き上げ問題や暫定予算成立に向けての議会との軋轢、或いは金利上昇による株式市場の下落リスクなどが、「リスクオフ」の動きに繋がる可能性もあり、為替市場でのポジションの調整の動きに繋がる可能性に十分な注意が必要でしょう。

チャートから見た注目通貨の方向性

1. ドル/円相場:トレンドは“ドル強気”。短期的には上値余地も限定的か。

週足を見ると、2018年10月に付けた114.54を基点とし、昨年2月に付けた112.23を結ぶレジスタンスライン(D)を上抜けて短期トレンドが変化しています。さらに、今年7月に付けた111.66を結ぶトレンドライン(A)からも10月第2週の陽線が上抜けて越週したことにより、新たな上昇トレンドに入った状態にあります。この週足サポートは111.20-30近辺に位置しており、111円割れで越週しない限り、短期トレンドは変化しません。また、7月に付けた111.66を基点として上値を切り下げて来た短期的なレジスタンスライン(B)を上抜けて上昇が加速しており111~112円台にあった、短・中期的な上値抵抗を一気に上抜けています。このサポートライン(B)の下値抵抗は109.00-10に、(C)は109.50-60に、さらに(D)も109.50-60に位置しており、短・中期的な下値抵抗ポイントとして働いた状態です。現状は10月に付けた114.70を直近高値として上値を切り下げており、この短期的な週足の上値抵抗が114.40-50にあること、115.00-10にもう一段強い抵抗がありますが、全て上抜けて越週した場合は、一段のドル上昇に繋がり易くなります。逆に一番近いサポートライン(A)の下値抵抗が111.20-30にありますが、111円を割り込んで越週した場合は、調整下げ余地がさらに拡がり易くなります。この場合でも、前述の通り、109円台半ばに一段と強い抵抗が控えており、109円割れで越週しない限り、“ドル弱気”に変化しません。週足ベースで見た上値抵抗は114.40-50,115.00-10,116.00-10に、下値抵抗は、113.40-50,112.20-30,111.20-30にあります。31週、62週移動平均線は110.53と108.02に位置しており、短・中期トレンドをサポートしています。可能性が低いと見ますが、109円を割り込んで越週した場合は“ドル弱気”に変化してドルの下落余地がさらに拡がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元のトレンドを確認します。直近の日足は小陰線で終えていますが、下げエネルギーの強いものではないので下値余地も限られると見られますが、10/20に付けた114.70を基点とする短期的なレジスタンスライン(A)を上抜けきれていません。この日足の上値抵抗は114.20-30にあります。一方下値も、先週の下値トライの動きの中で113.00±10銭に強い下値抵抗が出来ていることや、9/22に付けた直近安値109.12と先週の安値112.73を結ぶサポートライン(C)も113.00-10に位置しており、113円割れで終えない限り、下値余地も拡がり難い状態です。以上から、114.30超えで終えれば下値リスクがやや後退、114.70超えで終えた場合は、強気の流れに戻して115円超えトライの動きが強まり易くなります。さらに115.00超え越週するか、115.50-60の抵抗をクリアした場合は、新たな上昇エネルギーを得て116.00超えトライの動きが強まり易くなります。逆に、113.00を割り込んで終えた場合は、(C)を下抜けて下値リスクが点灯します。さらに112.50割れを見た場合は111~112円台の足元を固め直す動きが強まり易くなります。この場合でも調整下げに留まるなら111円台を大きく割り込む可能性は低くなります。但し、111円割れで終えた場合は新たな下落リスクが点灯します。この場合でも中期トレンドがまだ強く、109円割れで終えない限り“ドル弱気”に変化しません。日足の上値抵抗は114.20-30,114.60-70,115.00-10に、下値抵抗は113.40-50,113.00±10銭、112.50-60にあります。115円超えか112.50割れのどちらかに抜けて終えた方向に動きやすい状態です。21日移動平均線は113.85にありこれを挟んで上下動を繰り返していますが、120日、200日線は110.93と109.87に位置しており、中期トレンドをサポートした状態です。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

2. 豪ドル/円相場:短期は弱気。中期は強気の流れ。

先週末の米雇用統計が好数値であったことや、11/10に発表された米10月の消費者物価指数が市場予想を上回ったことを受けて、インフレ懸念が再び高まりドル全面高の展開となっていますが、こうした中で11/11に発表された、豪10月の失業率は5.2%、雇用者数は▼43,600人(フルタイム:▼40,400人、パートタイム:▼5,900人)と市場予想の4.8%、+50,000を大幅に下回る結果となりました。また、資源価格の上昇が一服したこともあって、資源国通貨全般にポジション調整の動きが強まっており、豪ドルは対ドル、対円で下落しています。
週足を見ると、2週連続陰線引けとなり上値を切り下げています。上値が重い感がありますが、直近の陰線は下げエネルギーの強いものではなく、また5月に付けた85.80を基点として上値を切り下げて来たトレンドライン(A)から5手前の大陽線が上抜けており、新たな上昇トレンド形成の動きに入った形となっています。この週足サポートは81.80-90に位置しており、これを下抜けて越週しない限り、調整下げの範囲内となります。また、昨年3月に付けた59.91と今年8月に付けた直近安値77.90を結ぶサポートライン(B)も81.60-70に位置しており、強い下値抵抗として働いており、81.50割れで越週しない限り、押しは再び買い場となる可能性も高い状態です。但し、81.50割れで越週した場合は、一段の下落リスクが点灯、80円割れで越週した場合は中期トレンドが変化して78.00前後まで続落する可能性が高くなります。一方上値も前週の大陰線が上値を抑え込んだ形となっており、86円台を回復して越週するまでは上値余地も拡がり難いでしょう。週足ベースで見た上値抵抗は84.80-90,86.00-10に、下値抵抗は82.90-00,81.60~81.80にあります。31週、62週移動平均線は82.75と80.91にあり、中期トレンドは“豪ドル強気”の流れを維持しています。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

日足で足元の動きを確認します。直近の日足は小陽線で続落を食い止めていますが、上昇余力の乏しいものであり、上値を切り下げる流れに変化が認められません。また、また、9/22に付けた78.85を直近安値として下値を切り上げて来たサポートライン(A)からも下抜けた位置で推移しており、短期トレンドは“豪ドル弱気”の流れにあります。このサポートラインの上値抵抗は85.00-10にあります。一方で、下値も、5/10に付けた85.80を基点として上値を切り下げて来た流れからは上抜けた位置を保っており、中期トレンドは“豪ドル強気”の流れを変えていません。このトレンドライン(B)は81.60-70近辺に位置しており、これを下抜けて終えない限り、中期トレンドは変化せず、調整下げの範囲内と見ることが出来ます。短期トレンドは85円台を回復して引ければ(A)を上抜けて下値リスクが後退しますが、10/21に付けた86.25を基点とする短期的なレジスタンスライン(C)の上値抵抗が85円台後半にあり、86円台を回復して引けるまでは上値余地も拡がり難いでしょう。日足の上値抵抗は83.40-50,83.80-90,84.20-30,85.00-10に、下値抵抗は83.00-10,82.40-50,81.60-70にあります。21日移動平均線は84.74にあり、これを下抜けて短期トレンドは“弱気”の流れですが、120日、200日線は82.29と82.87に位置しており、中期トレンドは“豪ドル強気”を維持しています。但し、82円割れで終えた場合は下値リスクが点灯、81.50以下で終えた場合は中期トレンドも変化して一段の下落に繋がり易くなります。

(出所:ワカバヤシエフエックスアソシエイツ)

株式会社ワカバヤシエフエックスアソシエイツ
代表取締役兼外国為替ストラテジスト川合 美智子(かわい みちこ)氏
川合 美智子(かわい みちこ)

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤時に若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀で外国為替ストラテジスト、為替資金部長等を歴任。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役兼外国為替ストラテジストとして罫線分析を基にした為替相場予測レポートを配信中。ストックボイスTVに出演の他、ブログ『川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法』やFX羅針盤にFXチャート分析コメントを掲載中。